夜明けの雷鳴 ―医師 高松凌雲 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-38)
- 文藝春秋 (2003年1月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167169381
作品紹介・あらすじ
慶応三年、万国博覧会に出席する徳川昭武の随行医として渡欧した三十一歳の医師・高松凌雲。パリの医学校「神の館」で神聖なる医学の精神を学んだ彼は、幕府瓦解後の日本に戻り、旧幕臣として箱館戦争に身を投じる-。壮絶な戦場において敵味方の区別なく治療を行った、博愛と義の人の生涯を描く歴史長篇。
感想・レビュー・書評
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30年前のNHK大河ドラマ『獅子の時代』を観ていたときから、隠れ凌雲せんせいファンだったわたし。脚本を手掛けた山田太一さんはこの本を読まれたかもしれないと推測します。函館では幕府軍も官軍も区別なく治療するという方針を持ち、北海道から東京に戻ってからは、親の治療費捻出のために娘が身売りするような時代に、貧しい人も、裕福な人と同等の治療を受けられるように尽力し、政界や経済界からも賛同者を多く得るなど、日本赤十字の礎を築いた高松凌雲という、幕末から大正時代までを生きた医師の生涯を描いた本です。
現在、函館の五稜郭の中には、官軍が病院に踏み込んできたときに凌雲せんせいが傷ついた兵士たちを身を挺して守っている場面のジオラマがあるそうです(プチ情報)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA60401375 -
4-16-716938-x 358p 2003.1.10 1刷
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吉村昭らしい重厚な小説。
意外と知られていない函館戦争の悲惨さを描いている
しかし、少々後半が単調。 -
一死もって義に殉ずる覚悟……。美しいが、この時代にそこまでのものがあるだろうか?
だからこそ、この史実に感動するのだろう。
凌雲の行動は僕らの鏡だ。 -
幕末を舞台とした歴史小説。主人公は幕府方の医師、高松凌雲。
徳川慶喜の名代でパリ万博に行くことになった慶喜の弟である徳川昭武に伴いパリに渡り、西洋医学を学ぶ。
その際のパリ万博を巡る薩摩の暗躍、老練なイギリス外交も巧く描かれていて興味深い。
幕府瓦解後は、榎本武揚ら旧幕府軍に付き添い、函館戦争時に函館病院の頭取として全権委任され敵味方なく負傷者の治療にあたる。
パリで彼が見た病院は「神の館」。富ある者にも貧しい者にも同じ治療を施し、しかも貧しい者は無料であり、それを近代国家を目指す日本でも実現しようと奔走し、日本赤十字の源流を作ったといわれている。
本著は新政府側の医師、高木兼寛を主人公とする「白い航跡」(吉村昭著)を彷彿させる。幕末維新時に医者は特異な存在で、彼らを通じて欧米の近代国家の概念を学び、日本にその枠組み導入することに尽力してきた。
以下引用~
・原市之進は、慶喜と相談し、慶喜の家臣である渋沢栄一を随行者に加えることになった。渋沢は27歳で、弾力性のある思考能力をそなえ、人との協調性にも富んでいた。
・これによってカションが昭武の教師になることはなくなり、憤ったカションは、薩摩藩の顧問であるモンブランとむすび、幕府に不利な論説を新聞リベルテに投書したりした。
・「戦争にあっても、敵方の傷病者を味方の傷病者同様、ねんごろに施療する。それが、神の館のみならず西洋諸国の病院の常となっている」
・榎本は、松本良順を艦隊に引き入れようとしたが、土方歳三が松本を説いてひそかに江戸に帰させたのだという。 -
新選組函館戦争の小説から、高松凌雲に興味を持って読んでみた。
名前と函館病院の医師としてしか知らなかったが、幕臣として医師として信念を持ち続け生き抜いた人生をすごいと思う。 -
2011.3.22(火)