新装版 青春を山に賭けて (文春文庫) (文春文庫 う 1-6)
- 文藝春秋 (2008年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167178062
作品紹介・あらすじ
家の手伝いからは逃げ、学校ではイタズラばかりしていた少年は、大学へ進んで、美しい山々と出会った。-大学時代、ドングリとあだ名されていた著者は、百ドルだけを手に日本を脱出し、さまざまな苦難のすえ、夢の五大陸最高峰登頂を達成する。アマゾンのイカダ下りもふくむ、そのケタはずれな世界放浪記。
感想・レビュー・書評
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大学1年でアパートを借りた時、前に住んでいた方が忘れていったのがこの本。
当時、山のサークルに入ろうとしていた私には啓示にもにたものを感じた。
ドングリとあだ名された植村直己さんが五大陸最高峰登頂を達成させる。
半端ない冒険記!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
登山、トレランをするのでいつかは読んでみたいと思っていた植村直己さんの本。
代表作とのことで購入、読了。
「登山」だけの本では無くて、人生そのものの「大冒険」具合を追いかけた本って感じで面白かったです(笑)
自分が登山自体に詳しく無いので、読んでもイマイチイメージできない所も多く…
それこそ淡々と書いてあるので、素人の自分には気付けない「面白さ」ももっとあるだろうなとも思いました。
コレだけの偉業を残す人って、やっぱり行動力と発想が圧倒的にぶっ飛んでるんだなと。
英語も話せないのにとりあえずアメリカに飛んでみて…現地で身振り手振りだけで職を見つけて、金を稼いでヨーロッパに向かうとか…
危険に関する感覚というか…その閾値が完全にイカれてるというか…(笑)
出てくるエピソードも何かもう浮世離れしてて、マンガかよ感が凄まじくて笑えました(´∀`)
「黒人娘の母性愛にひたりながら童貞を捨てる」とか、「象からジグザグに走って逃げる」とか…くくく…(笑)
一個前に読んだのが「洞窟おじさん」だったので、何かそっちとのギャップも不思議に感じました。
生きて行くためにサバイバルをせざるを得ない人がいる一方で、安全な生活を送れるのにもかかわらず登山に命をかける人もいる…
それこそ、色んな人がいるなぁと(笑)
それにしても、やはり「世界で初めて五大陸最高峰に登頂」という実績は圧倒的ですね。
世界的に見ても例外的に凄い。
本当に日本の誇りだと思います。
<印象に残った言葉>
・三七七六メートルしかない富士山が私の見た最高峰だから、四〇〇〇メートルの針のようにそびえる岩と氷の峰は私のどきもをぬいた。(P41)
・自分はもっと自分をみがき上げ、自分という人間を作らねばならないことを、この遠征でさとった。私がこのあと、強く単独遠征にひかれたのはまさにそのためだった。どんな小さな登山でも、自分で計画し、準備し、ひとりで行動する。これこそ本当に満足のいく登山ではないかと思ったのだ。(P84)
・私は黒人娘の母性愛にひたって朝を迎えた。黒人娘は色は黒くとも、気だてがよく、純情だ。生まれてはじめて私は男になり、思い残すことはなかった。(P119)
・野牛が出てきたときはザックを捨て、手近の木によじ登れ。象が出たときはいちもくさんに大きな木の間をジグザグに逃げろ。象はいつも群れをなしてやってくるから遠くからでもすぐわかる。また、豹が出たときは絶対に背中を向けて逃げてはいけない。目と目をじっと合わせてその場を通過すればよい。(P122)
・親切な人たちだったが、もしこの警察署の人たちの警告にしたがっていたら、私は、登山ができなかった。もちろん単独の登山は、無謀にひとしいほど危険がつきまとっている。人の意見も、とうぜん重視しなければならないが、その意見にしたがってばかりいては何もできない。人にいわれてやめるのではなく、自分で実際に直面して肌で感じとり、それでできないと思ったらやめ、できると思ったらやるべきではないか。そんな教訓も得て、この登山は、モン・ブラン、マッターホルンの単独登山よりも印象深い山行となった。(P132)
・君ははじめてのマッキンリー単独登山者だ。ぜひ成功するよう祈る。(P259)
<内容(「BOOK」データベースより)>
「五大陸の最高峰を踏んだ登山家」としてその名を世界に知らしめた植村直己。戦後日本が生んだ最大の探検家の若き日々の記録。
家の手伝いからは逃げ、学校ではイタズラばかりしていた少年は、大学へ進んで、美しい山々と出会った。
大学時代、ドングリとあだ名されていた著者は、百ドルだけを手に日本を脱出し、さまざまな苦難のすえ、夢の五大陸最高峰登頂を達成する。
アマゾンの60日間イカダ下りもふくむ、そのケタはずれな世界放浪記の全貌。
日本人初のエベレスト登頂を成功させた植村だが、「私は五大陸の最高峰に登ったけれど、高い山に登ったからすごいとか、厳しい岩壁を登攀したからえらい、という考え方にはなれない。山登りを優劣でみてはいけないと思う。要は、どんな小さなハイキング的な山であっても、登る人自身が登り終えた後も深く心に残る登山がほんとうだと思う」という言葉を本書に記している。
解説・西木正明 -
「青春を山に賭けて」 植村直己(著)
1971 3 単行本 毎日新聞社発行
1977 1 文春文春 刊行
2008 7/10 新装版 第1刷
2018 11/25 第14刷
2020 7/19 読了
言わずと知れた大冒険家 植村直己の青春記
とにかく植村直己の人柄に惹かれる
彼の成し遂げた事は凄い事だろうけど
当の本人はそうは思っていないようで
無邪気な可愛らしい風貌と共に
とても親しみやすい。
何かのCMで彼の笑顔を見て
急にまた読みたくなって本書の中でも彼が60日かけてイカダでくだったamazonに今手に入る4冊をポチり。
その最初の1冊。 -
あの植村直己著で、このタイトル。もうメジャーで王道な後光が差してる感じで、守備範囲外だと思ってきたのだけど、「本の雑誌」山の本特集での記事にひかれて読んでみた。いやあ、あまりにも今さらながらの感想で気が引けるが、面白かったなあ。これは出色の青春記だ。
植村直己が自らの半生を綴ったもので、山を始めたきっかけから始まり、世界のあちこちの山にチャレンジし、五大陸最高峰登頂を成し遂げたり、アマゾンを筏で下ったり、情熱の向かうままに突き進んだ年月のことが、飾りのない言葉で語られている。
海外へは観光旅行さえ一般的ではなかった時代、僅かなお金を懐に世界に飛び出していった姿が、もうワクワクするほどかっこいい。これぞ青春、これぞ若者という感じ。お金がなくなったり、ビザが取れなかったり、登山許可が下りなかったり、病気をしたり。苦難の連続なのだが、ピンチの時に必ず助けてくれる人が現れるのは、著者の人柄と情熱がまっすぐだからなんだろう。あまりにも有名人で、なんとなく知っているような気でいたけれど、こういう人だったとは。多くの人に愛されたはずだ。
今まで読んだなかで青春記の傑作だと思うのは、小澤征爾「ボクの音楽武者修行」、椎名誠「哀愁の街に霧が降るのだ」「わしらは怪しい探検隊」、高野秀行「ワセダ三畳青春記」「幻獣ムベンベを追え!」、このお三方がダントツだが、ここに本書を追加することに決定!
皆無謀とも言える行動力の持ち主で、思うに、かつては、そういうむやみやたらで未熟な若者のエネルギーを許容する空気が、確かにあった。皆が皆そうではないにしろ、今みたいに若い人自身に「きちんとしなくちゃ」と思わせるようなプレッシャーは、希薄だったのではないかなあ。 -
僕は小学生の頃に植村直己さんに会っている。校長先生か誰かの知り合いのつてで、講演に来てくれたのだ。話の内容とかは覚えていないのだけど、すごい冒険家で優しい人だという事は伝わって来た。登山や冒険に心踊った記憶があり、将来は冒険家になろうと夢をみた。
この本を読んで、実際の冒険がどれほどの大変さなのかが伝わってきた。僕は冒険家にはなれなかったかもしれないが、憧れの冒険を本で感じることが出来た。
追伸、小学生の頃、なおみという名は会うまでは女の人だと思っていた -
青春を山に賭けて。正にタイトルどおり。
夢が夢を呼ぶ、行動力・信念はやはり常人ではないなと思う。普通であれば、断念せざるを得ない理由にもなるような事は植村直巳にも起こっているのだが、常に着々と前を見続けるユーモラスな語り口で5大陸最高峰登頂と偉業もやってのけてしまった感じ。
やる気をもらえるかというと、凄すぎてやはり距離は遠い。
出逢う先々での人々への感謝の気持ちが、随所に記してあり、著者の人柄伝わって来る気がした。
2019.6.25 -
我が国では唯一の冒険家としての国民栄誉賞受賞者。
私が小学校低学年のときに、海外の山で行方不明になったということで大きく報道されていたことを覚えている。日本にこのような冒険家がいたのかと衝撃を受けたことが記憶に残っている。
その数年後に西田敏行さん主演の植村直己物語を観て、子供ながらに強い感銘を受けたことは未だに覚えている。
今回はじめて彼の著作を読み、その映画を鑑賞した時の感動が蘇った。
著作においては二十代にして、読ませて魅せる彼の筆力にも脱帽。
「苦労が大きければ大きいほど、後でそれに比例した大きな喜びが返ってくるものなのだ。」、「私の単独登山にしても、やはりひとつの登山形態として、未知なるものへの探究と可能性への挑戦、さらに大きくいうなら、人間の可能性への挑戦ではなかろうか」、「山登りはたとえどんな山であろうと、自分で計画し、準備し、自分の足で登山する。その過程が苦しければ苦しいだけ、それを克服して登りきった喜びは大きい」などなど印象深い言葉に心が洗われた。
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この本を読んで、兵庫県の植村直己冒険館へ。
本でも、素敵な人だったことは伝わりますが、ここへ行くともっともっと分かります!
どれほど人に愛され親しまれていたか。
今更ながら実際に会ってみたかった。
惜しい方を亡くしたと心から思いました! -
なぜなのだろう、この自らの願望と命の比重がこんなに私と違うのは。
数多くの冒険をしてきたから、植村直己になれたのか?植村直己だからこの偉業を達せられたのか? -
実はこの方を知らなかった。本を書いていたのも知らなかった。TBS「クレイジージャーニー」を見て存在を知った。本屋で本作を見かけて、彼の史実を知りたくて読了。
彼がなぜ国民栄誉賞をもらってるか。彼の名前が名誉ある賞になってるか。それらの疑問は本作を読んでわかった。
本作は偉業を成し遂げた山登りにフォーカスして書かれている。期間は、生まれから1971年のこと。なにが言いたいかと云うと、彼の死に迫った話はない。
彼の行動の原点は意外に小さいことである。ただ、本人も書いているようにその原点への傾注が半端ない。これらの偉業は、意地や根性、情熱と覚悟(潔さ)がともに合わさったから成せたと思われる。あと忘れてはいけないのが人との出逢いかなと。
出生からと長いスパンの話が書かれているが、いずれもこだわりがあってよかった。それを守ったからこその偉業だと思う。
彼の偉業は五大陸最高峰であるが、今は七大陸最高峰が正式な記録になりそう(五大陸の概念がない?)。彼の足跡を追って今も残り続けている。
過去の植村直己冒険受賞者は以下リンクから。
http://www3.city.toyooka.lg.jp/boukenkan/pages/special/special03.html