新装版 極北に駆ける (文春文庫) (文春文庫 う 1-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167178079

作品紹介・あらすじ

エベレストをはじめ五大陸最高峰を制覇した男の次の夢は、犬ぞりによる南極大陸横断だった。新たな目標を胸に、彼は地球最北端のイヌイットの村へと極地トレーニングに向かう。極寒の過酷な環境と、そこに住む人びととの暖かい交流。そして覚えたての犬ぞりを駆って、ひとり三千キロの氷原を走った冒険の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 「極北に駆ける」 植村直己(著)

    1974 7 単行本発行 文藝春秋

    1977 11 文春文庫
    2011 2/10 新装版第1刷 (株)文藝春秋

    2020 7/23 読了

    こういう冒険記で安心なのは

    命の危機があっても大丈夫!
    無事に切り抜けられる結果が保証されているからだ。
    (無事じゃなきゃこの本は出てないからね)

    五大陸最高峰制覇を成し遂げた植村直己が次の目標にしたのは南極大陸。

    その最高峰であるヴィンソン・マシフ(4,892m)の人類初登頂。

    自信をつけ夢に向かって前進する
    力強い生き生きしている植村直己の姿は
    清々しくて気持ちいいです。

    なんのために命がけでやってんのかね…
    とかは絶対言っちゃダメ。

    植村直己が一緒に生活をしたポーラエスキモーの生活や文化に興味は尽きません。

  • ノンフィクションの極地での冒険譚に興味を惹かれないわけはなく、ドキドキハラハラしながらページをめくった。

    最初、雪が積もっているところはどこへでも犬橇で行けるものだと思っていた。だが読みすすめて分かったことには当地では冬に海が凍結してからしか橇に乗らないこと。陸上でなく凍った海上を橇で進むらしいのだ。
    一時的に凍っているだけの極寒の海の上を橇で進むなんて正気の沙汰じゃない。
    想像以上の危険と恐怖にヒエーと怯えながら読んだ。
    特に3,000キロの犬橇の旅はヒヤヒヤしながら読み進めた。極寒の地でテント泊をしながら、白熊に怯え、食料危機や悪天候に悩まされながら、読んでいるだけとはいえスリル満点である。

    この本の別の魅力としては、イヌイットの文化・生活の描写、またその生活にどのように適応していったのかの描写が挙げられる。
    これまでイヌイットの文化・生活を全く知らなかったのもあり、生肉文化や排泄について、また開放的なSEX観、アルコールの制限や犬ぞりや犬との付き合い方、狩猟の方法など色々と衝撃的であり刺激的だった。
    著者のこれまでの挑戦、不屈の精神、そして実行力にはただただすごいの一言なのだけど、それにも劣らぬこの異文化への適応力とリスペクトもすごいと感心した。
    氷点下を上回ることのない気温、生肉を食する文化、洗濯やお風呂にも不自由する生活。。。何から何まで自分には1ミリたりとも無理だと感じることばかり。

    またこの本のもう一つの魅力は、著者植村直己自身の人柄の魅力だろうなぁ〜と思う。
    彼の不屈の精神やチャレンジ精神はもちろん、現地の人や文化への敬意と自ら適応し歩み寄る姿勢、熱い情熱と併せ持つ冷静で適正な判断力、そして何より人懐っこい性格や笑顔。イヌイットの人々が暖かくフレンドリーというのもあるだろうけど、この人の人柄や人間力のおかげで関係性を築けたんだろうと思う。

    そして「冒険とは生きて帰ること」というフレーズがとても印象的だった。この言葉に彼の決意や哲学をみたような気がした。

    カテゴライズとしては冒険の本なんだろうけど、個人的な読後感としては「愛」だと感じた。人々に対する、文化に対する、自然に対する、まだ見ぬ冒険に対する愛がこの本のどこを切り取っても感じられる。

    現代でも北部グリーンランドまで行くというのはハードルの高いことだと思うけれど、これを四半世紀以上前に発想できる、そして実行してしまえる著者はすごいなと思った。ボキャがなくすごいしか出てこないけど。。。

    その後ネットで犬橇での南極単独横断は叶わぬまま帰らぬ人となったことを知った。とても残念に思うけれど、その壮大な挑戦に挑み、諦めず、一歩一歩努力し、高みを目指したこと自体に意義があると思う。

    できれば植村直己著の他の書籍も読んでみたいなと思った。

  • いやー、やはり植村さんの文章力はすごい。読み手はどんどん引き込まれる。
    本書は、植村さんが南極大陸横断にあたっての試験的な、訓練的なグリーンランド物語りであり、その際に関わったエスキモーとの文化の違いなどを、大変な文章力で綴る。しかしながら、冒険書は冒険書であり、内容も非常に興味深い。エスキモーは、犬橇を引く犬を、用に足さなくなると、皮を剥いで食べてしまうが、植村さんは、どうしてもそれができなかった。エスキモー部落から単独3000キロの特訓旅行に出て、危うく遭難しかけて、飢えかけても食べることはできなかったという。こんなとこにも植村さんの人柄がよく現れているといえよう。

  • 自分の当たり前を疑い、考え直すのに最高の本

    ありきたりな日常に嫌気がさし、見知らぬ土地に冒険を求めたくなることが誰にでもあると思います。

    そうしたとき、非日常を存分に楽しめる本です。

    もしくは、その冒険を本気で実行したいと思ったとき、本当にその覚悟があるかどうかを問い正されるような本です。

    いずれにせよ、高い目標に向けて挑戦する人に、行動する勇気を与えてくれます。

  • 本を読み始めるまで上村直己という方の存在を知りませんでした。この小説はグリーンランド、イヌイットで過ごした日々を日記を基に物語として記述されています。当時の北極圏での生活は食文化、俗文化ともに日本とはかなり違う文化で新鮮感の塊です。またそこに住む犬も日本の飼い犬とは違い、犬橇用の動物として想像以上にキツく調教されていることも知りカルチャーショックを受けましたが生きる為には仕方がない事だと思います。素敵な本でした。

  • 植村直巳と言えば、日本を代表する偉大な冒険家。その植村直巳のグリーンランドでのエスキモー(イヌイット)と一緒に住み、犬橇の扱い方・極地の寒さに慣れた過程を記した伝記。「青春を山に賭けて」に比べれば、グリーンランドでの生活だけに絞っているため、少し弱いが、それでも十分過ぎるほど植村直巳の凄さ、そのバイタリティ、熱気、人の良さが伝わってくる。
    現代社会で日々悶々としている人たちに是非読んで欲しい作品。
    冒険に出かけたくなる作品であり、より植村直巳が好きになり、尊敬する作品だった。電子書籍化されている。

  • 【いちぶん】
    どこにも文明の光ひとつない、孤立した極北のエスキモー部落にたったひとりはいりこみ、生肉を食べたこと、犬橇技術を憶えたこと、太陽のない真暗闇のなかを橇で走ったこと、三千キロの単独旅行をやったこと、いずれも私には十分満足できるものだった。
    (p.262)

  • 文章もうまくて言うことなし。現代の冒険家はこのような豊穣な冒険が残されていないことを充分に認識してそれでもやらずにはいられないのだな、と切ない気持ちになった。

  • とても軽く楽しめる。冒険そのものよりも、土地の文化や風習、人々の暮らしが瑞々しく描かれた部分に引き込まれてしまう。単独で冒険に行っているように見えても、冒険の場所にはいつも暖かな人々との交流があるようだ。

  • すごい、の一言しかない。極北での生活の在り方や、植村直己の冒険に向けたまっすぐな意志、そして極北の驚異にはっとさせられることばかりだった。

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