- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167182205
感想・レビュー・書評
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(上巻から続く)それはすなわち唐にならった律令制にもとづく中央集権国家化である。入鹿の苦悩は、大王家の血筋ではないが故に自分が絶対に大王にはなれないという現実である。唐では皇帝がすべての権力を握り、政を担うからだ。その問題を解決してくれたのが高句麗のクーデターである。一介の将軍が王を殺害し、中枢にいた貴族を皆殺しにして権力を簒奪する。入鹿に「これこそ我が道!」と気づかせる一件であった。
しかし一方で稀代の策謀家が虎視眈々と機会をうかがっていた。支那の兵法を知悉する男・中臣鎌子である。鎌子は入鹿に悟られることなく、水面下で着々と駒を進め、巨大なる敵を手中に囲い込んでいく。そうとは知らない入鹿は、野望の実現のために暴走の度合いを強め、目障りな山背大兄王の上宮王家を滅ぼし、更にはなんと・・・。そしてあの645年6月12日を迎える。巨象の倒れた瞬間は、野望に殉じた魂の咆哮が聞こえてくるがごとくであった。読後感に寂寥と悲哀を感じたのは私だけはあるまい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「もっと直接会って話し合えば良いのに」という意見は無責任である。「会ったことによって事態は益々悪くなる」(黒岩重吾『落日の王子 蘇我入鹿 下』文春文庫、1985年、188頁)。昭和的な対面コミュニケーション至上主義を強要することはできない。
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『落日の王子 蘇我入鹿 上 (文春文庫)』では蘇我氏がクーデターで物部氏を失脚させて、政治の中枢を握るところまで、『落日の王子 蘇我入鹿 下 (文春文庫)』で、乙巳の変で蘇我入鹿・蝦夷親子が暗殺されて、翌年に大化の改新という政治改革が始る手前で終わっている。
蘇我氏が台頭して、入鹿・蝦夷親子が暗殺されるまでの過程が描かれている。古代日本史が好きな人に薦めたい本である。ただ、古代日本史の本を読んだことがない人、大学受験の日本史で古代史が苦手な人にとって、人物の略系図はあるが人物の解説がないという点で、難しいと感じる人がいるかもしれない。 -
大化の改新(乙巳のクーデター)に至る、中臣鎌足の策謀がじわじわと進行していく。結局、皇極女帝が女性であるが故に非情に徹しきれず、皇帝になれなかった入鹿の姿が何となくもの悲しい。
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ついに山背大兄皇子の一族を滅ぼし、頂点に立とうとする蘇我入鹿。しかし、その陰で自分自身が誅殺される陰謀に気づくことはできませんでした。『日本書紀』の中でも最も劇的なシーンである「大化の改新」がついにやってきます。
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4167182203 269p 1988・1・25 5刷
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これまでの蘇我入鹿の人物像は、自分の野望の為に権力を専横し、
鎌足と中大兄に滅ぼされたという印象しかなかったが、
どうしてそうなってしまったかが納得できるような国際状況、
生い立ち、人間関係などが語られていてとても楽しめた。