- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167182304
感想・レビュー・書評
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2017.9.2
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~裏表紙より~
国家揺籃期の天平。
御世は血で血を洗う政争の時代でもあった。
河内の無位氏族に生まれ、
法力僧になる以外は出世の糸口がなかった青年道鏡。
かたや豊満美貌の孝謙女帝。
平城京を舞台に、運命の出会いを果たし、
火の如く燃えさかる二人の純粋な愛の行方……。 -
710年ごろ。役子角が流された後ぐらいの話で,物部弓削守谷に通ずる弓削一族に生まれた道鏡が孝謙女帝の看護禅師となりお互いに惹かれあって,遂には道鏡は昔の聖徳太子と同位となる法王の座に昇りつめ,孝謙女帝から天皇の座譲るとまで言わせた禅師の話。
孝謙の父は聖武天皇,祖父は文武天皇,母は藤原不比等と県犬養三千代(橘三千代)の子で,史上初めて人臣から皇后となった光明皇后(光明子)。史上6人目の女帝で、天武系からの最後の天皇となる。
孝謙は天武の血を引き,困難であっても何でもやり遂げるような強い意思を持っており,道鏡を恋するあまり,譲位まで考えるに至るのだが,それについては,孝謙の女官の法均尼とその弟の輔治能別真人清麻呂(ふじののわけまひときよまろ)の天皇家への忠心により阻止された。この二人がいなかったら,もしかしたら日本書紀に言う神武以降の万世一系の天皇家がそこで途切れていたかもしれない。
道鏡がすごいのは,出世欲があって女帝に近づき,女帝をおとしめたのではなく,自然に成るがままに仏法の道を精進し,結果として(最後には少しは意識したろうが)女帝に気に入られ,天皇位をも伺えるところまで来たのだろうということ。藤原家も天然痘により打撃を受け,回りの官人達の中にも,声を荒げるだけ気概のある者も少なかったのだろうか,道鏡に対し牙を向けるものは,藤原仲麻呂の乱以降はいなかったものと思われる。
道鏡については史書も少なく,ほとんどがフィクションではあるが,法王道鏡と孝謙女帝の人間臭さが直に伝わり,時代風景を頭に描きながら読み進めることが出来る一作。
全2巻。 -
全2巻。
巨根伝説の怪しい坊主のお話。
でもこれはせつない恋愛小説。
坊主せつない。
さわやか坊主。
フィクションでも。
この人の著書の中で一番読みやすい文章。
なぜか。
場面の切り替えとかで読者おいてってない。
読みやすくて面白い。
なぜ巨根坊主で急に。
別人みたい。
日本史上ただ一人、
どこぞの馬の骨のくせに天皇位に手をかけた坊主として、
日本の三大悪人にまでされてしまったけど、
女帝の女子な感じとか、
坊主っていううさんくささだけを
強調して見るのは違うかもと思ったり。
素直に見ればこういうことかも。
確かに。
愛。
まあ。
迷惑だけど。
高橋克彦の「風の陣」と対比すると面白い。
あっちの坊主は超嫌。 -
黒岩道鏡は、確かに天皇位を狙いはしたけれど、
基本は孝謙天皇との愛があればこそ、である。
政治権力をめぐる闘争シーンももちろん読み応え十分だが
それ以上に、二人の身を焦がすような、生涯をかけての愛もすばらしい。
『愛』が黒岩重吾の手にかかるとこんなにすごいものになるんだなぁと(笑)