69 sixty nine (文春文庫 む 11-4)

著者 :
  • 文藝春秋
3.79
  • (291)
  • (343)
  • (359)
  • (51)
  • (19)
本棚登録 : 3409
感想 : 256
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167190071

作品紹介・あらすじ

1969年。安田講堂事件が起き、東大は入試中止。アポロが月に行き、ビートルズが「アビーロード」を、ローリング・ストーンズは「ホンキー・トンク・ウイメン」をリリースした。ベトナム反戦運動が高まり、基地の町・佐世保で、僕は高校をバリケード封鎖した-。明るく楽しく生きる青春のエネルギーに満ちた日々を描いた永遠の古典。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本の主人公矢崎剣介は1969年に大学の医学部志望の17歳の高校生ですが、後に小説家になったと書かれています。
    この作品は村上龍の自伝的作品かと思います。
    とても楽しい小説です。

    私が今になってこの本を読んだのは『コインロッカーベイビーズ』が凄く面白くて本当は『愛と幻想のファシズム』が読んでみたいのですが、ちょっと難しそうだからと思ったのと、以前読んだ『はじめての夜 二度目の夜 最後の夜』にもヤザキケンというよく似た名前の主人公が登場するのですが、あの作品を読み返す(読み返したいのです)前に似た名前の同一人物と思われるこの作品を読んでおきたかったからです。

    最近の作品で波木銅さんの『万事快調オールグリーンズ』というラッパーの高校生らが大麻を栽培する小説がありますが、あれはもしかしたらこの作品へのオマージュではないかという気がしました。

    この作品も出てくる音楽や文学にしっかりした素養があるためか、ただの軽くてチャラい話にはなっていません。一本、芯が通っています。
    こういう話はセンスのない人には書けないのではないかと思います。

    最後のケンと天使のやりとりはよかったです。
    青春文学の記念碑的作品だと思います。

  • 面白かった。
    高校生である主人公の、はちゃめちゃな行動がいきいきと描かれていてすごく楽しく読めた。
    自分も大学時代は、ここまではちゃめちゃではなかったけど、勉強もせず好きな事をしていた。あの時代に帰りたくなった。

  • この本を勧めてくれた人にそっくりそのままな矢崎が眩しい。
    「ケンのごたる人間は、逆に、わがままじゃなくなったらオシマイになるとかも知れんね」
    本当にそれ。
    「退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。」
    わたしも、いつか戦って、勝てる日が来るのだろうか。


  • 弾丸の様な勢いに振り切った良作品。
    読後の寂しさに、作者が表現したかった事が見事に現れている気がした。
    嫌な表現になってしまうが、本作に限らず村上龍の主人公には根拠の無いモテ・頭の回転・人望があり、現代でいう“なろう系ラノベ”を感じる。当然こちらが走りだが、この辺りは若干好みが出る気はする。

  • 主人公が17歳だった1969年から、約30年後に17歳だった私。
    ビートルズは解散してるし、ストーンズは若作りのおじさんだし、学生運動どころか若者は政治に無関心、そんな世の中が青春時代でした。

    物語の舞台とは時代が全く違うのに、高校時代の無鉄砲さとか、根拠のない自信とか、下らない事で死ぬ程笑っていられたこととか。
    懐かしくて恥ずかしくて、切ない思い出が蘇ってきました。

  • 久しぶりの読書。積読の山の頂に置かれていたこの本は、頂ということもあってとっても鋭く僕の心を突き刺しました。

    分かりづらいので端的に言うと、すごい好きな本でした。
    この本が書かれた時代も、この本の時代も僕は生まれていないけども、その時の生きる17歳の日々が何か脈打ったように感じる事ができました。

    ただの青春物語の中に散りばめられた、かつての教養。今も知っている人は多くいるだろうけど、僕はほとんど知らなかった。無知ってすごく悔しい。

    本書の最後、あとがきのところに「楽しんで生きない人生は、罪だ」と書いてあった。楽しむのも難しい世の中に日本社会はなりつつあるような気もするけど、自分なりに楽しんで目一杯生きていきたいと思う。

    また、読みたいと思います。

  • お借りした本。
    楽しかった。ときどきはっとするような、賛成、と思うようなフレーズがあった。
    こんなことはずっとは続かないという刹那感があって、すてきだけどさみしくてそこがよかった。

  • 「限りなく透明に近いブルー」「コインロッカーベイビーズ」に次ぐ3冊目。とても爽やかな作品。
    60~70年代の文化は、半世紀しか変わらないのに現在の日本とはまるで違う国のようでとても面白い。

  • 個人的に思うところが多くて中々感想を書きづらい。僕が幼少期から、主人公の言う『家畜』側の人間だからだろう。だからと言って、主人公の感性には殆ど共感できないが、この『共感できない感情』すら誰かから強制された感覚なのではないかと疑ってしまいたくなる。ただ少なくとも、主人公こと筆者の言を信じるならば、白髪の生徒会書記長は赤軍に入った挙句シンガポールで逮捕された。自分勝手だとしても自ら考えることができる人間より、思考停止で何かを妄信する人間の方が危ういのかもしれない。
    著者はあとがきに、「楽しんで生ないのは、罪なことだ」p242と書いた。より詳しく書くなら「楽しもうと努力しないことは、罪なことだ」とも言えるのではないか。苦痛を我慢し適応しようとする僕とは根っから正反対なんだろう。羨ましいとは思わない、ただただ感心する。羨ましいと思わないのは、そうして得られた結果には必ず苦痛がつきものだからだ。今作の主人公についても、彼の行動でどれほどの苦痛を主人公自身や周囲に及ぼしたか知れない。結果だけ見れば勿論羨ましいが、そうした苦労と天秤にかけてどちらが傾くがと言う点で、主人公と僕は正反対なんだろう。
    ただ、このあとがきが1987度版で、この冊子には更に2007年度版のあとがきが追加されているのも面白い。いや、面白いと言うより、「あんなに息巻いていたのに寂しいこと言うなよ…」となる。何が時代を超えて普遍的な事象であるかは、注意深く見なくてはならない。
    「90年代初頭バブルが崩壊し経済は縮小して、冷たい水を浴びせかけられたように人々は多幸感から醒め、現実と向かい合うことになる。そして今、若い人に向かって『楽しんで生きないのは、罪なことだ』とアドバイスする余裕は、わたしにも日本社会にももうない。」p244
    「現在必要なのは『どう楽しんで生きるか』ではなく、更に基本的で切実な『どうやって生きるか』という問いだからだ。」p245

  • はちゃめちゃな学生時代って憧れる

全256件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×