- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167192037
作品紹介・あらすじ
稀代の浮世絵師・喜多川歌麿。好色漢の代名詞とされるが、その実人生は意外にも愛妻家であったという。この作家ならではの独自の手法と構成とで描きだされる人間・歌麿の素顔。
感想・レビュー・書評
-
これもひとつの歌麿伝。
歌麿という絵師は美しい女性が放つ魅力を描かずにはいられなかったのだろうなあ。その女性が内包する思いが彼女の姿形、放たれる色香を形成するらしい。
だから、一度は描きたいと思った女性も様々なきっかけで内包する物、心情が変化してしまって絵の対象にならなくなってしまったりもする。
わかるような気がするな。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがきには、歌麿の「好色の絵師」というレッテルをはがすという、やや天邪鬼の気分から生まれたものだと記されています。
歌麿のモデルになった5人の女性を主人公にする5つの短編と、歌麿自身を主人公にする最後の一編。
どうも流れが3つあるようです。
一つ目がモデルの女性の素顔がその人生模様を映しながら描かれる人情話・捕物的な流れ。しかし歌麿は女の姿が捉えきれず、女たちはするりと手を抜けるように絵から逃げていってしまいます。
二つ目が歌麿自身の日常生活。
訪れては愚痴をこぼしてばかりの版元蔦屋の番頭で後の滝沢馬琴。そして妻を亡くした歌麿の身の回りの世話を焼いてくれる内弟子のお千代。
最後に浮世絵の世界の流れ。版元の蔦屋重三郎、そして重三郎が新たに見いたした写楽。そして自らの衰え。
これらが混ざり合って進むのですが、要素が有り過ぎて焦点がボケてしまった感じがします。
しかし最後の短編、やや唐突感は有るものの、衰えを自覚し一人になった歌麿が向かった過去の人生の暗部。
この作品の中で唯一名前を記されない女との最後の描写が戦慄を誘います。 -
2018.11.2(金)¥180(-15%引き)+税。
2018.11.9(金)。 -
短編連作。ミステリーじゃなくて、歌麿の日々を綴った話。
つまんなくはないけど、取り立てて面白くもなかった。 -
最後の最後で、藤沢節だった。
孤独を極める小説家。 -
喜多川歌麿と藤沢周平という名前を見て選んだ本。この前行った写楽展で写楽の絵が他の絵と比較される形で展示してあったのをみたけど、確かに写楽の絵に比べると他の絵はすまし顔で面白みが少なかった。
あとその場に歌麿の絵もあったのでみたけど、この小説の歌麿よりも繊細でやさしい感じを絵から感じた。 -
ちょっと年食った歌麿先生が主役の小説。なんですが、主役ってより語り部という感じかも。周平ってば多分歌麿先生より女の子書きたかったんだと思うんだよね・・・。
歌麿先生と馬琴という不思議な組み合わせが押されてて笑えましたww
それにしても10ページ位しか出てこない京伝がいっちいちツボな描写で悶えました。愛嬌がありすぎる眼とかさあ!はにかむような笑い顔とか!ね!何で歌麿先生は京伝みると反射的に馬琴を思いだすんですか・・・?
あと蔦重と歌麿と京伝が集まってる素敵シーンで思ったんですが、
江戸文人の集まりってタモリ倶楽部っぽい。大真面目に馬鹿をやる人たちっていいですよね。 -
想像以上に切ないです。
後日、切手に歌麿の美人画を見つけたのですが、切手なのに(小さいのに)本当に美しかった‥
この話、何からなにまで本当なのでは と思ってしまいます。 -
《喜多川歌麿》
を意識して見始めたのはこの本のお陰。
藤沢周平は他にも浮世絵を題材にした物語(暗殺の年輪/葛飾北斎や花のあと/安藤広重)を書いているものの、この喜多川歌麿女絵草紙は短編連作として一冊がまるまる歌麿のことで書き綴られえいる。それが意外にも強く心を打たれました。
自分の気に入った女性を描き、その女性の背景にある過去や内面を取り入れながらも、大衆に受ける仕事(時代に合ったものを求められるように作っていく、そして決してこれだけは譲れない自分の信念を貫いていく。)をしていく歌麿の姿はどこか強くもあり、脆くもあり、不安定な闇を背負っているようで、少しハラハラしました。
桜の描写が溜息の出るほど素敵な作品。
(2009.05.28)
-
物悲しさがよい。