早春 その他 (文春文庫 ふ 1-35)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 172
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192358

作品紹介・あらすじ

主流を外れた職場、地方で入婿状態の息子、妻子持ちと交際中の娘。五年前に妻を亡くし、まだローンの残る建売の家で一人、主人公は自分の役目は終ったと感じている。そんなある日、娘に再婚を勧められ-。初老の勤め人の寂寥を描く「早春」。加えて時代小説二作と、作家晩年の心境をうつしだす随想、エッセイを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作「早春」の他、時代小説2編と随筆4編の構成であるけれど、なんといっても興味は現代小説の「早春」
    妻と死別し、仕事人としては窓際に追いやられ、妻子ある男と恋愛をしている娘と二人暮らしの男。
    何のために生きてきた、今まで生きがいとしてきたものが失われて行く時、それらが何故生きがいたり得た物だったのかわからなくなる。
    そんな男の悲哀は読者自身にも襲いかかっても不思議はなく、だから響くのだが。
    読みながら藤沢周平作品を読んでいる感触が無い。作品にのめり込んで心が躍る感覚が得られない。
    作品と人物を客観的に見てしまうような冷静な読み方になる。
    現代小説だからなのだろうか、源氏鶏太さんの小説を読んでいる感じだった。

  • 藤沢周平の短編と随筆からなる。面白いのが随筆で、藤沢周平がどのように情報収集をしているのか、時代小説家としてどのような点に気を付けているのかを書いている。また司馬遼太郎と葡萄屋で会った思い出にもふれられている。私からすれば藤沢周平も司馬遼太郎も昭和の名作家であり読み物が面白いことには変わりがないが、藤沢周平の視点からの書き様により、司馬遼太郎がその時代にいかに特別な作家であったかがうかがえる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    主流を外れた職場、地方で入婿状態の息子、妻子持ちと交際中の娘。五年前に妻を亡くし、まだローンの残る建売の家で一人、主人公は自分の役目は終ったと感じている。そんなある日、娘に再婚を勧められ―。初老の勤め人の寂寥を描く「早春」。加えて時代小説二作と、作家晩年の心境をうつしだす随想、エッセイを収録。

    令和3年7月7日~9日

  •  藤沢周平 著「早春その他」、2002.2発行。深い霧、野菊守り、早春の3つの短編小説と後半はエッセイが4篇収録されています。早春は著者には珍しく現代小説です。

  • 2019.1.11(金)¥150+税。
    2019.1.13(日)。

  • 「もう出ないかな」と思った藤沢周平さんの文庫本が出ました。周平さんの現代ものや随想は初めてです。
    粗筋は書いてみたけど、こんなもんじゃ語れませんよね、周平さんの小説は。
    時代小説は背景に過去を使っているだけで、主題は別に(例えば人情)ある小説です。ただ、リアリティーの面で自由度が高いのが特徴。例えば江戸時代を背景にすれば、武士が斬り合いをしてもさほど違和感は無いのですが、現代小説で銃の撃ち合いなどしたらやくざもので無い限り、リアリティが無いですよね。
    そういう意味では周平さんが現代物が書けない理由は無いはずで、この小説も主人公の内面に迫るものですから、周平さんらしい小説です。ちょっとさびしくて、せつなくて。
    ちなみにこの本に納められた3篇のうちでは野菊守が1番好み。主人公の年寄りの冷や水的頑張りも素敵ですが、野菊に例えられるヒロインも素敵でした。

  • やっぱり好きだなぁと思った。孫かやって来る話が特に好き。

  • 藤沢周平の現代小説は初めて読んだが、ストーリーに流れる、中年男の疲れた感、陰は、いつもの時代小説と同じ匂いがした。

  • 現代小説
    枯れた感じがいいな。

  • 主流を外れた職場、地方で入婿状態の息子、妻子持ちと交際中の娘。五年前に妻を亡くし、まだローンの残る建売の家で一人、主人公は自分の役目は終わったと感じている。そんなある日、娘に再婚を勧められ。初老の勤め人の寂寥を描く「早春」。加えて時代小説二作と、作家晩年の心境をうつしだす随想、エッセイを収録。(2002年刊)
    ・深い霧
    ・野菊の守り
    ・早春 現代小説
    ・随想など
     小説の中の事実
     遠くて近い人
     ただ一度のアーサー・ケネディ
     碑が建つ話

    時代小説二編は、藤沢らしい作品。安心して楽しめることが出来る。現代小説は、救いが無く、さほど面白くない。「小説の中の事実」では、著者がいかに史実にこだわったかを伺い知ることが出来て、興味深い。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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