新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-39)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192396

作品紹介・あらすじ

この作家のロングセラー"隠し剣"シリーズ第二弾。気難しい読者をこれほど愉しませた時代小説は稀れである。剣の遣い手はさらに多彩に。薄禄の呑んだくれ藩士のくぐもった悲哀を描く「酒乱剣石割り」、醜男にもそれなりの女難ありと語る「女難剣雷切り」など、粋な筆致の中に深い余韻を残す名品九篇を収載。剣客小説の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 武士物9編。
    毒見役の職分を果たしたがために失明した男の失望、その夫と家を守るために夫の上司に身体を任せた妻の愛を描いた「盲目剣谺返し」は映画「武士の一分」の原作。

  • 裏表紙の説明欄によると、"隠し剣"シリーズ第二弾との事ですが、続きモノではなく、一話一話が独立した短編集です。

    共通しているのは、各話の主人公が隠された剣術の奥義・“秘剣”を遣うという事。そして、この剣の遣い手の男たちは大概不遇で、武士社会ヒエラルキーの下の方でくすぶっています。そんな不遇な男たちが“秘剣”を振るうことに至る様々な事情が、藤沢さんの端正な文章で綴られています。
    個人的には、第九話「盲目剣谺返し」が明るめの終わり方で好きでした。
    "隠し剣"シリーズ第一弾の「隠し剣孤影抄」は未読なので、今度読んでみようと思います。

  • 面白かった。本当に鮮やか。

  • 苦悩する藩士が多い本でした。
    めでたしめでたしで終わる話が殆ど無く、読みたかった『盲目剣谺返し』が一応明るい終わり方だったのでほっとしました。

  • 「隠し剣孤影抄」の姉妹編だそうな。9編の短編がそれぞれ独立した形で「剣の話」を描いているのは孤影抄と同じ。「孤影抄」より明るめなイメージ。明るい話ばっかり!ということではないけれど。
    藩の政争の影で振るわれる秘剣の話が今回は多かったように思うが、権力を握って表舞台に立つ者達ではなく、剣を握ってごく普通に生きる者達の人生、その中で一度振るわれる剣が描かれている。エンディングですべて一件落着!となる話ではなく、ああこれからも人生は続き、日々は過ぎていくのだな…と感じるものばかり。この場合、続いていく人生というのはそれぞれの主人公だけではなく、関わった者達すべてのものを感じてしまう―――気がする。

    実は、私は主人公が報われない話が苦手だ。かと言って、物語はハッピーエンドであるべきだ!というわけでもない。不幸のどん底に落ちようが人殺しを重ねようが破滅がすぐそこに迫っていようが何もかも失おうが(以下、お好きなバッドエンディングを思い浮かべて下さい)ストーリーとして面白ければ読むのは好きだ。むしろそういう話は好きだ。
    じゃあ何なんだ、と言うと、「誤解」や「裏切り」が駄目なのだ。しっかりそういう話を読むくせに、心情としてどうも苦手で、物悲しくなってしまう。寂寥感まで行かなくとも、似たような勝手極まりない思いに浸ってしまったりする。ド派手な転落ならまだしも(何だそれ)、淡々と生きていた結果として報われないと―――寂しい。
    ことにそれを感じるのは時代物、しかも藤沢さんのストーリーに多い気がしてしまうのだった。それだけそういう何気ない破滅や寂しさ、静かな奈落を描くのが上手いんだろうなあ。

    これもそういう、広義で「報われてなかった」「報われないであろう」話が多い。でももちろんすべてが悪いわけではなく、救いが見える話もある。その中で地味なんだけど最後の奥方が忘れられない、「孤立剣残月」を個人ベストとして挙げておこうかな。ストーリーとして素晴らしいのはラストの1本だと思うのだけれど。

  • 孤影抄と違って映像化に向いた作品は少なめ。個人的には盲目剣谺返しが武士の一分と被って、映像でみたいと思ったら原作だった。九篇収録というボリュームも有り難い。また前作と合わせて読み直したい。

  • ときどき、時代小説、読みたくなります。
    映画「武士の一分」の原作を含むこの一冊。面白かったです!

  • 人生が凝縮されているという書評を読んで手に取る。世間は不条理にあふれている。しかし、人生を描かない小説というのはほぼないわけで、ただこれは、いってみれば暇つぶし的に読む本の類で、読んだから何かのためになるという類ではない。
    でも、残月剣で、高江さんが、襷と懐剣で走り寄るシーンや、谺返し剣で、「今夜は蕨たたきか」というシーンは、泣いた。

  • 剣を使うことによって生死が近くに感じられる。
    生死が近くに感じられる時、人間の本性が姿を現す。

  •  藤沢周平「隠れ剣 秋風抄」、2004.6発行、9話。秘剣を操る武士とその武士に関わりのある女性、その女性の存在が、この9つの物語の中核を成しています。読みながら、いつの間にか自分が物語の武士に成り代わっていました。どれも読み応えがありました。特に、偏屈剣蟇(ひき)の舌、孤立剣残月、盲目剣谺(こだま)返しの3作品がお気に入りです。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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