- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167198039
作品紹介・あらすじ
雑誌文藝春秋が発掘、掲載して内外に一大反響をまきおこした昭和天皇最後の第一級資料ついに文庫化。天皇が自ら語った昭和史の瞬間。〈解説座談会〉伊藤隆・児島襄・秦郁彦・半藤一利
感想・レビュー・書評
-
私には読解が難しかったかな。
昭和天皇を知ろうと読んだ本であったが、昭和天皇を研究している人向けの本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独白録の内容よりもむしろ最後の座談会の方が意味があるように思われ。
独白録の読み方の正否ではなく、資料そのものへの冷静かつ構想力ある見方を歴史家と言われる方々がしているのか、その覚悟はあるのか、この方々に世論が左右されていないか、色々考えさせられる内容で、これを読むだけでも意味がある感ありです。 -
この独白録が東京裁判で天皇の訴追を免れるために作成されたのではないかとの憶測(秦郁彦)があるが、真相はわからない。ただ仮にそうだとしても、関係者の日記等との整合性からみても、事実を捻じ曲げているとは考えにくい。と同時に回想録の類の常として、本人の評価を貶めるようなことは書かれていない。その意味で一定の留保は必要であるが、本人の肉声として概ね客観性を備えた歴史的資料と言えると思う。
日本が無条件降伏を受諾した唯一の条件は国体の護持である。それは昭和天皇の強い意思でもあった。逆に言えば国体の護持が保障されないなら最後まで戦っていたということであり、実際昭和天皇はそう発言している。この独白録で初めて明らかになった事実だが、これは何を意味するだろうか。
実権のない立憲君主という枠内ではあれ、昭和天皇が卓越した政治的理性とリアリズムを保持し、戦争回避に多大な努力を払っていたことは随所にうかがえる。自らの意思に反して開戦を余儀なくされ、頼れる重臣もなく苦悩する姿には同情を禁じ得ない。だがその昭和天皇も、ギリギリの段階で天皇制廃止と引き換えに国の破滅を回避するという選択肢はなかったということだ。
天皇とて一人の人間、それはあまりに苛酷な選択ではあろうし、天皇制なくして日本という国はないという思いもわからぬではない。結果として紙一重で国の破滅を回避できたし、天皇制も存続できたのは喜ぶべきことだが、この一点だけは割り切れないものとして残る。そう感じるのは私だけだろうか。 -
独白録と寺崎氏の娘さんの手記、昭和史研究家の座談の三部構成。
独白録は要所の解説付きで読みやすい反面、ここで取り上げられない論点は忘れられがちになる誘導的な側面がある。ここで語られたことは例えば原爆や東京大空襲のように語られなかった事を陰画のように浮き彫りにする。
座談は昨今のように予定調和ではなく、相手をやり込めんばかりに白熱していて面白い。その後の研究成果もあり今では児島や伊藤のように素朴な回想として読むのは難しいのではないか。 -
昭和天皇がもしも病没せず、上皇として余生を送られたなら、歴史家なら誰でも ”あの日” の出来事をインタビューしたいことだろう。
いずれにせよ、昭和天皇はあの時代の大日本帝国に君臨したエンペラーであって、慈悲深い人格者というよりも、貪欲な支配者であったのだろう。 -
戦前外交官を務め、戦後昭和天皇のお側に仕えた筆者が書き残した昭和天皇の太平洋戦争を振り返る独白録。本文書の位置付けについては解説で議論されており、何らかの意図を含んだものであったかもしれないが、天皇が何を思い、何を考えていたかを知れる興味深い一冊。
また、本書をめぐる筆者と妻、そしてそれを世に出した娘の家族の物語が感動を添える。 -
文庫本120頁程度
マリコの父親だった! -
(108)
-
書店の皇室特集で購入。これが発表された当時にはまだぼくはその重大さがわかる歳ではなかったので初めて手にしたのだけど、いかに帝国憲法と現憲法の天皇の位置付けが異なるのか、やっと理解した気持ち。そして「ベトー」をとにかく避けて立憲君主たろうとする昭和天皇が、結論を現場役員から丸投げされて取締役会との整合に苦慮するオーナー企業の社長に見えてくるのはぼくだけか。