炎環 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200039

作品紹介・あらすじ

辺境であった東国にひとつの灯がともった。源頼朝の挙兵、それはまたたくまに関東の野をおおい、鎌倉幕府が成立した。武士たちの情熱と野望を激しく描く直木賞受賞作。(進藤純孝)

感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマを見てから読んだので、すっと内容が入ってきた。鎌倉時代は男の時代というイメージがあったけれど、なかなか女も裏で暗躍する時代だった。本書の政子には悪女というより、周りに虐げられる女の子だった。

  • 昔から永井路子さんの描かれる世界が大好きです。
    特に今年は、大河ドラマで同じ時代が放送されているので、わかりやすい!
    今はのほほん?としている義時も、血なまぐさい戦いに巻き込まれていくんでしょうね…。
    源氏、人を殺しすぎです。
    対して頼朝を救った平家は滅びたけど、女系をたどると今に続くんですよね。幕府を作って成功したと思われる頼朝は公式には子孫がいません。いったいどちらがいいのか。

  • 面白かった。
    鎌倉時代は今までそんなに興味なかったけどそれでも面白い。
    頼朝の弟全成、梶原景時、政子の妹保子、政子の弟義時から見た鎌倉幕府の変遷が描かれている。
    保子怖いなぁ… 政子の味方だと思って読んでたから余計に。
    梶原景時はよく知らなかったけれど好きになりました。
    余談だけれど、保子と義時は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とはかなりイメージが違った…

  • 鎌倉幕府成立前夜から承久の乱までの悲喜交々。北条政子の妹、保子の描写が秀逸。権力を掴む者は、権力を掴んでから権力者になるんだねえ。

  • 源頼朝が創った鎌倉幕府を話の中心とし、それに関わった全成、梶原景時、保子、北条義時、一人一人の視点から見た歴史の側面。

    1192作ろう鎌倉幕府・・・というワンフレーズに何人もの人々の一生が含まれているのだと今更ながら感じた。昔は歴史に興味など無かったのにねぇ。年を喰うと嗜好が変わるのかしらん。

  • 鎌倉幕府草創期を、異なる人物を主人公にした小品の連作としてまとめることによって、複眼的に異なる見方を提示している。俯瞰的に物事を見るのが好きな人には面白く読めるだろう。一人に感情移入したい場合は散漫に感じるかもしれない。

  • これは凄いの一言。女性にしか書けない女性というのはこういうことかなあと思いながらも、思慮深い男性もきちんと描けているというのが、脱帽。

  • 父上の書籍を読破しようシリーズ1冊目。
    普段読む本よりはるかに小難しい系だが、何とか読めた。

    この炎環という本は、源家の人間の話だった。
    短編集のような、長編のような。まず似たような名前が多いから主人公が誰なのやら覚える事から。
    人が覚えられず、内容があまり頭に入らなかったが、権力争いの話だったような気がする。
    そのころの武家はこんな風に争いばかりしていたのだろうか。
    「いもうと」はおもしろかった。女って怖い。

  • 本書は,源頼朝~北条執権政治時代への変遷について,義経の兄の今若,得度して全成となった頼朝の異母弟の話,頼朝の懐刀であった梶原景時の話,北条政子の妹で全成の妻となった保子の話,執権北条氏の時代を到来させた政子の父時政の子四郎義時の話の短編4小説からなる。短編ではあるが,一つ一つの話が絡み合い,あたかも一つの長編小説のような構成でもある。

    全成は母の常盤に一番似ているといわれるほどであり,全成は頼朝に対面した時,頼朝のどこにも父の面影が感じられないと思った。全成は父の義朝と八歳の時に別れたきりで,父の顔もうつろにしか覚えてなかったが,父の無骨で逞しい顔とはまったく違い,自分よりも公家匂のあるような,色白でおっとりした頼朝の顔に驚いた。疑り深く,自尊心の強い頼朝に影のように寄り添いつつ,何の欲望も野望も持っていないように振舞ってきた全成だった。頼朝の死後,頼朝の子頼家には,荒くれの坂東武者を統率していける器用さも力強さもなく,家中での争いが当然のように起こった。その時も全成はひとり静寂を守った。しかし,頼家はこの叔父の態度を狡猾と思い,何かの策略があると思い,罠にかけて殺してしまう。全成にはたして何かの思惑があったのかどうかはわからない。

    梶原景時は,当初は頼朝の敵であったが,頼朝を見逃したことがあった。頼朝のありかを訪ねていた景時が,木の洞穴に潜んでいるのを,それと知りつつ見逃したのである。疑り深い頼朝が景時を重用しているのは,そんな経緯があるからだと言う者もある。景時は,頼朝から指示されることもなく,暗黙のうちに頼朝の心を見抜き,暗殺や誅殺を行った。景時は義経を讒言し,遂には死に追いやった張本人のように言われているが,それは表に出ている事実のみを手繰ればそうなるが,心の奥深くにあるもの,頼朝というより,武士の拠って立つことのできる柱である幕府を軌道にのせる事,それらも総合的に踏まえると,とかく悪者扱いされる景時も鎌倉幕府設立の犠牲者であり,義経よりも辛い目にあっていたのではないかとも考えさせられる。頼朝を支え続けてきた景時だが,頼朝の死後,頼家の一見豪快で果断に富むように見える軽率さに,御家人の不満はたかまり,遂に御家人たちは頼家から裁決権を取り上げてしまう。今後の訴訟は,北条,中原(大江)など十三人の御家人の合議制によることになった。これでは将軍の権威はまるつぶれである。景時はこれまで築き上げてきた将軍の権威が,たった1代で無残にも崩れ落ちてしまった事に嘆いた。そんな景時を御家人たちは煙たがり,頼家の権威を高めようとしているのに,そんな頼家からも嫌悪され,弾劾状を突きつけられる。それには一言も申し開きをせず,引きこもったが,それでは終わらず,謀反の嫌疑をかけられ,攻め殺されてしまった。申し開きをしなかった景時の生き方は,義経を死に追いやったことも,全て飲み込んで死んでいったように感じる。

    義時にいたっても,そんな景時と同じように寡黙であったが,そこには景時のような”陰”の気がなく,”陽”の寡黙であり,それがやがて父の時政を凌ぐ器量を見せるようになり,弟の五郎と共に北条氏の地盤を確固たるものにしてゆく。後鳥羽上皇による承久の乱が最大の難時だっただろうが,天皇に歯向かってまでも,武士の土地を守ってゆく幕府,物申す幕府の地盤を固めた人だといえる。通常,元の天皇に向かって,”乱”と使うのもおかしなことで,北条方が乱を起こしたととられるようなものであるが,勝てば官軍であり,北条の力を恐れ,上皇は北条をゆるし,上皇の命により北条を責めた者を逆に殺し,流罪とする。そんな上皇を遂には,義時は隠岐に流罪としたのである。この処置を鎌倉武士たちはどう見ただろうか。やはり,自分たちを守ってくれるのは北条だと思ったのではないだろうか。それが,武士の拠って立つ地盤,幕府をより強固にしていったのであろう。

    なお,本書は直木賞受賞作である。

  • 鎌倉幕府初期、頼朝から実朝までの時代を4つの短編で浮き彫りにする歴史小説集。
    頼朝の異母弟:全成(常磐腹の今若)を主人公とした「悪禅師」。
    梶原景時を主役とした「黒雪賦」。
    頼朝の正室:政子とその妹:保子(全成の正室)を中心に将軍家の人間模様を描いた「いもうと」。
    そして、北条家の視点で描かれた「覇樹」。
    全部を読むとそれぞれがそれぞれの立場で鎌倉幕府を幹のあるものとするために行動していたことがわかる。

    …んだけど。
    要は頼朝くんがダメだったってことかな?
    歴史に名を刻んだ王者が王者たることができたのは、そのまわりをそれなりの人が支えていたからだよね。
    そして、王者や偉人と呼ばれる人がけして100%エライわけじゃないってこと。
    歴史小説は作者の1つの解釈だけど、いろいろ読むとためになるなぁ!

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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