北条政子 (文春文庫 な 2-21)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (603ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200213

作品紹介・あらすじ

伊豆の豪族北条時政の娘に生まれ、流人源頼朝に遅い恋をした政子。やがて夫は平家への反旗をあげる。源平の合線、鎌倉幕府開設-御台所と呼ばれるようになっても、政子は己の愛憎の深さに思い悩むひとりの女だった。歴史の激流にもまれつつ乱世を生きぬいた女の人生の哀歓を描いた、永井文学の代表的歴史長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 北条政子って、すごい女性だったんだと、改めて感じた。

  • 「炎環」が面白かったので、続けて読む。語り口が見事で、淀みのない展開だ。歴史小説は、昔の作品を探した方が面白いのが見つかる気がする。それにしても、北条が政権を奪取するまでの鎌倉は凄惨だ。

  • イメージが一変。情熱的な女性。

  • .


    単行本の大きさで全325ページ。一ページが二だんになっていて、ぱっと見はすごい文章の数でした。しかし、歴史独特の長くしつこい説明があまりなく、読みやすかったです。

    義経、義仲の軌跡を辿っていくと比較的極悪人らしいイメージのついてしまう頼朝を、政子を通し、女性らしい感性から書かれてしました。頼朝の話は読んだことがなかったので、新しい視点から歴史を発見出来、とても新鮮な気分になりました。


    源平合戦の前夜から、実朝・公暁の死までが書かれています。

    しかし、そこに、頼朝の妻になってからの政子の幸せな話が書いてあるわけではありませんでした。

    そこには、動乱や幕府の中で、駆け引きをし、裏切り、復讐する、その時代が故の顚末が広がっていました。

    とくに頼朝が死んでからの政子の暮らしは、読んでいくうちに目を覆いたくなってしまうほどでした。

    大姫、三幡、万寿(頼家)、千幡(実朝)……。
    これら政子の子どもたちは、政子を残してみな亡くなっています。

    頼朝のような偉大な父を持つ政子の家族は、一緒に暮らせる環境にはありませんでした。それゆえすれ違い、お互いに憎悪や復讐心を燃やし、少しずつずれていく政子と子どもたちの関係が、とても痛かったです。

    「母」と「将軍の妻」の間をさまよう政子の葛藤が、とてももどかしかったです。

    .

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「極悪人らしいイメージのついてしまう頼朝」冷徹で非情な人って感じですよね(私は義経贔屓)。なので北条政子についても良いイメージは持っていませ...
      「極悪人らしいイメージのついてしまう頼朝」冷徹で非情な人って感じですよね(私は義経贔屓)。なので北条政子についても良いイメージは持っていません。でもサクサクと読めそうなので平清盛がTV放映されている間に読んでみようかな?っていう気になりました。。。
      2012/03/09
  •  辣腕の尼将軍でなく、愛情過多で後悔を繰り返す、一人の女の無我夢中な素顔を描いた作品。
     坂東女である彼女の、地に足の付いた逞しさと、愛情に盲いた愚かさは、決して絵空事ではない。
     策謀と裏切りが重なり合う終末は、老いたる政子の新たな孤独を予感させる。
     悲劇の翳を曳く身内の死の如き、乱舞する雪を背に立ち尽くす姿がまざまざと浮かび、荒涼の風景に胸が詰まった。
     著者が拘りを持つ時代だけに、鎌倉武士団の内情描写も深い。
     俗に冷酷と云われる頼朝の、兄として父としての無言の追悼。
     後世に「曾我の夜討ち」と呼ばれる裾野の『叛乱』の真相など、史料に基づく考察は厚みが違う。
     また、政子の娘・大姫の頑ななまでに一途な純愛は、散華の彩りを添える。
     亡き許婚・木曾義高だけを想い続け、他の全てを、両親さえも拒み通した少女の哀しさは、愛に翻弄された母の苛烈な血をまさしく継いでいる。

  • 政子の生涯を考えると何が幸せなのかわからなくなります。

  • 1人の女性が背負うには余りにも重すぎる、人生の光と影のうちでも、影の闇の深さが際立つ人生譚。
    なんと数奇な運命だろうか。

  • 承久の乱の大演説までは入ってない。永井さんの筆で読みたかったなぁー
    北条政子といえば女傑として名高い人ですが、女傑というよりも、家庭人として描かれていて、家族との関係が彼女の人生にとって大きなテーマだったと感じられた。
    実際は、全然へっちゃらだったのかもしれないけど、このお話では悩み嘆き後悔し続ける姿が印象的で、業を背負って行きていく姿と肝の太さに、女傑っぽさを感じる。

  •  北条政子と言えば、北条義時が後鳥羽上皇から追討宣言を受け、朝廷と戦うべきか御家人たちが迷ってるときに、頼朝の恩を忘れるなと檄を飛ばし、1221年の承久の乱にで勝利したというのは有名な話。
     小説はそこまで話がいかず、頼朝の妻になり、大姫、三幡と続けて娘を亡くし、頼朝も亡くなり、将軍になった息子頼家、実朝、孫の一幡、公暁まで全員暗殺され、愛しても報われない、孤独で悲しい運命をたどった女の半生を綴っている。
     しかし、目まぐるしい人生だ。しかも短期間に愛憎、妬み、野心が絡み合って身内通しで裏切ったり殺しあったり、ちっとも心休まるひと時がないではないか。貧乏はつらいけど、百姓のほうがまだ人間的な生活ができてたかも。だいたい母子なのに同じ家にいながらなかなか会えないってそもそも乳母制度がおかしい…養父母が野心持ち始めちゃったりしてね。

     備忘録であらすじ書いときます。

     政子21歳.平治の乱で平家に敗れ流人となって伊豆で過ごす源頼朝と恋仲になる。平家方である父時政の反対を押し切り、かけおち同様にて結婚。
    頼朝は勢力をのばすべく、山木兼隆(一度は政子と婚約した)を倒し、人質として家に置いていたその息子の義高も殺してしまう。義高は当時まだ6歳だった頼朝の娘大姫のいいなずけだった。
     頼朝の弟義経は壇ノ浦の戦いでもめざましい活躍を見せ、平家から三種の神器を取り戻し(草薙の剣だけは海から見つけ出せなかった)、その手柄として朝廷から官職を与えられる。義経がそれを兄に断りなく受けたため、頼朝の逆鱗に触れ鎌倉への凱旋を許されなかった。そして頼朝は弟の愛人である静御前を自分のものにしようとする。しかし静は「よしのやま みねのしらゆき ふみわけて 入りにしひとの あとぞ恋しき」
    と義経を想う気持ちを歌にし、これを拒否。頭に来た頼朝は静を殺そうとするが、政子が命乞いをしてとりとめる。が、身ごもっていた赤ん坊は男子だったので殺されてしまう。
     義経は奥州(岩手)の藤原家を頼って逃げ込むが、頼朝から圧力をかけられていた泰衡は義経の家来である弁慶とともに殺してしまう(衣川の戦い)。が、その藤原氏さえも頼朝は攻め、泰衡は自分の郎徒に殺される。(藤原家の封建制度が成り立っていなかった証拠)。
     頼朝の長女大姫に後鳥羽天皇の嫁入りの話が持ち上がる。しかし大姫は父親に殺された義高のことが忘れられずこれを拒否。体もだんだん弱っていき、ついに死んでしまう。それから間もなく頼朝の急死。長男の頼家が後を継ぐ。大姫の代わりに次女の三幡が後鳥羽上皇(天皇の座は皇子にゆずる)に嫁入りすることになる。が、三幡もなぜか急死(上皇の指示で殺されたという説あり)。
     後を継いだ頼家は女好きで仕事もいいかげん。女房の実家である比企家ばかりをひいきし、御家人からも評判が悪かった。北条家は比企家と勢力争いをするが、比企家側に立つ頼家は、政子の妹(保子)の夫全成(義経の同母兄、僧侶)を謀反人として常陸国へ流したあげく、息子の頼全とともに殺してしまう。 頼家が18歳の年、病に倒れ死の床に突いたとき、北条家はクーデターを起こす。頼家の義父比企能員を暗殺、比企家に火をつけ、頼家の嫁と嫡男の一幡まで殺してしまう。…ところが、その頼家が生き返った。北条時政(政子の父)は頼家が立ち上がる前にさっさと都(朝廷)の約束をとりつけ、頼家の弟千幡へと世代交代させ、頼家は伊豆で出家する(のちに北条家により惨殺)。
     実朝(千幡)14歳で、嫁とりは都からということになり、時政の後室牧の方ががぜん力を発揮、公家から人形のような姫をもらうことに成功する。そうなってくると牧の方は幕内で勢力を持ち始め、御家人たちからも反感を買い、牧の方のごますり豪族である稲毛重成が殺された。彼は政子の妹の夫であり、その孫娘彩姫2歳は公家で預かっていたが、この事件を機に政子のもとへ送り返されてきた。
     頼家の子善哉は北条時政の御家人三浦義村に育てられており、政子は義村に呼ばれて時々孫に会いに行くようになる、それが善哉を次期将軍にと企てているのではと勘繰られるので、政子は善哉を鶴岡八幡宮に入門させる。善哉は名前を公暁と変え、修行を積んで成長するが、父を殺された恨みを忘れておらず、北条家を倒す計画を立て、将軍実朝(叔父にあたる)を殺してしまう。三浦義村は公暁の味方のふりをしていたが最後は寝返り、将軍暗殺者公暁を切り、その功により駿河守に任官した。


     あーしんど。殺してしまうとか急死とか暗殺とかなんと多いことか。生みの親も育ての親も欲望の前には情もないのね。


     


      

  • 30年前の本ですが、読み応えがありました。

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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