朱なる十字架 (文春文庫 な 2-42)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200428

感想・レビュー・書評

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  • 細川ガラシャ。戦国時代を生きた女性の中でも好きな人だ。やはり凛としていて潔い。

    随分前だが、ガラシャが幽閉されていた味土野に行ったことがある。行き着いたところは道の終わり…山の中。ガラシャがいた証の碑がそっと建てられていた。こんなところに何年もいたなんて…とガラシャの気持ちを思わないではいられない場所だったことを思い出した。

    生き様が清々しい。心が美しい。
    改めてガラシャの強さを感じた本だった。

  • 三浦綾子さんの「細川ガラシャ夫人」や司馬遼太郎さんの複数の作品に登場するたまとはまた異なる人物像でした。忠興の嫉妬深さに対してはなるほどこんな見方をしたんだなと(忠興のヤバさを期待して読んだ方は拍子抜けするかも笑)。たまも忠興もお互い愛し合っていたのは間違いなかったけどたまはどちらかというと現代人に近い価値観を持っていてすれ違いが多かったのは残念。細川忠興銅像ガラシャ銅像に会いに行きたくなりました。

  • 「信と不信」の狭間で揺れ動くガラシャの描写がとても好きです。「信と不信」はこの物語の核でもあり、光秀、忠興、キリスト教、そして最後に自己を信じるか否か、その心理描写が内省的でありながら軽やかな筆致でつづられています。
    「見つめることは傷つくこと」、「互いに愛し合っていた故に別の世界にいることを確かめあってしまう」など、何度読んでも心に刺さる文章が多いのも特徴です。
    忠興との関係もどちらかが一方通行なのではなく、理解しあい、尊重したいと思うたびに相手と自分の幸せは違うのだと痛感してしまうとがとても苦しい。愛し合っていても幸せになれないところが細川夫婦の描写としてとても素晴らしいなと思います。

  • 細川ガラシャ。旧版蔵書。
    永井路子の本はほぼ読破しています。最も好きな時代作家。残念ながら手元に残っていない本を「読みたい」カテゴリ登録してるけど、かつて一度は読んだ(笑)。

  •  母親の書棚から借りて読みました。1981年第6刷の文庫本で、当時の価格280円です。
     それはさておき、お玉(細川ガラシャ(恩寵))の物語です。
    彼女は、明智光秀の娘で、戦国武将の細川忠興の妻です。
    子供の頃から、屈託なく無邪気で類まれな美貌の持主。
    けれど芯はつよく、頑ななまでに真直ぐです。
    荒木村重、父の光秀、夫の裏切り(家名を重んじるばかりではあるのですが)に遭い、いつしかキリスト教に救いを見出します。
     「信はすなわち不信、不信はすなわち信。」
    登場人物の心は揺れ動きます。これがこの物語の軸です。
    あえていえば、光秀が「不信」の賽の目に賭ける部分を描いてほしかったけれど、これは歴史物語ではないのでしょう。
    久しぶりに遠藤周作も読みたくなりました。

  • 「玉の背後には紅蓮の炎をあびながらくっきりと丈高い十字架が浮かび上がっているように思われた」

  •  著名な戦国女性の一人、お玉を主体とする作品を久しぶりに読み、改めて、信と不信の間で翻弄される女を書かせると著者の筆致は際立つと実感した。
     無垢で狭い少女の視界は戦乱の世において徐々に開かれ、やがて苛烈なまでの純粋さ、一途さに結晶する。
     “みつめるのはむしろ傷つくこと”であるが、敢えて苦しみを選ぶ心境があり、そこから逸らせない瞳を持つ者がいる。
     人間同士の信頼と裏切り。
     愛情と隣り合わせる猜疑。
     そして魂の真実。
     “人間が何も信じないでどこまで生きることができるか”を実践する味土野での隠棲生活。
     そうしてキリシタン信仰へ傾くお玉の心持ちは、痛々しくも眩しい。
     曖昧さや変節をどこかで受容しなければ、人は生き難くなる。
     一本気を貫くばかりでは、自分を、時には他人をも傷つけてしまう。
     それでも尚信ずる姿勢へと削がれる度し難さは、生き方の極致であり、一つの理想とも言えるのだろう。

  • 歴史に仮定は許されない。しかし、それを考えてしまわざるを得ないのも歴史の宿命。「もしも光秀が謀叛を起こさなかったら」という無意味な仮定。明智光秀の娘と生まれたために背負わされた運命に翻弄され、信仰に頼らざるをえなかった戦国女性の悲劇が描かれます。

  • 細川ガラシャ的生涯。我很慶幸在玩光榮的戰国無双之前就讀到這本書…不然一定會一邊讀一邊想到騎馬放炮還發出呀、呀、呀聲音的ガラシャ…

  • 歴史小説ではありますが、心理描写が多くて読みやすかったです。
    主人公のガラシャは、この話では現代人にすごく近い感覚を持っている女性。
    決して自由とは言えない身分ある立場でいて、それでも己の信仰を貫かんとする姿勢が眩しく美しかった。
    しかしそれ故に相容れなくなっていく忠興との愛の擦れ違いが切ない。
    時代がもっと違うものだったなら、と思わずにはいられないです。

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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