本は寝ころんで (文春文庫 こ 6-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167256067

感想・レビュー・書評

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  • 小林信彦さんの本は、映画のエッセイをずいぶん読んだことがある。
    本のエッセイも出していたのね、へぇぇと思いながら読んでみた。
    かつて週刊文春で連載されていた「私の読書日記」の書籍化だという。
    第一部が「他人に教えたくない面白本ベスト50」
    第二部が「読書日記」となっている。
    最近小飼弾さんとミヤタマ先生でハジけてしまい、山本容子さんをもってしてもその残滓が消えなくて持てあまし気味だった。この本で久々に大人の文章を耽読し、とても落ち着いた。

    「ベストテン選出は好きではない。そうしたことは、そこらのいもコラムニスト、下司評論家のやるもの」と言いつつ、海外のミステリー、エンタメ、ユーモア本の選出がそれは楽しいものになっている。
    「順位をつけるのは、作る側は楽しいかもしれないが、作られる側は1位になった人は別としてたまらない」ということらしい。

    でもこの第一部はあくまでも落語の「まくら」。
    本当に面白いのは第二部の読書日記だ。
    日記の部分を面白くしようという著者の目論見は、見事に成功している。
    読んだ本とその書評、その中に巧みにミックスされた世相や交友関係。
    94年の本なので昭和の香りも濃厚なのだが、さほど昔という感じもしないのが何だか不思議だ。
    「マディソン郡の橋」がベストセラー1位だったとか、オードリー・ヘップバーンが亡くなったことだの、ヤクルトスワローズが優勝しただのと語っている一方で、「本が売れないという前に本屋がどんどんつぶれていく」と嘆き、「日本の映画の本当の終わり」を危惧していたりする。
    そのあたりに、今とさほど変わらない世相を見るせいかもしれない。

    そうそう、その映画の話にすぐシフトしてしまうのが面白いところ。
    そしてそのたびに「よっしゃ!」と胸の中でガッツポーズをするワタクシもいたり。
    黒澤明の悪口を言うのがトレンドだった時代があったのね、知らなかった。
    そんな本も紹介されている。
    書き下ろしの執筆が終わって真っ先に観に行ったのが、イーストウッドの「許されざる者」。
    ラストのクレジットで涙ぐみ、ワーナーの宣伝部に自分と同世代がひとりもいないことを思いながらひとり歩いて帰る場面が、しみじみと胸にしみてくる。

    笑ったのは、T・J・マクレガーの「闇に抱かれた女」を読んだときの話。
    解説に犯人の名前と職業がバラシてあったらしい。
    「こうバカにされては許しておけない」と、「昼過ぎから読み始め、お茶と夕食、若干の眠りをはさんで、夜中の3時に読み終えた。いやー久々に満足した」とある。
    なんて楽しいの!1992年の記事で著者は1932年生まれ。ということは、このとき60歳。
    この熱い好奇心。素晴らしいチャレンジャーぶりにもう尊敬しかない。
    天才アラーキーとの会話と、ナンシー関さんの本の感想も面白い。

    どちらかと言えば地味な本を、軽妙な語り口で紹介してくれるのだが、惜しむらくは絶版本が多いということ。小林さんの本だって絶版が多い。
    そうだ、「古書店」というものがある!と本棚内で繋げて終わろう。

  • 典型的な小林信彦の辛口かつ面白い書評&エッセイです。趣味のあう人には必読の書でしょう。ただし、二十年以上前に書かれた文章ですから、その時代の状況と雰囲気などを知らないと、少々辛いかもしれませんが。

  • 面白い書評。キングが読みたくなった。

    ただ、エッセイ部分は話題が1991年ごろの話なので、懐かしい感はあってもあまり楽しめない。

  • 98086

    本と楽しげに戯れる著者の姿に魅かれる。

  • 2007.3.28

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著者プロフィール

小林信彦 昭和7(1932)年、東京生れ。早稲田大学文学部英文科卒業。翻訳雑誌編集長から作家になる。昭和48(1973)年、「日本の喜劇人」で芸術選奨新人賞受賞。平成18(2006)年、「うらなり」で第54回菊池寛賞受賞。

「2019年 『大統領の密使/大統領の晩餐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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