小説 伊尹伝 天空の舟 下 (文春文庫 み 19-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167259037

作品紹介・あらすじ

夏王桀に妹嬉をささげることで有〓@61F4氏の危機を救った伊尹は、桀のライバルとして台頭してきた商の湯王から三顧の礼を受け、湯王の臣となる。伊尹の狙いは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さず、ついに夏と商は激突し夏王朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、伊尹の仕事はまだ終りではなかった。新田次郎文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 古代中国の革命を描く中で、夏王朝の滅亡を桀王ひとりの暴虐に帰すのではなく、体制の限界と見ているのが合理的で、湯王を単なる聖王とも、桀王を単なる悪王ともしていない点に読み応えがある(宮城谷版『三国志』での後漢の衰亡もそのように描かれていたように思う)。
    しかし合理一辺倒ではなく、あくまで古代は古代であり、呪術が生きている遠い時代としても書くところに、物語の奥深さと伸びやかさがあった。

    主人公・伊尹は、史書において「阿衡」(「はかりのごとき人」)と称賛され、政治における絶妙な平衡感覚をもったひととされるけれど、この小説そのものも虚と実のバランス感覚が卓絶した作品であるのだろうと感じた。

  • 全2巻

  • 開基の功より、守成の勇

    紀元前1600年という遥か昔の、文字もない時代の出来事や人間模様を、ここまで完成した物語にしていることに驚嘆する。
    また、摯の誕生から商夏盛衰まで、摯の立場や各后のパワーバランスの目まぐるしい変化がうまく描かれているため、最後までだれる部分がなかった。
    時代背景にある呪術的思考を、新鮮に感じつつも、そうした一つひとつの思考に共感できる部分があることもまたおもしろい。

    それにしても、夏滅亡寸前まで、桀が目覚めなかったのが口惜しい。

  • 伊尹は一階の料理人から宰相(さいしょう)にまで登りつめた人物である。湯王〈とうおう/天乙〉を助け、夏の桀〈けつ〉王を討って天下を平定。こうして殷(いん/商)が建国される。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/01/blog-post_7.html

  • 978-4-16-725903-7 404p 2013・7・5 28刷

  • 約3500年の前の話なのに、とても近い過去の話に思えるところも作者の筆力か。

  • 各登場人物の描写が足りないと思う。特に、伊尹が湯王を助けることとなる経緯がスッキリしない。史実にはあまり出てこないからかも知れないが、小説なのだからうまく作り込んで欲しかった。

  • 自作農の主人公がスカウトされて、勤務先で活躍していく話。現代風に言うと。
    そう書くと途端に面白くなさそうに見えるのはなぜだろう。

    大きなことは、一人ではできない。組織に属する必要がある。
    が、組織に属した途端、多くの人は組織の価値観に染め上げられる。
    そうした状況の中で、いかに素志を貫徹できるか。
    際立った組織人というものに感じる魅力というのは、その一点に限られるんじゃなかろうか。

    主人公は組織(商)に属してしまったことで、その清冽さを失った。
    けれど、組織の中で彼の持つ理想を実現しようとし、かつ実行したという点で、その生き様には際立ったものがある。
    なんだけど、そうなると所謂「普通の歴史小説」って枠になっちゃうんだよねえ。
    いやまあ素材的にそうならざるをえないんだけど、上巻の清々しさが強烈な印象だっただけに。

  • 「幸せとは、喜びだけからくるものではありません。人民が苦しんでいるとき、ともに苦しむことのできることが、すなわち真の幸せなのです。この、ともに、ということができる王こそ、至福者であり、最高の王というべきでありましょう」

  • わずかな史料から古代中国を鮮やかに描き出した。伊尹という宰相を描きながら人間の誠実さを問う。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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