三国志 第一巻 (文春文庫 み 19-20)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167259211

感想・レビュー・書評

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  • ゲームの動画配信を見て正史三国志に興味がわいたので、なんかないかと探したら宮城谷版があるじゃない。宮城谷歴史小説は学生時代よく読んだ、楽毅、孟嘗君、重耳が好きだった。で、本書、衰退していく後漢王朝が舞台。蒼天航路でちょっとだ出ていた曹操のおじいさん曹騰は巻末でまだ30代。先が長いなー。

  • 読む前はちょっと腰が引けていました。
    宮城谷昌光だからなー。
    史実に基づいたエピソードが、多少時系列を前後させながら淡々と書かれているんだろうなー。
    難しくなきゃいいけれど、ま、三国志だし、なんとかなるか。

    いや、もう、面白かったのなんのって、久しぶりに手を引っ張られる勢いで物語世界に引きずり込まれました。
    普通の三国志は、人心がすさみ食べる物にも事欠くような世の中で黄巾の乱が起こり、それを憂いた劉備と関羽と張飛が桃の木の下で兄弟の契りを結ぶところから始まるのですが、この本は違う。
    「四知」から始まります。

    「四知」とは「天知る。知知る、我知る、子(なんじ)知る」のことで、誰にもバレないだろうと思っても、悪事は露呈しないわけがないという意味です。
    この言葉を言った楊震(ようしん)は、後漢時代の儒者であり、請われて重臣となった人です。
    その清廉潔白の人が、陥れられ死なねばならなかったのが、後漢という時代。
    三国志と言いながら、物語はここから始まります。
    まるで、幕末を描こうと思って関ヶ原から始まった、みなもと太郎の「風雲児たち」みたいじゃありませんか。

    少し前の時代から始まることによって、時代の背景が明確になり、何年とか誰がとかの個別のことはさておき、流れがつかめるようになります。
    どういうわけか短命な帝が続いた後漢時代。(後半は毒殺じゃね?って思っているんですが、どうでしょう)
    帝が若くして亡くなるということは、皇太子が幼いということ。
    皇太子が幼いということは、後見人が力をもつということ。

    というわけで、帝の未亡人である皇太后と、その血族が力を持つ時代が続きます。
    善政を布くならそれで構わないのですが、そういう人ばかりではありません。
    自分達の好き勝手にふるまうことに歯止めが効かなくなる人が多いわけです。
    降ってわいた権力ですからね。

    そして、王朝が堕落すると、官僚も堕落します。
    自分たちだって好き勝手やっていいだろうと。

    もちろんたまには正しいことを言ったりやったりする人もいますが、そういう人はたいてい目の上のたん瘤扱いされて、最終的には追放されるか命を奪われます。
    ローマ帝国の末期みたいですね。

    そんな時、帝に子どもが生まれます。

    しかし生みの母は殺され、父に愛されることもなく、見かねた皇太后が手元に置き慈しんで育てたのが後の順帝です。
    いつ何時命を狙われるかわからない立場の皇太子ですが、大仰に警護すると却って敵を刺激することを畏れた皇太后は、幼い宦官たちで順帝の周りをガードします。
    なので、一度皇太子の座を追われた彼に帝の座を持ってきてくれた宦官たちを、順帝はとても信頼しています。
    しかしそれが、官僚対宦官、外戚対宦官の火種にもなってしまいます。

    いや、順帝の時代なんて、ほんのちょっぴりしか書かれてないんです。
    ほとんどは彼の父親安帝のころか、その前。
    で、順帝の死後の後継者争いでこの巻は幕を閉じます。

    固有名詞は難しいので、なんとなくで判断。
    時代は後漢の中盤なので、福岡県の志賀島で発見された金印のちょっと後の時代。卑弥呼より結構前。
    くらいの知識でも十分読み進めることができます。(よいこはもう少し勉強してね)

    書き忘れましたが、順帝が幼い頃から身近にいた宦官の一人が、曹操のおじいちゃんです。
    一般的な三国志ではあまり評判のよくない曹操ですが、私は曹操一押しなので、今後がめっちゃ楽しみです。
    よく考えたら、三国志って三国ができる前の話がメインなんですよね。
    なら、このアプローチもありだな。

  • これは新しい三国志だ。本当に三国志を知ろうとすれば、後漢王朝が何であったのかを知悉する必要がある。曹操の祖父、曹騰もそんな時代の人であり、混乱、衰退する王朝にあっても、王朝に尽くした楊震のような人もいたことに勇気づけられる。

  • 140809 中央図書館
    岩波文庫『演義』、吉川三国志、北方三国志を読んできた上で、ついに宮城谷三国志に挑戦。連載時もまったく近寄らなかったので、事前知識ゼロで読み出したところ、後漢のHistoryから縷々はじめられていることに驚いた。
    帝の継承、外戚勢力の扱い、皇太子選定といった営みが、王室継承プロセスの不安定さの根源となっているさまが、連綿と綴られていく。それこそがヒトと権力の歴史を語ることである。

  • 世に三国志、数あれど、最も入りづらい。その辺が爺さん受けする理由か。

  • 曹操の祖父が少年の頃なので正確にいうと後漢史であり三国志zero。大抵の三国志本は劉備三兄弟の出会いから始まるが、宮廷闘争史から始まる骨太な内容。

  •  三国志といえば、血沸き肉躍る劉備、関羽、張飛の大活躍するドラマ、と思って読み始めると大違い。著者にいわせればこうでなければならないのだそうだが、40年近く前に吉川英治版を文字通り寝る間も惜しんで一心に読みふけった身には、違和感大きすぎ。これが同じタイトルの物語なのか。
     正直、最初のうちは読みにくい。三国志の主要人物の1人曹操に至る人物列伝をはるか昔の後漢王朝時代から語っているのだが、個々のエピソードというか枝葉が多く、それにからむ人物が錯綜していて何が重要な幹なのかがわかりにくい。吉川版が簡明直截なのは、こういう前提を一切省いて、ごろついていた上記3人が誓いを立てるところからはじまるからだろう。
     しかし、辛抱して読んでいれば、主要な幹が見えてくる。まずは揚震。天知る、地知る、我知る、子知る、の四知。こういうところから説き始められるところが、単なる娯楽小説ではない。そして、曹操の祖父にあたる曹騰が登場し、暗愚な安帝と跋扈する佞臣たち、その後の済陰王擁立クーデターと場面は転換する。このあたりが第一巻の山場だろう。臥薪嘗胆勧善懲悪という感じで胸がすく思いがする。しかし皇帝が変わって国家安寧となったかというとさにあらず、またまた大悪人が現れて、というところで次へ続く。
     いつになったら関羽や張飛は現れるのだろうか(笑)。

  • 「底なし三国志沼」の入り口へようこそ。

    いつまでたっても曹操も劉備もでてきません。

    しかし、それでいいのです。

    外戚・宦官。光武帝の子孫は翻弄されつつ皇帝の座は形骸化して行き、積み重なった側近の私欲の結果、天下にようやく乱がおとずれます。
    吉川三国志では空気同然の人(コーホスウ?何の人だっけ?)も元は天下に名を知られた奇跡の将軍であり、ひどキャラ董卓もそもそも虐げられてきた異民族出身者が皇帝を崇拝するわけないっての、と納得でき、その他、今までより一段深く三国志を読むことができます。

    文庫がまだ途中までしか発刊されてないんだー
    もう忘れてしまうがね次が出たころには。

  • 感想というより覚書

    ・1巻が終了してまだ後漢が滅びてない。
     まだ曹操のおじいちゃんが30歳くらい。

    ・登場人物多過ぎ!!
     ノートにまとめながら読んでますが、後漢帝室だけでも1ページ埋まりました。



    ・曹操のひいおじいさんは曹萌。

  • 確かな読みごたえのある一冊。

    物語としての三国志を一通り楽しんだ方向けかも。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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