シャイニング (下) (文春文庫) (文春文庫 275-59)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167275594

作品紹介・あらすじ

すずめばちは何を予告する使者だったのか?鏡の中に青火で燃えるREDRUMの文字の意味は?…。小止みなく襲いかかる怪異の中で狂気の淵へと向かう父親と、もうひとつの世界へ往き来する少年、恐怖と憎しみが恐るべき惨劇へとのぼりつめ、そのあとに訪れる浄化-恐怖小説の第一人者による《幽霊屋敷》テーマの金字塔的傑作。

感想・レビュー・書評

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  • キングとキューブリックの確執については知っていたので、なんとなく避けてきた原作を、読んでみた。
    読んでよかった……。
    それは、もちろん原作のほうがよかったという意味ではなく、多層的に映画を理解する材料が増えた、ということ。
    キング自身の来歴や状況については事前に知っていたが、ここまで原作の中で、ジャックの父、ウェンディの母について書かれていたのは、意外だった。
    ジャックのアル中は単独のものではなくて、父からの連鎖なのだ。
    またウェンディもオドオドするだけの女ではなく、母との関係に悩みつつ夫との生活に依存せざるを得ない、比較的しっかり者とわかる。
    →そして「ドクター・スリープ」でダニーが大人になって酒に溺れるあたり、家庭って、加齢と喪失、反面教師と繰り返しの地獄だな、と。

    また蜂の巣とかエレベーターとか、映画で翻案された元の姿を知ることができたのも、収穫。
    というか、キューブリック、意外と原作を尊重してるじゃん!
    ……核心である父の息子への愛以外は!!
    そりゃキング、キューブリックの映画を「エンジンを積んでいないキャデラック」と言う権利あるよ。
    でも知名度がステップアップするきっかけになっただろうし、自身の脚本でドラマ化して駄作(見たことがあるが、生垣動物とかクリケット槌とか、やっぱり安っぽい)になった経緯もあるし、後に続編「ドクター・スリープ」を書くくらい、拘泥の対象になったのは仕方あるまい。

    個人的には偶然だが、6歳児子育て中のいま読めて、切実に感じられるものがあった。
    ダニーがとてもいい子なんだわ!
    父親が好きで(母親に嫉妬されるくらい)、気を遣って声をかけて、でもホテルからの影響を止められない、だって自分への影響で手一杯だし……というダニーの内面が、結構描写される。
    さらに映画と大きく違うなと判ったのが、子が両親に向かってホテルの霊についてきちんと説明するくだりがあるところ。
    ダニー、知的なのだ。
    で、やっぱり父親を好きで仕方ない、という思いが、行動の端々に現れてくるあたり、読んでいて、嬉しいやら辛いやら……キング執筆中ちょうどダニーと同年代の子育て中だったらしい、どんだけ執筆をマゾヒスティックに愉しんでいたことだろう。



    読書中に参考にしたのは、以下のサイト。

    小説あらすじ
    http://ihmsaiwtd.blog.fc2.com/blog-entry-29.html
    キューブリック監督の解釈したシャイニング1
    https://ameblo.jp/moji-taro/entry-12553625241.html
    【考察・検証】『シャイニング』の小説から映画版への改変部分を検証し、キューブリックとスティーブン・キングのストーリーメイクに対する考え方の違いを考察する ※いい記事。以下にコピペした。「24 雪」と「25 217号室のなかで」が変なので修正したけど。
    https://kubrick.blog.jp/archives/52341730.html
    ウン十年ぶりに『シャイニング』を読みました。新しい発見と感動の嵐でした。
    https://aquavit103.fc2.net/blog-entry-20.html

  •  ホテルがついに家族に襲いかかる下巻

     映画版のシャイニングも見たことがあるのですが、映画版はどちらかというと映像のインパクト重視、この小説版はホラー以上に、心理描写による人間ドラマ重視という感じがしました。

     父親のジャックが徐々にホテルの霊たちの狂気に囚われていく様子が、この小説の中でも特に読みごたえがありました。そしてその狂気に囚われるきっかけというものが、
    アルコールであったり、家族間の不信感であったりと人の弱さということなのも怖く感じます。

     そうしたジャックですが、狂気の中で父親としての理性、息子への愛情が垣間見えた場面があり、そこが非常に切なくて印象深かったです。

     大雪の中ホテルに駆けつけるハローランの描写もカッコよくて良かったです。ハローランとジャックの息子のダニーとの間に生まれた年齢を超えた不思議な感情。
    それは二人が同じ能力を持ったが上に生まれた、友情以上に強い結びつきだったのだと思います。そうした絆の強さもしっかりと描かれていたと思います。

     ホテルの霊たちもかなりの執念深さで怖い…。ひと段落ついたと思ったら最後まで人を狂気に飲み込もうとする、最後までドキドキしながら読み進めることができました。

  • 映画より面白かったし、
    “シャイニング”の意味もあったし、
    何より醜悪で恐怖が目の前に広がった。

  • ハローラン早く!早く!と思いながら読みました

  • 救いのあるエンディングで、良かったと本当に思ってしまう。迫真な内容で充分過ぎるほどに作品を堪能した。

    でも、年を取ったせいか最近は、どうでもよい事が気になる。
    救出後に警察の尋問は必ずあったろうに、どうやって納得した貰ったんだろう?燃え落ちたホテルの賠償はどうしたんだろう?ジャックの保険を、そのまま受け取れたと言う事は、かなり話を作らないと・・・
    本題には関係ないけど、やっぱり気になる。
    これだから年寄りは・・・嫌われるよな~。

  • ダニーが浴室で亡くなった幽霊に襲われるシーンで、もし幽霊を観たら接触すまいと心に誓った。それくらい怖かったシーン。

  • 過去が時間になると戻ってくる。仮面舞踏会の紳士淑女、暗黒街のギャング、恋人を待つ人妻。それらが重なりあって戻ってくる。そしてジャックはホテルのなにものかに操られてウェンディとダニーを襲いだす。迫りくる恐怖の下巻。

  • もうすぐ続編が出るらしいので、それに合わせて再読。
    かなり久々に読んだのには間違いないのだけれど、かなり記憶が混同してました。おそらくキューブリックの映画「シャイニング」の印象が強かったんでしょうね。あの映画も大好きなんですが。たしかにかなり雰囲気は違います。
    オーバールックホテルがとにかくパワフルったらありません。にぎやかすぎるだろ! もちろん怖さはあるものの基本は陽気でコミカルなので、このへん日本の幽霊屋敷とは違うなあ、と思いました。だけどこんな中に一冬ほっとかれたら、間違いなく気が狂いそうです。
    でも主役はタイトル通り、「かがやき」を持った人たちなのですね。ダニーは言わずもがな、ハローランと彼が遭遇する「かがやき」を持つ人たちとのやりとりは心温まります。この能力はやはり呪いではなく祝福なのかな。

  • 幽霊屋敷ものに、アメリカ的な人物造形を注入してモダンに書き直したといった趣。ジャックの心理描写がよい。ジョン・ファウルズ『コレクター』を思わせる、徐々に都合よく捻じ曲がっていく理屈。抵抗しながらもホテルの望む方向に動いていってしまう弱さ。

    キング自身はキューブリックの映画には不満なようだが、個人的にはキューブリック作品のさまざまなイメージが本作の味わいを強化してくれるように思う。冒頭、「ディエス・イレ」を使ったベルリオーズ「幻想交響曲」をBGMにひた走る車の心もとなさ、姉妹とそこになだれ込む血の流れの幻像(これは原作にはないが)、廊下を走るダニーの目に映るじゅうたんのくねくねした模様、それにジャック・ニコルソンの怪演。ドアを破壊するところや最後の場面もいいけれど、執筆する部屋でバルトークをBGMにいっちゃった目をしているところもよい。

  • 強大な幽霊ホテルの魔物たちの力になす術もなかった管理人一家ですが、やはり家族を思う力で立ち向かいます。最後に見えた一筋の光が救いです。一気に読みました。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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