冬の運動会 (文春文庫 む 1-15)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167277154

作品紹介・あらすじ

高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。いいタイトル。祖父にも息子にも孫にも、外に家がある。本当の親子関係は何一つうまくいかない。それでも向田さんはこの家族をバラバラにする結末にはしない。季節外れの運動会を終えて、もとの家族のところに戻ってくる。普通ならこんな都合のよい結末をつまらなく感じてもおかしくないのに、向田さんが描くと家族ってそうやって続いていくものだよなと自然と思えてくる。ラストに至るまでの登場人物の細やかな書き込みが結末の自然さを生み出すのだろう。

  • 軍人出身の厳格な祖父、その祖父に育てられた生真面目なサラリーマンの父、そしてその息子・菊男は父によるコネ採用に惑う大学生。しかし、彼には、高校時代の本屋での万引きが家族からの疎外感としてトラウマになっている。その疎外感や家族から逃れるように、菊男がアルバイトまがいで出入りを始めた靴修理店。子どもいない靴修理店の気の良い夫婦は、菊男がかわいくて仕方がない。一方、同様に靴修理店の存在は祖父や父にもあった。菊男の出会いと別れ。三世代が一緒に住む家族での出来事。巻末の解説は、このドラマに出演した藤田弓子さん。これが、また良い文章。

  • 向田邦子氏の放送台本を中野玲子氏が小説化したものです。
    とのことで、期待外れだったら残念だなぁ、と思いながら読み始めました。
    そんな心配はいりませんでした。一気に読みました。
    今考えてみれば、ドラマはハッピーエンドに決まっているか、なんて思ったりしています。

  • 苦手な人間関係拗れ系?かと思ったが、読み終わってみれば、それぞれの想いが絡まっただけで、皆が自身の心を支える場所を探しながら毎日を送っているのだなと、安堵の感情が湧いた。
    が、、立場上、妻のあや子に深く同情してしまう。

  • 向田邦子が脚本を担当した昭和の優れたホームドラマのノベライズにあたる本。

    軍人出身の厳格な祖父、サラリーマンの父親と専業主婦の母、つい出来心で万引きをしてしまったことで家族の中でも屈託を抱え就職も決まらない息子と自由奔放に見える娘…どこにでもありそうな昭和の家族ですが、実は、祖父・父・息子の3人は、それぞれ、心の安らぎを感じる「別の家族」を持っていて…というお話。家族だからこそ見せる姿もあれば、家族だからこそ言ってはいけない(言いたくない)こともある、そもそも家族ってなんだろう…「Always3丁目の夕日」のあたりの時代に近いんでしょうけれど、あんなに美しく出来すぎたストーリーでもなく、ちょっとモヤモヤするのも、向田邦子らしい感じがします。それぞれの心の動きがちょっとした言葉や仕草で透けて見えるのが、上手いといわれる所以かもしれません。

  • 向田邦子脚本のドラマを小説家した作品。
    ドラマを見ていないので、役者さんのイメージもなく小説として読めました。
    多分、ドラマではこんなシーンになるだろうと目に浮かぶ場面はいくつかあった。場面転換が早いのもドラマの影響だろうという感じでテンポがいい。

    健吉さんのシーンは読んでいてもグッとくる場面だった。
    ドラマだったら泣いたかもしれない。

    現代版に置き換えて、今でもドラマで通用すると思う。

    当時は「家族」という形は画一的だったけど、不寛容ではなかった。
    今は「家族」は色んな形があるけれど、その家族を再生することには不寛容になったのかもと、ラストシーンを読んでの感想。

    「おちこぼれ青年が見たエリート家族の実態」という、なかなか衝撃的な帯がついてるけど、「馬鹿よね、男って」と言いつつ優しく包み込む向田邦子の視点を感じる作品だった。

  • 今から40年くらい前にドラマ化された原作本。最近面白くないドラマが多いのでこういった何気ない家族の形を取り扱ったベタな作品に戻って欲しいな。

  • 「向田邦子」の『冬の運動会』を読みました。

    本作品は「向田邦子」によってドラマ向けに書かれた放送台本を「中野玲子」が小説化した作品です。
    「向田邦子」作品は、昨年の8月に読んだエッセイ集『夜中の薔薇』以来ですね。

    -----story-------------
    高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた「菊男」は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。
    そんなある日、ふとしたきっかけから、「菊男」は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。
    人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。
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    『冬の運動会』は1977年にTBSで放映されたドラマで、、、

    調べてみると、豪華キャストだったようですねぇ。

    ≪主なキャスト≫
     北沢遼介:木村功
     竹森日出子:いしだあゆみ
     北沢菊男:根津甚八
     北沢あや子:加藤治子
     北沢健吉:志村喬
     江口加代:藤田弓子
     津田宅次:大滝秀治
     津田光子:赤木春恵
     船久保初枝:市原悦子
     北沢直子:風吹ジュン

    男女の機微を巧く表現しているところは、さすが「向田邦子」って感じましたね。

    女性のことならともかく… なんで、あんなに男性の気持ちを巧く、的確に表現できるんでしょうねぇ。

    特に父と子の難しい親子関係について、何でこんなに見透かしたように男性の気持ちを表現できるのか… その気持ちが理解できるのか、本当に不思議ですね。

    主人公の「菊男」に感情移入しながら読みました。
    あと、靴修理店の主人「津田宅次」の気持ちも切ないほどわかったなぁ。

    「向田邦子」って、イイですねぇ… 家族をテーマにさせたら、右に出る人はいないと思います。

    そして、忘れてはいけないのが、女性同士の緊張感のある関係… これまた凄いんですよねぇ。

    二人の間に火花が飛び散っているのが見えるような感じがします。

    解説で女優の「藤田弓子」が書いていましたが、「向田邦子」が逝かずに書き続けていたら、世の中は違っていたかもしれませんね。

    早逝されたのが残念です。

  • 向田さんのセリフにはカタカナが踊る。
    「ゴハン」とか「アーん」とか、表情描写がとても丁寧。
    いかにも昭和臭くて、今読むと昔ってこんなんだったんだなという場面も多いけど、根底に愛がある散りばめられていて羨ましくも思う。
    藤田弓子の解説がまた少し泣ける。

  • 向田邦子 原作「冬の運動会」、1998.1発行。北沢家の家族の物語。長男、北沢菊男25歳の高3の時の「万引き」から物語が始まり、菊男が「万引き」のトラウマから抜け出すことで物語が終了します。その間の、家族の諸々の話を向田邦子さんが読者に語りかけてきます。起承転結が見事です。

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著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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