新装版 大名廃絶録 (文春文庫) (文春文庫 な 6-21)

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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167282219

作品紹介・あらすじ

武家にとって御家断絶以上の悲劇はあるだろうか。慶長5年の関ヶ原役以後、徳川幕府によって除封削封された大名家の数は240。理由は世嗣断絶、幕法違反、乱心などさまざまだが、幕府は狙ったら必ず何かを見つけ出した。本書は廃絶の憂目にあった大名家の中から福島正則、本多正純など12の悲史を描く名著。

感想・レビュー・書評

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  • 慶長5年の関ヶ原役以後、徳川幕府によって除封削封された大名家の数は240。
    理由は世嗣断絶、幕法違反、乱心などさまざまだが、幕府は狙ったら必ず何かを見つけ出した。

    目次
    徳川幕府の大名廃絶策
    里見安房守忠義
    松平上野介忠輝
    福島左衛門大夫正則
    最上源五郎義俊
    本多上野介正純
    松平三河守忠直
    加藤肥後守忠弘
    駿府大納言忠長
    生駒壱岐守高俊
    加藤式部少輔明成
    堀田上野介正信
    松平中将光長

  • 十二家の悲劇が書かれている。
    幾つか説のあるものは併記し、そこには巷間の噂レベルのものまで含まれる。
    説の出典は細かく記されており、小説というより歴史書に近いものを感じる。
    徳川幕府は、特にその初期において体制の盤石化の為に何かと理由をつけて廃絶させようと言うスタンスだった。
    そしてこの十二家は、狙われているのに危ない所へ自ら迎えに行くような形の失策を犯して処分を受けることになる。
    本として読むとさらりと終わるが、当人たちの中では何年、何十年単位の駆け引きであり、恐ろしい執念を感じる。
    第一章の『徳川幕府の大名廃絶策』は二十数ページしか無いが、章題の通り幕府の方針や廃絶の実態がまとめられている。
    この部分だけでも一読の価値はあると思う。

  • 武士、封建時代の"残酷物語"の大家である南條範夫が小説というよりかは、歴史ものとして書いた本。

    里見忠義、松平忠輝、福島正則、最上義俊、本多正純、加藤忠弘、徳川忠長などなど、江戸期にお取り潰しに遭った大名家の経緯や要因を当時それが書かれた資料を対照することによって真因を探ろうとしている意欲作である。

    大名家取り潰しは江戸期初期の頃こそ、徳川幕府存亡のための謀略めいた要因が多いが、中期から後期にかけては、1、殿様そのものがアホ、残虐 2、家臣の内輪もめの二大要因でほとんどが潰れているようである。このあたりは現代のオーナー企業にも通じるところがあるだろう。

    この本の最大の見所は実は冒頭。上記のような江戸時代の大名取り潰しの実態を俯瞰で見た上で作者は、幕末の長州藩以外に幕府に楯突いた藩がなかったことを批判し、戦国期の武士道の消滅に言及している。100年間争い続けた国内が250年間ただの一度の叛乱もない。突然のこの豹変に日本人の国民性が現れているような気がします。

  • 武家にとって御家断絶以上の悲劇はあるだろうか。慶長5年の関ヶ原役以後、徳川幕府によって除封削封された大名家の数は240。理由は世嗣断絶、幕法違反、乱心などさまざまだが、幕府は狙ったら必ず何かを見つけ出した。本書は廃絶の憂目にあった大名家の中から福島正則、本多正純など12の悲史を描く名著。(単行本1976年刊、旧版は1993年、新装版2007年刊)
     徳川幕府の大名廃絶策
     里見安房守忠義
     松平上総介忠輝
     福島左衛門大夫正則
     最上源五郎義俊
     本多上野介正純
     松平三河守忠直
     加藤肥後守忠広
     駿河大納言忠長
     生駒壱岐守高俊
     加藤式部少輔明成
     堀田上野介正信
     松平中将光長

    元本は1976年の刊ということで、本書も視点が古い。本書では徳川幕府は諸大名を強圧威嚇し隙を狙って改易したとしているが、近年の研究では見直しが進められ従来の徳川家の一方的な圧力という説は大きく変更される可能性があるという。(江戸期の社会実相100話 日本風俗史学会編)
    福島正則については、通説では本多正純の謀略とされているが、実際は無断築城がわかった後に、執政たちは穏便にすませようとしたが、福島側の度重なる手落ち(破却の不実行、人質の不提出)により改易となったという。加藤忠広についても、通説では世子のいたずら文書により謀反を疑われたためとするが、妻子を密かに国元に送ったことが原因と見直されつつあるようだ。

    本書を俯瞰して読むと、二代目三代目の不行跡により改易となった例が多い。みんなバカ殿ばかりである。また、多くの例が功臣と争い御家騒動により取り潰されている。君主権力の確立にともなう争いは、生き残った諸大名家でも行われている。徳川家の圧力というよりは、御家騒動が度を越してしまった事の方が大きいのではないかと思う。
    どの事例もワンパターンで、話としてさほど面白いものではないが、大名廃絶について知識を得る事が出来るのは貴重である。

  • 江戸時代初期。幕府体制を盤石とするためにとられた、外様大名等の廃絶、除封、減封政策。また、嗣子を巡るお家騒動の数々。各種の資料に基づいて冷静に諸説を検証し、真実を追求している。

  • 南條先生の硬質で端的な文章はクールで理知的。
    事実と解釈が峻別がなされている。
    内容は初心者向け。口絵の家紋も嬉し。
    この筆致で御家騒動本も読みたかったところ。

  • 江戸時代を通じて、取りつぶされた様々な大名家。幕府の取りつぶし方針に引っかかると些細なことで取りつぶされたり、将軍の権威を誇示していって理由で取りつぶされたり、かなりのところ「運」だなあ……

  • 徳川幕府によって取り潰された12の大名達。
    中でも豊臣家恩顧の大名には、かなり強引な手法で行っています。
    加藤清正や福島正則の嫡子では、到底太刀打ち出来なかったでしょうね。

  • 武家にとって御家断絶以上の悲劇はあるだろうか。慶長5年の関ヶ原役以後、徳川幕府によって除封削封された大名家の数は240。理由は世嗣断絶、幕法違反、乱心などさまざまだが、幕府は狙ったら必ず何かを見つけ出した。本書は廃絶の憂目にあった大名家の中から福島正則、本多正純など12の悲史を描く名著。

    2009.10.16読了

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著者プロフィール

明治四十一年(一九〇八年)、東京・銀座に生まれる。代々医師の家の生まれ、東京大学法学部、経済学部を卒業。小説家のほかに経済学者の顔を持ち、長く大学で経済学の教鞭をとる。昭和三十一年「燈台鬼」で第三十五回直木賞を受賞。一躍人気作家となり、時代小説、歴史小説を執筆するようになる。デビュー作『出べそ物語』、『子守の殿』(オール読物新人賞)『細香日記』で吉川英治文学賞を受賞。人気シリーズとして「月形兵庫シリーズ」はよく映像化されている。昭和五十四年(一九七九年)死去。

「2023年 『傍若無人剣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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