八雲が殺した (文春文庫 285-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167285043

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。どれも何かしらの妄想なり情念なりに取り憑かれた人の破綻っぷりが怖くて、しかもわりとラスト放置のパターンなので余計にぞわぞわしました。

    表題作がやっぱり一番面白かったかな。八雲は小泉八雲のことで「茶わんのなか」という短編がモチーフになっている。八雲なので完全な創作ではなく元ネタになった古い怪談があるわけですが、その元ネタから八雲が何を削り何を付け足したかの分析が普通に興味深いし、それと同じことが現代の女性の身に起こるというのも幻想的。しかし結局単なる性的欲求不満からくるパラノイアのような気もして、なんともいえない終わり方。「艶刀忌」なんかも似た系列だったと思う。

    「象の夜」は他人の妄想に侵食される感じが気持ち悪かった。「春撃ちて」は俳優志望者やカメラマンといった現代的な東京の世界と、丑の刻まいりの藁人形が打ち付けられた山奥の光景とのギャップが鮮やかで好きでした。

    ※収録作品
    八雲が殺した/葡萄果の藍暴き昼/象の夜/破魔弓と黒帝/ジュラ紀の波/艶刀忌/春撃ちて/フロリダの鰭

  • 黒い水脈につらなるひとりとして数えられるこの作者、初めて読んだ。

    現代を舞台として、そしてゆめまぼろしとは距離を置いた題材でありながら、
    この妖しさ。

    皆川博子と一緒に名前が提出されるのにもうなずける。

  • 泉鏡花賞を受賞した表題作を含む短編全8編。
    小泉八雲が『新著聞集』の「茶店の水碗若年の面を現ず」を翻案して
    「茶わんのなか」を執筆した際、
    「何故か、ある部分が省かれたこと」を知った女性の内に芽生えた殺意。
    謎めいた発端から意表を突くオチへ――という話が揃っている。
    キャラクターのセリフも初期の激昂調(笑)とは違って落ち着いているので、
    読みやすい。
    「ジュラ紀の波」の散弾銃ガールが憐れだなぁ……。

  • 赤江氏の小説は綺麗で妖しく霧の中でセックスしているかのようだ。白い闇が襲い来るような恐怖と心地よさ。下手にどろどろしておらず、そこにあるのはロマン主義の嵐だけ。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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