- Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167291020
感想・レビュー・書評
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皇帝や教皇から一定の距離を保ち、共和制を維持してきた自治国家フィレンツェ。古代ローマ時代からメディチ家の専制が終わるまでの興亡と、街が生んだ芸術の世界を美術史家が案内する。
高階秀爾『ルネッサンスの光と闇』を読んだので、積読本のなかから共通項が多そうなこの一冊。実は何度も挫折してきた本でもある。
今回やっと読み通すことができ、改めて思うのだが、歴史解説部分の文章がものすごく読みづらい。若桑先生の本を読むのはこれで5冊目くらいのはずだけど、こんなに読み進めるのが辛かったのはこの本が初めて(笑)。一文のなかで何回も話題が変わったり、段落ごとに時代が前後したり。聞きなれない名前が多いのもあり、第3章くらいまでを乗り越えられずにいた。
だが、メディチ家が台頭し、そこで花開いた芸術の解説パートに来ると、俄然若桑先生らしい流麗な文体になる(おなじみの名前がでてきたからそう思うのかもしれないが)。ここでもボッティチェリ『春』の図像解釈学が取り上げられ、高階本の刊行から30年後の研究成果を読めたのは我ながら勘が良かった。『春』と『ヴィーナスの誕生』がセットで注文されたという説は崩れたみたいだけど、注文主がロレンツォ・イル・マニーフィコに帰せられたのは納得できる。そういえば、グリーンブラットの『一四一七年〜』にでてくるヤベーやつとして記憶に刻まれたヨハネス23世と、その秘書だったポッジョさんがメディチ史でも大活躍でびっくりした。ポッジョさん、ジュリアーノ暗殺に関わってたのか。
パラッツォ・ヴェッキオを飾る絵画の意図や、ウフィツィ美術館のコレクション理念を解く7〜9章は、このまま音声ガイドにして現地で聞きたいと思わせる、美術史家の真骨頂。「ウフィーツィの絵画を理解するための五箇条」は、ウフィーツィに限らず西洋絵画を見るのが好きな人なら一読して損はないと思うツボがまとめられている。個人的には、スタイルの模倣を初めて"アカデミー"という権威による統制の元におこなったのがマニエリスムだ、というまとめがわかりやすくて良かった。
それからこの本のいいところは、若桑先生が「大好きな絵」を気さくに教えてくれるところ(笑)。フィレンツェの住人でもある視点からの終章の熱い語りもよい。久々に達成感のある読書だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何年も前に買った若桑みどりの『フィレンツェ』をやっと読んでいる。
専門書というよりは美術寄りの観光歴史案内書といったトコロ。
文春の文庫だし難しい本ではない筈なのだがエラク時間がかかってしまう。読んでも概略は分かっても細かい話は右から左へ抜けてしまう…
てゆうか私、学生時代から数えて何度フィレンツェの本を読んでるんだヨ。授業でも習っただろうに…
こりゃ積んであるだけの若桑みどりの本は読めないなぁ、一生(;^_^ A
この人のジェンダー史の本を一度読んでみたいのだけど…(持ってるのは美術の本)
2003/10/17