一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

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著者 : 山本七平
  • 文藝春秋 (1987年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167306052

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1987年(底本1974年)刊行。

     青山学院大学繰上げ卒業、直後入営後4か月で予備士官学校入校、2か月繰上げ卒業で見習士官のまま原隊復帰せずフィリピン戦地へ。かように士官候補生の速成が進みつつあった時期に遭った著者。
     彼の、戦中〜戦後収容所期までの、陸軍内での見聞事項を乾いた筆致で描写する。

     テーマは軍人教育・教練の無意味さ、私物命令を平気に出す、真の命令者たる現地参謀の頽廃、現地を知らなすぎる本土・大本営、員数主義(詳細は本書にて確認を。友軍からの窃盗が日常茶飯事という他書指摘の理由を見た思い)に彩られる軍人ら。

     これらのテーマにつき、確かに乾いた筆致で描写するが、所々挿入される怒りとも祈りとも見える文章の数々。
    ① 「比島が…兵器・弾薬・食糧…の集積所…のような顔をして『現地で支給』『現地で調達』の空手形を(本土での命令で)乱発しておきながら…現地では殆ど全部不渡り…。従って私は何も信用していない」。
    ② 武器に関する一点豪華主義。ミンクのコートに草鞋を履く如し。時間当たり砲弾発射回数は世界最多級だが、砲弾を手と足で倉庫から運ばなければならない。
    ③ 我々の中には「歴戦の臆病者はいるが、歴戦の勇士はいない…。
     だが『歴戦の臆病者』の世代は、いずれはこの世を去ってしまう。…この問題はその後の「戦争を”劇画的にしか知らない勇者”の暴走」にあり、その予兆は、平和の…背後に、すでに現れているよう」。
    等々がそれだ。
     著者を食わず嫌いすべきではなかった、といたく反省させられた一書である。

  • 陸軍の少尉としてフィリピンで終戦を迎えた筆者の見た陸軍と日本人の特性。意識しておくべきことがたくさんあると思った。
    事大主義、大につかえる主義が日本にはあり、だから立場で人が変わる。
    余裕なく人材研修が行われるが、幹部育成用のプログラムなので合わない。幹部になれない状況では意味がない。
    ずっとソ連を仮想敵国としており、それをアメリカに変えたが、それ用の対策の方法を陸軍は誰も知らなかった。
    本当の危機になると危機慣れが起き、大丈夫の声が強くなる。
    フィリピンは農業国という言葉から食料は豊富だと思いこむが、実際はプランテーションで多くの餓死者を出す。
    天その人を滅ぼさんとすればまずその人を狂わしむ。
    統帥権を独立させたのは明治政府が藩閥政府で政府の軍事力を封じ込める必要があったから。
    議会が予算を通さなければ戦争は止められた。
    参謀が実験を握っていた。

  • ・バターンの時米軍には花の雨が降った。サイゴンで日本軍には石の雨が降った。護送の米兵の威嚇射撃のおかげでリンチを免れた。日本では内地で重傷を負ったB29搭乗員を軍が住民のリンチに委ねた例がある。

    ・員数主義と私物命令、なかなか敗戦を信じずジャングルを出てこなかった例は「命令」への不信が大きかったのではないか。

    ・米の砲弾は一つずつコールタールで防湿したクラフト紙の円筒に入っているが、日本製は一つずつ薄い四角の罐に入ったものが四発ずつ分厚い木箱に釘付けで荒縄がかかっている。陸軍は世界最高の発射速度の砲(九六式十五榴)を造ったが、実戦ではやっかいものだった。集積所から砲側まで砲弾を運ぶのが間に合わない。

    ・過去の日本は自らの描いたシナリオによって自ら破滅した。興味深い事にこれと同じ表現が赤軍派の永田洋子への表現に使われていた。自己の持つ未知の未来への不安を社会に拡散して解消しようと言う一つの逃避は、確かに何かを演じつつ破滅する道であろう。人はいかにしてこの道を逃れてリアルでありうるか。

  • 運命を達観した大学生が学徒出陣し、死線を乗り越え、捕虜生活までの「体験談」と「現代での分析や振り返り」を随所に織り込んだエッセイ以上で論文未満の名作。

    読み終えた2017年夏現在、
    著者が実経験から、後輩たる我々日本人や(企業)組織に対し、警鐘した「戦略欠陥の克服」や「問題提起する義務」に対して真摯に向き合っているか?と思うと、悩んでしまう作品。

  • 戦地を生きた山本七平の姿を思い浮かべる。

  • 衝撃的な本。ここ最近読んだ本の中では最高傑作であり、是非とも多くの方に読んでもらいたい。この本は帝国陸軍という異常組織が、実は日本人という国民性が生んだ日本人としの標準的な組織だったということを、戦後から現代(とは言っても昭和40年ごろと思うが)の日本人の思考・行動と照らし合わせて著者の洞察を展開している。これ(日本人の国民性)は昭和40年どころか、戦後70年を過ぎた現在でも全く変わっていないということに驚かされる。名著「失敗の本質」での問題提起が結局は日本人には避け得ないものだということが切実に分かる。自らの思考法、会社の論理、全てが戦前から変わっていない。これを読むと、また日本人は戦争をやるのではないかと心配になってしまう。「事大主義」「員数合わせ」「仲間ぼめ」「私的命令」「気魄」「気魄演技」「組織の名誉」「不可能命令」。少なくとも自分はそこから抜け出したい。

  • 終わりらへんの「旧占領軍の天皇の軍隊が去って、新占領軍のマッカーサーの軍隊が来たが、この方が天皇の軍隊より話がわかる」という言葉に衝撃を受けた。確かに軍事国家というのは自国の軍に占領されている状態とも言えるのかも知れない。それから最後あたりは人間像というか、人間とは?と考えさせられる。それに、この本には派生的に読みたくなる本の題名がよく出てくる。
     あと個人的なことを言えば、ここ数年のあいだ戦争に関連する本をよく読むようになった。それが好奇心からくるのか恐怖心からくるのか知らないが、すべてはアナログ的であってその極致が戦争なのかも知れないと思う。僕は日常の生活の中で、非戦闘的で戦争的な何かに嫌悪感を抱きつつ、こういう世界には必ずまた戦争が起きると恐怖を感じているのかも知れない。

  • 4-16-730605-0 345p 1987・8・10 1刷

  • 皆におすすめの本。問題は責任をとる人がいない日本のシステムが悪い事。会社でも下の行動した人が罪に問われて上の人は逃れる。軍隊がひどかった。

  • これほど日本軍がぐだぐだだったとは、ということと、ぐだぐだ日本軍の意思決定や責任の所在等々のあり方が現在の組織においてもさほど変わっていないと思われることに驚かされた。絶対にあってはならないことながら、万が一再び日本が戦争をすることになったとすれば、本書に書かれているような事態とほぼ同様な状況が繰り広げられるはず。

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一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)の作品紹介

「帝国陸軍」とは一体何だったのか。この、すべてが規則ずくめで超保守的な一大機構を、ルソン島で砲兵隊本部の少尉として酷烈な体験をした著者が、戦争最末期の戦闘、敗走、そして捕虜生活を語り、徹底的に分析し、追及する。現代の日本的組織の歪み、日本人の特異な思考法を透視する山本流日本論の端緒を成す本である。

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