村の名前 (文春文庫)

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著者 : 辻原登
  • 文藝春秋 (1993年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167316044

村の名前 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  2編からなる短編集
    「村の名前」が芥川賞受賞作。
     中国に商談に行った日本人商社マンが、「桃源郷」という名前の村に辿り着いた。
     その村は名前とは全く真逆の村だった、といった内容。
     最初から最後まで不穏な空気が漂っており、ラスト近くでは、夢とも現実ともつかない、超現実的な風景が広がる。
     面白いか、と問われたら、正直僕にとってはあまり面白い作品ではなかった。
     もう一つの「犬かけて」も僕にとっては、今ひとつ掴みどころのない作品。
     これら2編を純文学、と言うのであれば、やはり僕には純文学はあまり相性が良くないようだ。

  • 1990年の芥川賞受賞作「村の名前」を読了。「村の名前」と「犬かけて」の二作が収められている短編集になっていて著者辻原登氏の出世作だ。

     二作品とも読んでわかりやすい物語かというと残念ながら両方とも難解とはいえないがわかりにくい小説だ。理由としてはストーリーの中でファンタジー作品ではないのに現実と妄想・夢想の非現実が同レベルで語られる文章のスタイルになっているので、ゆっくり読んだとしても著者の意図が簡単には伝わっては来ない形になっている。

    「村の名前」は藺草を求めて中国奥地にまでメーカーの方と買い付けに行く商社マンが出会う非日常のお話で、「犬かけて」は自分の妻の過去にこだわりを持ってしまっているミシンのセールスマンの話であるが、ストーリー展開で読者をたのしませる形ではなく著者の文学的作文チャレンジが優先されているからだ。

     1990年代の芥川賞作品は1990年後期に授賞した小川洋子氏の『妊娠カレンダー』以外辺見庸氏の『自動起床装置』や多和田葉子氏の『犬婿入り』や1993年授賞の大学の先輩奥泉光氏の『石の来歴』など基本的に純文学でありエンターテインメント性より文学としてのチャレンジが評価されていた時期であった。なぜなら多分だが大江健三郎とか丸谷才一、水上勉などのご歴々が選考委員の中心にいたためと思われる。

     そんなちょっと小難しく、知性を試されているような純文学作品を読むBMGに選んだのがHerbie Hancockの"FutureShock"。もう古くさいけど微笑ましいエレクトリックサウンドだ。

  • 中編2本が含まれる純文学系小説。

    1本目の表題作は、オビに「芥川賞受賞」と書かれているやつだよね。中国にい草の買い付けに行った青年が連れて行かれた桃源郷で、中国共産党と既に崩壊した村から脱出したがる家族と出会う。

    こちらは、ゆるい開高健と言った感じで、1ページくらいに渡って記載される、一切拾われない伏線(になってない)が気になる程度で、ストーリーの中にある葛藤などもわかりやすい。賞をとるほどの作品とは思えなかったが。

    問題はもう一本「犬かける」なんだよな。10年以上前に失踪した弟を探すという名目で東京に出た男と、既に痴呆がはいった母親と板挟みになる嫁。

    大きなストーリーは、途中で反故にされるわけではないし、たまにちゃんと拾われる伏線もあるのだが、普通の人が読んだら支離滅裂にしか取れない。どうせ見つからない弟を探すという辺りは、安部公房を意識しているんだろうけど、だったらその意味合いを掘り下げるなりなんなりすればいい。

    文と文の途中に、全く関係のない描写を挟み込んだりして、勘違いした人が「幻想的」という感想を書きそうだが、個人的には評価する気は無い。

    一つだけ面白いのは、この手の純文学に珍しく、ほとんど比喩表現らしいものはないこと。そこは読みやすいので評価できる。しかし逆に、その分グイグイとストーリーを展開しないと進まないのに、両作品とも一進一退を繰り返す程度というのが気になった。

  • 2015/8/6購入
    2016/6/12読了

  • 平凡な授賞作。でも嫌いじゃない。

  • いったい何を読んだのか。そもそも何かを読んだのか。『村の名前』でさえ妙な世界に引きずり込まれて溺れそうだったのに、『犬かけて』にいたっては一光だに目にできなかった。村の名前は桃花源村。藺草を求めて中国に渡り、西瓜売りに出会い、犬肉を食らって給士の女と交ぐわう。ここに何も残らず、何も浮かばず。

  • 桃源郷という妄想を夢見た男を通して、現実社会と内なる自己の欲求を対比させ、お互いをリアルに浮き上がらせた純文学。他一篇。

  • 1990年上半期芥川賞受賞作。同時期には、その後同賞を受賞した奥泉光、小川洋子、荻野アンナが名を連ねていた。そうした中での受賞なのだが、この作家と編集者には本を売る気があるのだろうかと思う。『村の名前』―こんなタイトルに誰が魅かれるだろう。内容を読めば、それが世にも名高い村であったことがわかるのだが。作品には現代中国の寒村にまで及ぶ権力構造と、村の様子が強いリアリティを持って描かれている。シュールと評する委員もいたが、この小説はあくまでもリアリズム小説の、これまでとは違った方向からのアプローチなのだ。 

  • 「村の名前」、「犬かけて」の2篇が収められています。

    ○「村の名前」
    畳の材料を求めて中国に出張した日本人ふたりが連れていかれた村の名は桃源郷。
    そこはその名とはかけ離れた貧しい村でした。
    幻覚だったようで実際にあったた場面と、現実のようで幻だった場面が錯綜します。

    ○「犬かけて」
    五円玉を小道具に売上をあげる営業マンが主人公。
    むかし家を出たまま行方がわからなくなった弟を探すふり、妻とつながっているようで、失ったような感覚。

    何の心の準備もしないまま読みはじめたら、どちらも
    時間、場所、言葉の対象や呼応が多く複雑な構造をもった作品でした。
    難解なパズルに挑戦しているようです。

    再読すると、おもしろさが倍増する予感があります。
    時間と体力とペンをそなえて、線をひいたり書きこみをしたりしながら読んでみたい1冊です。

  • 言葉が通じない、風習がまるで異なる、日本の常識も通じない。そんな異国で自己を保つのは難しい。外国に行ったことがないから想像だけど。弟は本当に存在するのだろうか。錯乱した母親の妄想が息子に浸透し、居もしない弟との思い出を捏造したのではないか。記憶は常に改竄される。しかし結局は現実を直視できないから、有りもしないものを見ることで逃避しているのではないか。という考え方はきっと底が浅いのだろう。探している弟かいつの間に自分自身になっているような危うさは、誰だって持っていると思う。

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