ジャスミン (文春文庫 つ 8-7)

著者 :
  • 文藝春秋
3.82
  • (7)
  • (5)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 90
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167316105

作品紹介・あらすじ

父の失踪の謎を求めて降り立った上海で、運命の女と出会う。女は中国政府に追われる身。「女と良心の呵責を両腕に抱いて生きる」とうそぶいた父をなぞるかのように、危険な恋の扉が開かれる。逃避行の挙句の別れと再会。大胆にして甘美、華麗なロマンスは国を越え、政治に逆らって、もっとも美しいラストへと突き進む。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 神戸市東灘区深江南町、芦屋市平田町、御影蘇州園、トアロード鼎鼎、下山手、関帝廟…
    なじみのある地が舞台となっているので、あたかもその場に一緒にいるように没入して楽しめた。
    主人公・脇彬彦は阪神・淡路大震災で被災し、妹を亡くすのだが、芦屋川から神戸市中央区の諏訪山まで徒歩で歩いて移動するシーンには、あの日の光景が目に浮かんで辛かった…
    中国での舞台の一つ、上海大厦も実在のホテルで、もしこちらに泊まることがあったら、両翼を大きく広げる威容を見上げ、きっと脇彬彦と李杏を思い出すだろう。
    尹丹のつくるジャスミン茶も飲んでみたい。作品を通じてジャスミン茶の芳香が漂っていた。
    作品の終わりは、まさか!というようなハッピーエンドなのだが、宮本輝氏の『草原の椅子』を彷彿とするような爽やかな終わり方で悪くない。
    戦後から中国の文化大革命を題材としたスパイ物語としたらあまりに事がうまく運びすぎている感じがするが、なにせ舞台が京阪神という点で記憶に残る作品です。

  • 2019/8/11購入

  • 絲山秋子さんオススメ

  • 微妙にテンポが合わないというか、どことなく輪郭がくっきりとしていないというか、だったんだけど、途中から一気に読みました。
    また中国に行きたいな。

  • 神戸そして上海を舞台にしたサスペンス。主人公彬彦はシンクタンクに働くビジネスマンだが、中国でのODAの評価をしているうちに自分父親がスパイだったことを知る。文化大革命の時にすでに中国で死んだとおもっていた父親が生きているかもという噂を聞き行った上海で、反政府分子をサポートしかつその彼女と言われていた中国人女性と知り合う。彼女との逃避行、別れ、再会、中国諜報機関員との確執、神戸大地震の被災などめぐるめく事件、出来事のなかひそやかに温められていた恋。これだけテンコ盛りに事をおこしながら、物語をさわやかに進んでいるところは著者の力量の現れだと思う。楽しいサスペンスでした。

  • 何だろう、読んでいて、この細部の描き方はすごいなあ、と感心することばかり。にもかかわらず、先を読みたいという欲求が起きない。それが不思議なのだけれども自分でもよくわからない。それで、読むのを途中でやめてしまった。三島由紀夫にも似たような感じを受けた。うーん、わからない。

  • 辻原登の長編。アメリカの調査会社に勤める脇彬彦には妹がおり、父は中国で死亡、母は神戸で痴呆が進んでいる。中国の知人から死亡した父が生きている情報を彬彦は得て、上海に飛ぶ。そこで美人の俳優と出会い恋に落ちる。彼女は自由運動家を恋人に持っており諜報機関のTOPの友人であった。まだ文化大革命の余波が続いており、中国国内は不安定な状況であった。自由運動家は李杏と一緒に国外逃亡しょうと誘うが彼女は彬彦を選びその話には乗らずに中国内を逃亡する道を選ぶ。脇家が神戸でお世話になっている華僑許家の孫が李杏とわかる。関西大震災にも合い、諜報戦もその逃亡もODAも絡んで面白い。

  • 中国を舞台にした壮大なストーリー。
    父親を探す日本人、日本人を愛してしまった中国人、負ければ消される政治家、日本でゆったりと暮らす中国老人、様々な人生が交錯しながらも、ジャスミンの香りがしてくるような、ふと効果的にジャスミンが登場する物語。
    杭州も場面に花を添える。
    楼外楼と東ポー肉。
    上海の町並み、神戸、海、映画を見ているように景色が目に浮かぶ。中国を理解できるように説明調な部分もあるが、逆にそのリアリティーも感じることができる。
    中国のほこりっぽさと政が、華麗な恋物語を引き立てる。
    食事のシーンもリアルだ。「旨いもんでしょう。広州ではこれを富貴鶏と呼ぶんですよ」
    乞食鶏あるいは富貴鶏はまたたくまに平らげられ、泥と蓮の葉だけが残った。
    これは食べた人にしか書けない。
    これだけ中国を深めて書くのはすごいことだ。感動の一作。

  • 阪神大震災、天安門事件など、日中のリアルベース。
    著者は中国の造詣深く、詳細な記述と深い洞察。
    共産党や中国人の行動様式の一端もわかります。
    スリリングな展開と意外な結末。
    上海での留学生活に深みを与えた一冊。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

辻原登
一九四五年(昭和二〇)和歌山県生まれ。九〇年『村の名前』で第一〇三回芥川賞受賞。九九年『翔べ麒麟』で第五〇回読売文学賞、二〇〇〇年『遊動亭円木』で第三六回谷崎潤一郎賞、〇五年『枯葉の中の青い炎』で第三一回川端康成文学賞、〇六年『花はさくら木』で第三三回大佛次郎賞を受賞。その他の作品に『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『闇の奥』『冬の旅』『籠の鸚鵡』『不意撃ち』などがある。

「2023年 『卍どもえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻原登の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×