- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167385040
作品紹介・あらすじ
銀座が街の王様で、僕はデザイナー一年生だった——憧れのデザイン業界での修業時代を文章と懐かしいデザインで綴った六〇年代グラフィティ。講談社エッセイ賞受賞。(井上ひさし)
感想・レビュー・書評
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惜しくも2019年に亡くなった著者の、社会人デビューのころのことをつづったエッセイ。
キャリアのスタートはグラフィックデザイナーとして、イラストだけではなくレイアウトを含めたデザイン全般を手掛けていた著者だが、グラフィックだけでなく、作詞作曲もやっていたことを本書を読んで初めて知った。
また、タバコのハイライトのパッケージデザインが著者であったことは有名だが、それが採用されるまでのいきさつが本書に書かれていて興味深かった。
一方、今は亡き社会党のマークも著者がデザインしたことは本書を読んで初めて知った次第。
そして、本書をさらに魅力的にしているのは登場する人物たちである。
田中一光、横尾忠則、高橋悠治、宇野亜喜良、篠山紀信、立木義浩、三宅一生等々、今となっては錚々たるメンバー。
田中を除き、いずれも当時はまだ若手で、全く無名だった人もいて、ヤングXXX的なエピソードわかって面白かった。
続巻あるいは、後の時代のことをつづったエッセイ集があるのか、ものすごく気になる。ちょっと探してみよっと。 -
途中にライトの社員旅行の話が出てくる。和田誠さんはひたすらみんなが遊んでいる様子をフィルムで撮影して、帰ってきてから昼休みに上映した。そこに和田誠さんは全く映っていなかったという話。
この本もそれに近いところがあると思う。和田さんの為人はなんとなく文体で伝わってはくるのだけれど、やっぱり和田を囲んだ人たちにスポットライトが当てられている。だから、途中で和田さんのことを生意気だと何回か誰かのコメントで出てきた時意外だった。
ということで、和田さん本人についてはヴェールに包まれたままの部分が多いのだけれど、そして和田さん本人も自分の感情を開けっ広げに話すのが好きではないと思うのだけれど、無口で穏やかなイメージだった和田さんは思った以上に親しみやすそうで、そして芯のある方だったんだなと思った。
イラストがたくさん挿入されているのが嬉しい -
読みやすく、それでいて日本語がとても良いものだと思わせるような文章だった。絵だけでなく言葉遣いも上手いのかと驚く。
和田誠さんは最近他界されて間もない。近頃、生きているうちに知ることのできなかった素晴らしい方々の名前を訃報で知るたびに「生きているうちに知らなければ意味がない」とつくづく思い知る。それだけ、「まだ生きている」ことが貴重なのだ。
綴られた著者の銀座の思い出にはたくさんの人の名前が載っている。今となっては当たり前なものが、まだ当たり前でなかった時代だったようで、時代が変わるということはいろんなものを得る代わりに失うことなんだろうか。少し未来が不安になった。
良い本だったと思う。 -
和田誠のエッセイ集『銀座界隈ドキドキの日々』を読みました。
和田誠の作品を読むのは初めてだと思います。
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銀座が街の王様で、僕はデザイナー一年生だった ??
1960年代、憧れのデザイン業界に足を踏み入れた和田誠氏を、胸高鳴る毎日が待ち受けていた。
若い才能がジャンルを越えて出会い、刺激しあったあの時代を、文章と当時の懐かしいデザインを紹介しながら綴る自伝的エッセイ。
講談社エッセイ賞受賞作。
解説・井上ひさし
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銀座に店舗を持つ百店が結成した銀座百店会が発行する日本初のタウン誌『銀座百点』に掲載されたエッセイを収録して、1993年(平成5年)に刊行されたエッセイ集です。
■ご挨拶
■就職・卒業
■先生がいっぱい
■シルクスクリーン
■アニメーション
■タバコとアンポ
■ジャズ
■ベン・シャーンそして…
■21頭の象
■いろんな人たち ほか
銀座が街の王様で、僕はデザイナー1年生だった……1960年代、憧れのデザイン業界に足を踏み入れた和田誠氏を、胸高鳴る毎日が待ち受けていた、、、
若い才能がジャンルを超えて出会い、刺激しあったあの時代を、文章と当時の懐かしいデザインを紹介しながら綴る自伝的エッセイ……講談社エッセイ賞受賞作。
和田誠が1960年代に銀座でデザイナーとして働いた経験を綴った自伝的なエッセイ……軽妙でユーモラスな文章で、当時の銀座の風景や人々、デザイン業界の様子が鮮やかに描かれており興味深く読めました、、、
和田誠の個性的なデザイン作品も多数紹介されていて、愉しい気持ちになりながら読めましたね……和田誠の人柄や仕事を通して出会ったクリエイターやアーティストたちの多彩な顔ぶれが印象に残りましたね。
その一部だけでも、横尾忠則、篠山紀信、谷川俊太郎、植草甚一、寺山修司、立木義浩、三宅一生、三島由紀夫、手塚治虫、高倉健、真鍋博、長新太、小松左京 等々の錚々たる面々……その後、才能を開花した人たちばかりですからねー 凄い人たちが繋がっていたんですね、、、
ジャンルを越えた出会いの場やきっかけがあってこそ、才能は育まれるんだろうなぁ……と実感しました。
本作を読んで印象に残った言葉がありました……それは、評論家の栗田勇から和田誠が言われた
「君の仕事が痛烈に批判されたとしても、それでしょげることはない。
一人に酷評されたら、どこかで一人、君を絶賛している人がいる筈だ。
十人に褒められたら、どこかで十人がけなしていると思った方がいいよ」
ですね……良い言葉だなー 私も誰かにこの言葉を伝えてあげたいですね。 -
とっても面白かった。
私は生まれてもない時代の話だけど、著名な人がどんどん出てきてわくわくしながら読み進めた。
中でも私は特に横尾忠則さんのファンなので、横尾さんとのエピソードはどれも面白かった。
当時の和田さんは横尾さんに対して嫉妬の感情がなく、純粋に友だちが売れていく、評価されていくことをうれしいと感じれていてそんな二人の関係性がとても素敵に思った。 -
優秀なデザイナーの書く文章は優秀なデザインと同じように、読みやすくて、しかも深い、というのが持論です。和田誠のこのエッセーも、彼のデザインやイラストのようにシンプルでピュアで温かくて真っ直ぐでした。彼が多摩美を卒業して銀座にオフィスを構えるライトパブリシティという広告制作会社に入ってた頃の青春プレイバック。「銀座百点」に連載されたものとのこと。「銀座に勤めてはいたけど、銀座について詳しいわけじゃありません。自分の仕事や交友の思い出などを織りまぜて書くのでよければ…」と始まった連載でしたが、彼の青春だけでなく、広告、いや日本のクリエイティブの青春のタイムカプセルでした。「そして多摩美の図案科に入学したのであり。図案科というのも古い言葉だ。今はデザイン科と呼ぶのだろう。あのころはグラフィック・デザインなどという洒落た言葉はあまり使われず、商業美術とか応用美術などと呼ばれていた。」(P16 )「多摩美の先輩で、専売公社のデザイン部門(当時は意匠課という名前だったかもしれない)に勤める人がいた。」(P66)そんな時代。この時代からグラフィック・デザイナーが、アートディレクターが、コピーライターが、アニメーターが、イラストレーターが時代の前面に表れてくる、そんな日々の記録です。図案、意匠という漢字が捨てられデザインというカタカナが時代を引っ張っていく、そのはじまりがイキイキと描かれています。どの人、どの人もみんな伝説のクリエイターなんだもんんぁ…すごいネットワーク。だから「銀座界隈ドキドキの日々」はスーパースターたちの「銀座界隈キラキラの日々」なのです。そして広告がどんどん産業化して、ビジネスがドキドキ、キラキラを押し出し、みんなそれぞれの道を歩んでいくのも、また青春の物語なのでありました。
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先日亡くなった和田誠さんのエッセイ。
好きを仕事にしてるのが伝わってきて羨ましい。
キラキラした昭和のデザイナーの世界が描かれていて、錚々たる顔ぶれの交流している人々が登場して楽しい。 -
こういうふうにたのしく仕事ができたら、最高だな。
文章が上手かった。 -
和田誠が多摩美大を卒業後、デザイナーの道に進んだ当時のことを回想するエッセイ集。気楽な感じで読もうと思ったら、意外と読みどころが多い。
それは和田誠という若き才能がどのように自らの道を切り開いていくかという道のりが面白いだけではなく、デザイナーという職業が日本でビジネスとして成立する歴史がつぶさに語られているからである。デザイナーという職業が成立するには、その需要にあたる広告・マーケティングという世界が花開く必要がある。本書は黎明期の広告・マーケティングの世界のワクワクさを追体験できる点で読み応えがあった。
また、和田誠自身の交友関係も改めて読むと凄い。寺山修司、武満徹、谷川俊太郎らとの仕事や、良きデザイナー同士としての横尾忠則、デビューしたばかりの篠山紀信との協働など、こんな交友関係が、と改めて驚かされる。 -
スキャニングを機に20年以上ぶりに再読。60年代、70年代の広告界はやっぱり面白い。
遅ればせながら、フォローして下さりありがとうございます!
和田誠さんは「麻雀...
遅ればせながら、フォローして下さりありがとうございます!
和田誠さんは「麻雀放浪記」の映画で知りました。とても好きな映画なんです。
それからあれこれ知るにいたりました。
知れば知るほど面白いですよね。
私もこの本を読んでみたいです。
ぜひ、本書お読みください。なぜ、和田さんが映画や映像にもこだわっているのかの一端を知ることができると思います。
あと、映画「麻雀放浪記」についてですが、昔劇作家で演出家の故つかこうへいがエッセイで、和田さんがこの映画を白黒で撮ったのは、和田さんは白から黒までが単純に二つではなく、何十段階の階調で見えるので、白黒で十分で、カラーにしたら頭がおかしくなっちゃうからではないか、と書いていたのが印象的でした。ちなみにそのエッセイ集も和田さんがイラスト描いていました。
この本はちょうど読みたい本のリストに入っておりました。
「本にまつわる...
この本はちょうど読みたい本のリストに入っておりました。
「本にまつわる本」を集めておりまして、今はそちらに夢中ですが、たまには他の本も読みたいのですよね(*´▽`*)
膨大な仕事をされた方なのに、嫌なエピソードがひとつもないってすごいことです。
「白黒は単純に二つじゃない」って、すごい言葉ですね。ちょっと思いつきません。
ありがとうございました。