血の季節 (文春文庫 389-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167389024

感想・レビュー・書評

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  • 昭和十二年十月三十一日、尋常小学校三年イ組の『ぼく』は下校中に〈お城〉の塀の上から声をかけられる。そこにみたものは、大小一組のかぼちゃの化け物だった。

    四十年後の『ぼく』の回想と、青山墓地で起きたある事件を追う警部の視点が交互に語られます。
    和製ゴシックホラーとでもいうべき『ぼく』の回想が、雰囲気たっぷりでいい。それだけに文春文庫の裏表紙の紹介文はネタバレし過ぎで困ります。いずれわかるとはいえ、こういうのはじわじわとくるのがいいのに。
    一方、警部の視点は硬質な刑事ものといった感じで、『ぼく』の回想との対比がおもしろいです。

    結末は、とある有名作を思い浮かべます。なので、もう一ひねり欲しかったな。
    それでも、昭和初期の時代感と西洋の幻想的な空気が混じり合った妖しさは良かったです。

  • 思ってたようなストーリーではなかったが、結構面白かった。
    ただ昔に書かれた本だったからか、文章が読みにくく読むのに時間かかった〜〜

    微妙に現実感があった てもしかしたら、ドラキュラかも?!って思わされるのが良い!

    あと第二次世界大戦の東京の雰囲気が分かったのも良かった。

  • とても幻想的な作品。幼き日の回想の中にある洋館での描写はぞくっとするほど妖しく美しく、逆に戦争の場面は淡々としているが凄惨。結局、誰がいつから吸血鬼だったのか?ハッキリとは書かれないままに終わるのも良い。個人的な好みでは『弁護側の証人』の方が好きかなぁ。

  • 高校生のときから何度も読み返している愛読書の一つ。
    作者があとがきで好きな吸血鬼小説として挙げている、
    スタージョン『きみの血を』と、共通する面もあるような。
    殺人犯の夢想的な回顧談と、
    彼を逮捕した敏腕警部の捜査の模様が互い違いに記述され、
    最後は「理性」「現実の秩序」が
    「白昼夢」に勝利したかに見えたのだが……といったお話。
    改めて読んでみると、
    殺人犯の自分語りの口調が乱歩の文体っぽくて、ちょっと笑えるし、
    感染源であるはずの二等書記官が
    序盤にチラッとしか登場していない――セリフもない――のが凄いな。
    しかし、惜しむらくは、
    私が気づいた限りでも1ヶ所、誤植があること(p.256)。
    未読だが、同著者の『弁護側の証人』が再版され、
    話題になったらしいので、
    こちらもリニューアルしてほしいなどと思ってしまうのだけど。

  •  小泉喜美子というとクレイグ・ライスの翻訳者というイメージだったけど、こんな達者な小説も書いていたのだ。ミステリというよりはファンタジーだろうかこれは。ドラキュラ伝説を下書きにして、現代の幼女殺人の捜査模様と死刑囚が戦前の公使館の異国人兄妹と知り合ってから戦時中にかけての不可解な出来事の回想とが交互に綴られる。戦前の回想部分はまるで横溝正史を読んでいるかのよう、そして現代のドラキュラ譚といえば島田荘司の大作をいやでも思い出してしまう。ミステリだとすればどういう合理的な真相にもっていくのかが興味をそそるところだが、思わせぶりな結末ともあいまって、よくいえば余韻、悪くいえば未消化感が後に残る。

  • 読みたい本

  • 少年の空想や妄想に彩られた現実と、戦争という血生臭さの裏の非現実が交差する物語。どこか薄暗い雰囲気がいいです。

  • さて、これはどっちなんでしょう。吸血鬼怪異譚なのか、それとも異常者による犯罪ミステリなのか。答えは自分で読んで見つけましょう。
    ロマンとメルヘンに溢れたかのように思える公使館でのシーンも、物語が進むに連れて不気味さを思い起こさせます。そして随所に挟み込まれる、幼女殺人事件の捜査。両方のパートが絡み合って徐々に接近し、結末は何処へ向かうのか。最後の最後まで、まったく油断はできません。読み終わってもひそかに考えさせられてしまう作品。雰囲気にどっぷり浸りこんで読むのが楽しいです。

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著者プロフィール

1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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