蝶 (文春文庫)

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著者 : 皆川博子
  • 文藝春秋 (2008年12月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167440084

蝶 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 短編集。人間の「生という凶暴性」が、終戦後の時期に「自由」や「民主主義」を掲げていて、そのことを忌んでいたという風にも読み取れる。しかし実はそれよりも、人間のある部分、狂奔するのとはまた違う、「生きている」ナマの部分を繊細かつ骨太な文章で描き出しているように感じた。やわらかい、あやうい美しさが頭を内から照らし出すようであった。

  • 詩句から触発された幻夢、全八篇。
    どれも素晴らしい味わい。日本人で良かったと心から思う。
    悲しくて、恐ろしい美の世界。『空の色さえ』は大好きなモチーフ、隠された人の話し(病気や何らかの欠落で蔵や座敷牢で暮らす人)一編目から幻夢の網の目に絡めとられて恍惚としてしまう。
    表題の『蝶』も良かったけれど一番は『龍騎兵は近づけり』二階の彼等、怖い怖い。波の音に微かにバグパイプの音色が聞こえてくるようで…胸が締め付けらる。皆川博子、やっぱり大好き

  • 日本語が綺麗。
    どの短編も喪失感が残る。

  • 表題作のほか、7つの作品が収められた短編集です。舞台はいずれも第二次大戦前後の日本。退廃的で、死の匂いのするこのような作品を美しいと思うのは、生きることは罪深く、哀しいことだと、誰もが知っているからかもしれませんネ。詩のように紡がれた言葉が描く、密やかで耽美な幻想世界に、どっぷり浸ることのできる1冊でした。

  • 戦前〜戦後にかけての個人の喪失感を描いた作品群。ただひたすら文も話も美しいです。割とどの話も後味の悪い終わり方をするのですが、読後感はさらっとしてます。久しぶりに当たりを引いた気分で、他の作品も読んでみようかと思ってます。

  • 乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」がしっくりくる短編集。
    作品はすべて戦前から戦後を舞台に、戦前の生活は夜の夢のように追想される。

    各作品に引用された詩歌が印象に残って、1編は20分くらいで読めるみじかさでも読んだ後に想像が広がった。

    時代背景は共通しているが、連続性はないのでどこからでも読むことができるが、「艀」と「想い出すなよ」や、ラストの「遺し文」の並びも美しいと思う。

    特に気に入った「幻燈」は映像作品でも見てみたい。

  • ふとした契機で知った皆川さんの本。
    これが最初に読んだものだけれど、やばい。美しい。



    舞台は第二次世界大戦前後の日本。
    通信、伝達手段が限られている当時の世界は、とても閉鎖的で濃密に思える。 その中での人間との関わりはとても限定的で直接的で、生々しい。
    そんな中で彩られる幻。恐ろしくて気持ち悪くて、読んでいて鼓動が速くなった。
    …うん、私には皆川さんの感想を述べられるほどの語彙がないです。
    でも、とてもとてもおすすめ。

  •  初めて読む皆川博子で、本書は8編からなる短編集。
     大半の作品は戦中・戦後が時代背景になっている。
     価値観が180度変わってしまった、いや180度変えなければならなかった時代に、上手く溶け込むことが出来なかった、あるいは迎合することが出来なかった人々の話が多い。
     著者の作品に対して、幻視、夢幻といった単語が散見できるが、確かにそう呼ぶ以外にない作品がある反面、現実そのものを描き上げたと思しき作品もある。
     ここに登場する、少年や少女、男や女たちは、きっとあの時代に実際に現実として存在していたのだろう、と思わせてくれるのだ。
     どの作品も壮絶であり、凄みがあり、妖しくも哀しい。
     どの作品も強く胸を締め付けられる。

  • 8作の短編集。太平洋戦争前から戦後直後くらいまでの時代の話です。
    子供の目から見た、大人の世界。
    変わってしまった世の中に復員してきた男。
    支配される女性。
    世の不条理さというものに押しつぶされそうな、いや、押しつぶされる人々の話なのかな。
    その不条理さを、それぞれ受け止められない者、受け流して行く者それぞれかもしれないけれど。


    好きとか嫌いとかそういう次元は超えてしまったと思われるような小説でした。
    言葉の強さというか、異次元の世界へ引きずりこまれたというか、何かの力に翻弄されて読み切ってしまいました。
    固い単語や文章で書かれていて、強烈な印象とともに、詩や歌が絡んでくるせいか、頭の中でセピア色のその場面が浮かんでくるようでした。
    なんだろう、どこか暗くて淫靡で、残酷で、清らで哀切。

    またこの作者の新しい本が読みたいです。
    でも言葉が難しい(T . T)

  • この作者、どうしてこんな小説が書けるのだろう。
    子供のもつイノセンスと、愛欲と、さらに大人にも備わるイノセンスと、愛欲。
    「たまご猫」などと比べて、異様に密度が濃い。

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蝶 (文春文庫)の作品紹介

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。

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