機会不平等 (文春文庫 さ 31-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167443030

感想・レビュー・書評

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  • 著者の斉藤貴男というジャーナリストのすごさに感動します。
    綿密な取材、圧倒的な参考文献の量、権力に屈しない生き様などなど。 理想的なジャーナリスト像を与えてくれる人です。

    第1章では、少し古いですが「ゆとり教育」の導入に関して、文科省と教育政策に強い影響を及ぼす経済界ののTOPが、エリート教育を念頭において議論していることが分かります。
    「教育に格差が生じても世界に誇るエリートを養成したい」これが本音なのかと思います。格差が広がるという問題よりも、まさに「社会ダーウィニズム」な状態です。これは、ダーウィンの進化論の自然淘汰・適者適存という概念を、人間社会の説明にそのまま流用した考えで、現実に高い社会的地位を占めている者は優れた人間であるとしています。

    最後の章では、「優生学の復権と機会不平等」で現在の遺伝子検査による優生学の復権ににも言及しています。

    機会不平等が生じる現状と背景について、独自の視点と綿密な取材によって構成されているので、新しい観点を学ぶことができます。

  • 「結果の平等」と「機会の平等」は
    区別して考えなければならない――に、激しく同意。
    読んでると著者の怒りが伝染して(笑)
    こっちもムカムカ腹が立ってくるんだけど、
    でも、多くの人に知って貰いたい力作。

  • 自由で民主的、平等な社会だったはずがいつの間にか「自己責任」の名の下に格差が広がっています。形だけの平等、実際は高等教育を受けるだけで借金漬け、ありついた仕事は非正規雇用でいつになっても給料は上がらない・・
    こんなに希望がなくなってきているのに社会をリードする政治家や経済界の大物たちが批判されずに好き勝手できているのはなぜ?

  • 1

  • 非常に考えさせることが多い一冊である。
    特定個人に対する著者の見方が少し偏っているかなと思われるところもあるが、冷静になって考えてみると妥当と納得できる点が多い。
    本当の競争社会はやはり競争に参加する機会が平等に与えられていることが大原則で、今の格差がますます開く状況は大きな問題だと思うが、こんな風に言えるのも、自分がどちらかと言えば恵まれている側に席があるからかなと思うと、少し引っかかってしまうところもある。
    本当は競争などない世界がある意味良いのかも知れない。(でも人間である以上それはあり得ない)
    考えれば考える程、分からなくなってくる。もっともっと考え続けなければ。

  • 『誰も教えてくれない教育のホントがよくわかる本 ゆとり教育になって学校はどうなったの?』中で引用されていたので読んでみた。
    ら、教育についての本かと思ったら、経済格差とか色々手におえない話盛りだくさんの本でした。
    こんなことがあるのかと驚き呆れることしきり。
    セクハラの章は読んでて吐きそうだった。

  •  日本が世界の市場で勝つためには、競争原理を徹底させなければならない。総理ご用達、政治学者がのたまう。競争原理が過剰に働けば必ずや階級社会が出現し、機会の平等さえも奪われるのだ。競争原理により下層市民として生まれた子供は出世できない時代が来るというのだろうか。明治維新を果した諸藩の志士を思えば、まだまだ機会平等な気がする。民主主義により堕落した日本国民に救いはあるのか。

  • 悔しいほど面白かった。機会の平等など経済的発展の邪魔であるという強者の論理を徹底的に調べ、批判している姿勢に共感を覚えた。御用学者の思想の形成史を追った章が良い。

  • 教育、派遣、労組、老人問題、子供問題、政治そして優生学などから、強者のための社会が作られ、すでに生まれ時点から逆転する機械すら与えられない人々がいることを実例、インタビューなどを通して暴いていくる。

  • 結果の平等は割と考えられているけれど、機会の平等について考えるとどうだろう。お金がないとなれない職業、入れない大学もあれば、社会人になってからも正社員、契約社員、派遣社員と階層に絡む問題は常に存在していて、しんどく感じながらその中で暮らしている人たちがたくさんいる。著者が、その「おかしいでしょ」っていう部分に真正面から切り込んでいく中で感じた怒りや憤りをそのまま文章にしているような一冊でした。読んでて頭に来たり、気持ち悪くなったりすることもあるかと思いますが、読んでおいてためになる一冊だとも思いました。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1958年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。英国バーミンガム大学修士(国際学MA)。新聞記者、週刊誌記者を経てフリーに。さまざまな社会問題をテーマに精力的な執筆活動を行っている。『「東京電力」研究 排除の系譜』(角川文庫)で第三回いける本大賞受賞。著書に『日本が壊れていく』(ちくま新書)、『「心」と「国策」の内幕』(ちくま文庫)、『機会不平等』(岩波現代文庫)、『『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡』(朝日文庫)など多数。

「2019年 『カルト資本主義 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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