- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167465018
作品紹介・あらすじ
乳癌に罹りながら、一切の医療を拒む叔母とそれを看取る姪。一本の青桐の繁る北陸の旧家での、滅びてゆく肉体と蘇える心の交叉を描く芥川賞受賞作。「白い原」を併録。(井上洋治)
感想・レビュー・書評
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1984年下期:第92回芥川賞受賞作品。
とても静かな素敵な作品です。
幼い頃に、大人の不注意で顔に火傷を負った女性、充江。兄一家と同居しながら手伝いのようなことをして、人目を避けて内省的に生きてきた。
一緒に育った憧れの従兄・史郎の母であり、育ての親でもある叔母が、がんになって、治療を拒み、最期を迎えるために帰省する。
崩れていく自分の肉体を見つめながら、清澄な表情で死んでいく叔母。
自分をかたち作ったともいえる、自分の一部である傷と、その原因について考える中で、人生に向き合っていく充江。
この本にはもう一編、「白い原」も収録されていて、こちらも読み応えがありました。 -
癌に侵されながらも生も死もまるまるひとつの命としてそっと愛しんでゆきたい。自然に任せ静かに死を受け入れる叔母。醜い火傷の痕を治さず醜い自分もひっくるめて自分であると全てをありのままに受け入れ肯定する充江。清々しいばかりの潔さに深い感銘を受けた。叔母への憧憬、母親の本能的な利己心、史朗への思慕・・・。輻輳する複雑な思いの交錯がきめ細やかに描出されている。「だらんま」という台詞が出てくる。富山弁で「馬鹿者」と相手を罵ることを意味するが、ここでは温かで愛情に溢れた言葉として登場する。富山ののどけけた風景と相まって、ひと肌の人情味がほっこりそのまま伝わってくる。
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高岡などを舞台とした作品です。