男坂 (文春文庫)

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著者 : 志水辰夫
  • 文藝春秋 (2006年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167471026

男坂 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 忘れ得ぬ人との邂逅、招かれざる者との再会など、何気ない日常における人生の機微を描いた珠玉の作品集。

  • ハードボイルドの第一人者シミタツの珠玉の短編集。
    40代をモチーフにしたものもあるが、基本的には団塊の世代から上の人生の最後の下り坂にさしかかった男たちの機微を見事なまでに描いている。

    読み始めは少しぼくには早いかな・・・的な感じだったんだが、読み進めるにつれ深層心理の奥深くまで届くようなその文体に正直心を奪われたまらなくなってしまった。

    皆、それぞれにいろんな過去があり、その葛藤の中で人生を決める者、あるいはどうしようもない時に流れによって今を生かされている者・・・。

    ぼくたちはある意味逆らうことのできない大きな波の上にいる。
    その波の上で自分自身と人生をどう折り合いをつけていくのか。
    それは自分自身で決めることであって、自分自身で納得するもの。

    この本からはある種の寂しさのようなものが感じられる。
    でもそれは決して人生のやり残し感ではない。
    むしろ精一杯誠実に生きてきた自分の足跡を振り返った時に、なぜかしら頬をつたうように落ちてくる涙のようなものだと思う。

    人生、辛いことの方が多い。

    でも、ぼくたちはそれを飲みこみ、あるいはそれを吐き出し生きている。
    その生き方の選択は人それぞれである。

    この本はそんないろんなことをじんわりと感じさせてくれる。

    長編を読むときは最初の1行でその世界に自分が合うか合わないかが、その本を購入する選択のキッカケのようなものであるが、志水辰夫さんの短編は最後の1行に男の哀愁の全てが凝縮されていてその各章の締めくくりが強烈に男のわびさびを感じさせる。

    ふいに晩年のアートペッパーの「THESE FOOLISH THINGS」が浮かび、男坂のひとつの章を読み終えたあと、ヘッドフォンで聴いてみた。
    晩年のペッパーの哀愁ただようサックスの音色とシミタツの文体がまじり、涙がとまらなかった。

    ぼくは今、男としてどのあたりの坂を歩いているんだろう。

    ・・・・そんなことを考えながら。

  • 普通、小説を読み終えた後の余韻には充実感や興奮、喜び、悲しみなんかがある。しかし、この作品のような形容しがたい余韻には滅多にお目にかかれるもんじゃない。

    どの短編作品も寡黙な中年男たちが主人公。彼らの人生は、不運な過去をきっかけに坂道を下っている。しかも、男たちの抱える様々な問題は何一つ解決されないまま、作品は唐突に終幕を迎える。
     
    とはいえ、その未完成な状態を放っとくのは、奥歯に物が挟まっているようで気持ち悪い。読み終えて、読者は男たちの今後を考えずにはいられない。なんとも面倒な小説だ。しかし、不快さはない。といって、快感でもない。不思議な余韻だ。

  • あえて描かない余白のある一冊。

  • 新規購入ではなく、積読状態のもの。
    2011/4/13〜4/16
    様々な人生を過ごしてきた男女の終盤戦を描く短編集。「扇風機」、「再会」、「サウスポー」、「パイプ」、「長くもない日」、「あかねの客」、「岬」の七編。個人的にはあかねの客が良い。デビュー当時の硬質な作品も良かったが、最近の枯れた味わいも素晴らしい。シミタツ節は健在。

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