下流の宴 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167476403

作品紹介・あらすじ

東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。高校中退の息子がフリーター娘・珠緒と結婚宣言をしたことで「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意する。一方馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始して-切実な女の闘いと格差社会を描いた傑作ベストセラー小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説では、2つの世界が交互に描かれる。

    1つが「福原家」。自称、中流家庭。教育ママの由美子を中心にして、ちょっとズレたところがある人たち。貧困層に対して「あの人たちは私たちとは違う」などと発言したり、とんでもない言説がまかり通っている。

    そしてもう1つが「宮城家」。沖縄の離島にルーツを持つ一族。いわゆる「温かい人たち」的な描かれ方。

    福原家の長男である「翔」は高校を中退してフリーターをしていた。親との喧嘩で家を飛び出した彼は、宮城家の長女である「珠緒」と交際をスタートして同棲を始める。

    珠緒はまぁ善人で努力家なのだけど、由美子からの評価は散々なもの。由美子は自分たちの祖先は医者であり、特別なのだと力説。珠緒のような女性が翔と同棲し、あまつさえ結婚しようなどとは笑止千万。そんな態度。

    それに対して、珠緒は「自分も医者になる」と啖呵を切る。

    そんなストーリー。当然、福原家が悪、宮城家が善のような描き方がされる。やや露骨すぎる描写が多いものの、そのデフォルメ化は勧善懲悪としてはまぁアリかな。

    夢中になって500ページを一気に読んでしまった。

    (ネタバレを含む書評全文に関しては、書評ブログの方を宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%A6%84%E4%BF%A1%E3%81%93%E3%81%9D%E8%B2%A7%E5%9B%B0_%E4%B8%8B%E6%B5%81%E3%81%AE%E5%AE%B4_%E6%9E%97%E7%9C%9F%E7%90%86%E5%AD%90

  • 星3.5かなぁ。
    前にドラマで見ていて あんまり好きじゃなかったから なんとなく読む気になれなくてずっと放って置いたけど やっと読みました。
    ドラマ見たときも思ったけど 話はきっと面白いと思うんだけど 誰にも感情移入できなくて あんまり引き込まれなかったかなぁ。
    ドラマでも小説でも 唯一好きと思えるのは珠緒のお母さん。ところどころに出てくるこのお母さんの言ってることは ほんと的確 笑。

  • 20歳。高校中退の息子がフリーター娘と結婚すると言い出した。
    「うちが下流に落ちてしまう」
    恐怖に支配されるは、東京の中流家庭で主婦をしている母親。

    一方、馬鹿にされたフリーター娘、
    馬鹿にされるに耐え切れずこう宣言。
    医者の娘っていうことでそんなにえらいんなら・・・
    「私が医者になります」

    人物描写が絶妙。最高のエンターテイメントでした。
    私はきっと、母由美子と、息子翔の間の世代。
    まるで違うこの二つの世代の感覚が、どちらもわかるような気がします。

    本当に上流の人は、下なんて見ない。
    中流が当たり前だった時代がおわり、上にいくか、下にいくか、格差が広がる今だからこそ、この小説は生々しい。そして、痛いところをついてくる。

    親はきっと、そんなすごいことを望むわけじゃない、普通の幸せを手に入れてくれたら、そう思うでしょう。
    ところが今、就職するのも、車を買うのも、結婚式をあげるのも、「普通」のことではなくなっている。それに気付かない親世代は、案外多い。
    そして、子育ての失敗で悩む親も少なくないと聞く。
    でもそんな親世代に言ってあげたい。これは「時代」なんだと。

    努力すればそれだけ選択肢が広がる。
    いつの時代も定理でしょう。ただし、努力するにはモチベーションが必要だ。
    ~したい、~になりたい、~が欲しい。
    あるいは、それがポジティブなものではなく、「見返したい」なんていうものでも、自分のためではなく、「親に楽をさせたい」なんていうものでもいい。
    人は、動機なしには頑張り続けられない生きものなんだと思います。

    のびしろの少ない時代は生きにくい。それでも、希望がないわけではない。
    希望は、人との関わりから生まれるものなんだと思います。
    全力でその人を応援してくれる人がどれだけいるか、でその人の可能性は変わってくるようにも思います。
    ただし、最後に変えるのは自分。努力をするのも自分。

    痛々しいけれど、すかっとする。時代を描いだ良本でした。

  • 今話題の日大理事長の作品を初めて読んだ。面白かった!
    医者を目指す珠緒を応援したくなる。金持ちの男を探す姉の可奈の話しも面白かった。

  • 努力する事で新たな扉を開けられることを教えてくれる本。
    最終的に同じ道に進んでいても、自分が選んでるか、選んでないかで大きな違いがある。
    道は切り開くものではないかと思わせてくれる。
    今は私は与えられた場所にいるけれど、自分で努力して切り開きたい。誰にも依存せず、頼らず、自分の価値観で生きたい。
    すらすらと読めて、疲れているときにおすすめの本。

  • Audibleで読了。賛否両論いろいろありますが、私は面白かったです。さすが、林真理子という感じで、軽快な文章で最後まで一気に聞くことができました。

    私も子育てしてるので、反面教師にも感じます。

  • うーん微妙!!

  • 自分の幸せの基準を外に求めて、自分自身の「好き」と全く向き合わない、母親と娘。苦しそうですね。

  • 自分が思春期の親になってみてわかる、子供と自分は別人格ということ。
    自分の思うようには子はならない。
    我が家の場合、勉強しなくても、歯を磨かなくても、部活を辞めてしまっても。
    自分の価値観を振り返ることをせず、見栄っ張りな自分を自覚出来ず、子供を変えようとすると、親子関係は恐ろしいことになるのですね。
    諦めと自分の人生を生きること、が大切。

    あと、サラリとでてきた、夫婦仲が良ければ、子供は間違って育たない、はグサリときました。

  •  自分が上流であると思う主人公の母。決して努力をしないその息子。収入の高い相手との結婚のみを目指す娘。
     
     主人公である母親は息子の彼女を叱責してしまう。「あんたのような下流の家の出の娘はうちの息子にはふさわしくない。ウチは代々医者の家系」

     息子の彼女は努力の末医大への合格を果たす。しかし、息子は、「がんばった君に僕はふさわしくない」と別れを告げる。

     外資系金融機関勤務の男と結婚を果たすが、その男はうつ病を患い、実家に帰ってしまう。乳児を連れて娘は母親のもとに戻る。そして医大合格した交際相手と別れた息子は、マンガ喫茶の店員の給与では自活できず、彼も母親の元に戻る。

     下流から出ない若者。上昇志向のある若者。上流とは?下流とは?

     「私は何を間違えたのでしょうか」と母親が祖母に書く手紙で終わる。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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