異なる悲劇日本とドイツ (文春文庫 に 11-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167507022

感想・レビュー・書評

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  • 安倍総理のFacebook投稿に付けられたコメントが話題になっています。
    ”過去の事を周辺国に謝罪しない限り、あんた達がいつも叫んでいた「脱アジア」は絶対できないと思います。過去の事謝罪したドイツを見習ってください。同じ敗戦国なのに違いますね。”

    もし私が他国の方にこう言われても毅然とした態度でいられる(たぶん)のは、この本を読んでその「違い」について理解しているからです。相当前に読んだ本ですが、感情を抑えつつ冷徹な筆致で読み応えがあったと記憶しています。

    「大統領が戦争を謝罪し戦後補償も今も続けているドイツと、何もしていない日本」この嘘を、現代に暮らす私たち日本人こそ明確に否定しないといけないですね。他国の方にお任せするのではなく。

  • 日本とドイツの戦争責任の違い。15年以上前に書かれた本だけど勉強になった。第3章がヤマ場。

  • 第二次大戦中のナチスドイツが、ユダヤ人の絶滅、ポーランド人、ウクライナ人の絶滅、オランダ人、ロレーヌ人、アルザス人の絶滅、さらには、器質的疾患を持つ者、肺病及び心臓病患者は、家族もろとも消し去る計画を持っていたとは、知らなかったなあ。

    これは「戦争犯罪」とは明らかに性質の異なる犯罪行為だ。

  • これはまぁ日本人として読んでおいた方がいいかなと思う。

  • 100422(s 100712)

  • ナチスの犯した戦争犯罪と日本の侵した戦争犯罪の相違と類似点を明らかにするために書かれた啓蒙書。と同時に、米国の非戦時の日本敵視政策が書かれている米国の戦争準備のプログラムも冷静に記され著者独自であり正当な史観が展開される。
    ナチスの独裁制親衛隊(ss)の創設。ヒトラーの突撃隊である。
    ドイツのユダヤ人対策は、人種差別という戦時ならば戦闘的に戦う国同士が持つ排外視などという戦時の体制から生まれてくる通常の「共通観念」などではなかった。ユダヤ人絶滅運動であり、反ユダヤ主義という巷にわたり行く「思想」を超えるものでは全く無い。生物学的人種思想である。ユダヤ人の次はポーランド人、ウクライナ人の絶滅、器質的疾患を持つ者、肺病及び心臓病患者は、家族もろとも消し去られることになっていた。つまり植民地支配、外国領の自国の権益確保、といった程度はるかに超える優秀な人種が劣悪な人種を絶滅させる優性的人種観に立っていた。ナチスは、戦争犯罪と同時にヒットラーの特有な「殺人」に飢えた独裁者であったのであり、戦争が政治の延長であるという近代の戦争観を超えたものであった。殺人の目的自体を嗜好する国が、ナチスを党首とするナチス独裁国家であり、また彼らを支持したドイツ国民の「責務」である。アウシュビッツにガス室が作られたのは1942年いこうであり、大量虐殺は軍事的利益にも反し、また政治的利益にも反している。戦争犯罪は、戦勝国も犯す。捕虜迫害、民間人虐殺、戦略空軍による住宅地爆撃、民間客船や病院船の撃沈などの戦争犯罪である。これは、米国であろうと栄光であろうと同一に解釈しなければならない。しかし、ドイツのユダヤ虐殺は、この範疇からはみ出る「大量殺人」なのであり、政治の延長としての「戦争」によって齎される戦争犯罪ではない。ドイツ人はドイツの犯した「個人の罪」を認めるが、「集団の罪」を認めない。それを認めたら、ユダヤ人絶滅政策という大量殺戮をするドイツ民族ということになり、ドイツ民族が絶滅しなければならない道徳性を負ってしまうことになるからである。故に、ドイツの採る戦後補償と日本の戦後補償は全く性格の異なるものとならなければならない。
    「オレンジ計画―――米国の対日侵攻50年戦略」
    日露戦争後、日露の講和会議を米国のセオドアルーズベルトが斡旋する。その態度は友好的だとされているが、その背後には太平洋に覇を唱え始めた若い米国の対日本の戦争計画について下問している。メモ:日露戦争の戦費15億のうち8億は米英からの借款であった。それと同時に日本を攻撃目標にする準備態勢を整備し始める。複数の作戦計画を平和時にも練り上げておく。米国政府は今日でも同じことを繰り返し実行している。「オレンジ計画」は半ば机上のゲームであり、半ば実践用の予定プログラムである。いざというときの安全保障上の対応計画案であって、どこまでも防衛的な内容だと米国は正当化する。他国がその範囲を超えて動いたとき、直ちに攻撃を開始するという、自国本位の行動プランである。ナチスドイツのように最初から無茶苦茶に攻撃的なのではなく、充分に抑制的ではあるが、いつでも発動できるように「戦意」は貯蔵されている。太平洋戦争は、米国の覇権戦争であり、また、太平洋戦争が開始される遥か以前の予定プログラムの実施戦争でしかなかった。

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著者プロフィール

西尾 幹二(にしお・かんじ):1935年、東京生まれ。東京大学大学院修士課程修了。ドイツ文学者、評論家。著書として『国民の歴史』『江戸のダイナミズム』『異なる悲劇 日本とドイツ』(文藝春秋)、『ヨーロッパの個人主義』『自由の悲劇』(講談社現代新書)、『ヨーロッパ像の転換』『歴史の真贋』(新潮社)、『あなたは自由か』(ちくま新書)など。『西尾幹二全集』(国書刊行会、24年9月完結予定)を刊行中。

「2024年 『日本と西欧の五〇〇年史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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