アメリカン・タブロイド 下 (文春文庫 エ 4-8)

  • 文藝春秋
3.88
  • (18)
  • (14)
  • (17)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 155
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167527891

作品紹介・あらすじ

おれたちの夢は汚された-栄光を目指し、手ひどい裏切りを受けた三人の男。巨大な政治と犯罪の迷宮のなかで、彼らはアメリカ史上最大の殺しに向かって疾走を開始する…。"アメリカが清らかだったことはかつて一度もない"そう吼えて、ノワールの帝王が紡ぎだす憎悪と破滅の物語。類を見ぬ巨大な暗黒小説、ここに誕生す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読了

  • 文章が簡潔すぎるが故、淡々と話が進む印象。スピード感はそれ程感じない。内面模写がほぼないから、登場人物の行動に唐突感もある。煽り文句と宣伝のコピーはいいけれども、内容はハードル高め。自分の読むレベルを上げてから、また再読しようと思います。

  • 1995年発表、「アンダーワールドUSA」三部作の第一弾。アメリカ現代史の闇をエルロイ独自の史観と切り口で描いた野心作だが、拡げた大風呂敷の上に混沌の種子を散乱させたまま強引に物語を閉じているため、結局は収拾がつかずに投げ出した感がある。
    本作も唯一無二の文体による過激且つ虚無的な情念の世界が読者を翻弄することは間違いない。だが、ノワール史を塗り替えた「LA四部作」での重厚且つ精緻な構成力は衰え、登場人物らのインパクトは強いものの極めて雑であり、総体的な完成度は低い。エルロイの意気込みだけが終始空回りしていると感じた。

    60年代米国の「光と闇」を象徴するケネディ家に擦り寄り、カネと色と欲のみで結び付いた悪党らの狂騒。偽善と悪徳で腐り切った為政者、形骸化した元支配層の金満ワスプ、最下層を恐怖で牛耳るマフィア、独裁体制下で暴走するFBI、労働者を骨抜きにし権力中枢へと食い込む巨大労組。脈絡無く積み上げられていく覇権争い。その隙間を飢えた狼ども、すなわち本作の主人公格となる三人の男が涎を垂れ流しつつ駆け回り、最終的にはJ・F・ケネディ―暗殺へと至る濁流へと飲み込まれていく。

    アメリカが独善的「自由」という大義の下に、傲慢な蛮行を繰り返してきたのは事実だが、エルロイは捩れた陰謀史観に捕らわれ過ぎている。肥大化した果てに内部から破裂する時を迎えつつあった覇権国家の実態を曝こうとする試みは、リアリティに乏しく、虚構性のみを強めている。ポピュリズムを建て前とする権力機構が「無法者/異端者」を野放しにするはずもなく、闇組織の如き自浄能力の欠如は、体制そのものの崩壊に繋がるからだ。時の要人らを我流にアレンジし、容赦無き俗物化を施して、米国の暗黒面を表象させているが、そこには、支配者層に対するエルロイ積年のルサンチマンさえ感じる。

    まやかしの「正義」よりも、雑じり気のない「悪」こそが権力の源泉となり、目的が手段としての暴力を正当化する。けれども、その果てには破滅があるのみだ。
    エルロイはこの先どこへ行こうとしているのだろうか。

  • アメリカが清らかだったことはかつて一度もない。われわれは移民船のなかで純潔を失い、それを悔やんだことは一度もなかった。アメリカの堕落を特定の事件や状況のせいにすることはできない。最初からないものを失うことはできないのだ。〜悪党共に幸いあれ。

    「幻の女」以来の冒頭から衝撃。暗黒にどっぷり浸る準備は整った。
    ケネディ暗殺。このゴールに向かって突き進む。とにかく熱量と情報量にやられた。一行一文字も見逃せないのである。止められない。ページは進まない。
    誠実のかけらもない登場人物。FBI、CIA、大統領、大富豪…金と暴力が支配する圧倒的正義。
    ケンパー、ウォード、ピートの3人が主軸に物語が織りなす。裏切り裏切られ、追い詰め追い込まれ、彼らの野心はどこへ向かうのか。私はウォードをメインに読んでいた。複雑な感情が湧く。彼の5年間は失うものも得るものも多すぎた。
    権力にはひれ伏すしかないのだろうか?富とはそこまで欲するものだろうか?アメリカのいく先を、次作で目の当たりにしなくてわ。

    2018年オススメマラソンその②
    いつきさんより紹介いただきました。エルロイ最高!!

  • 実在した方々が大量出演。
    ラストがどうなるかっていうのが史実としてわかっているため、
    そこへどうやって収束していくのかが読み応えあり。
    気持ち悪いくらいに最後に向けてピースが揃っていくのだ。

    それほど遠くない過去の出来事なので、
    単なる小説として見れないというか、
    パンチが効いた内容と感じた。

    で、いつものごとく登場人物の名前がなかなか覚えられない。
    主軸+知っているような名前がLA4部作より比較的多いのでマシではあるが。

  • USAアンダーワールド三部作第一章

  • LAシリーズからより緻密で重厚になった。LAのように読んでいて苦しくなるような圧迫感はなく、傍観者としてただただ物語にのめりこめた。強いて言えばケンパーに感情移入したかな。読み終わるのがもったいなく感じるほど気に入りました。

  • 自分で作り出した形を焼き直した感じ。

  • 原題:AMERICAN TABLOID

    ジェイムズ・エルロイによるアンダーワールドUSA三部作の第1作目。JFKが暗殺されるまでのFBI、CIA、マフィア等の暗躍を綴った小説。

    小説の導入部で作者本人が「アメリカが清らかだったことはかつて一度もない。」と語っているが、この暗黒小説をまさしく象徴するフレーズで、読み始めから得たいの知れない恐さが待ち受けている事を暗示していた。

    さて、JFK暗殺は様々な陰謀説が展開されてきたが、今だに謎は解かれていない。
    本ブログでもレビューした「<a href="http://mei-ekahi.jugem.jp/admin/?mode=entry&eid=40" target="_blank">陰謀の世界史</a>」の中で7つの陰謀説が紹介されているが、謎を解く鍵にはなりそうだが真相は藪の中である。

    話がそれちゃったけど、本作品には実在の人物が登場し、フィクションとノン・フィクションの境目がグレイで真実の話ではないかと思わされる部分がある。
    実在の人物としてJFK、その弟ロバート、FBI長官フーヴァー、マフィアの大物サム・ジアンカーナ、そしてハワード・ヒューズ等が登場し、ジェイムズ・エルロイの筆により活きた言葉が発せられ、この物語に真実味を与えているように思う。

    それにしても、この小説息付く暇がない。アンダー・ワールドな世界でケネディ家、マフィア、FBI、CIAが複雑に絡み合い、それぞれの思惑により時には味方になり、はたまた敵になるというストーリー展開で進み飽きさせない。

    第2作目「アメリカン・デス・トリップ」が既に刊行されているので、早速読んでみたい。

    最後になるけど、小説の中でマリリン・モンローが登場し男性遍歴が紹介されているけど、何故かファイティング・原田の名前が出てくる。
    これはご愛嬌か?それとも、ホント?

全11件中 1 - 10件を表示

ジェイムズ・エルロイの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェイムズ・エル...
ドン・ウィンズロ...
ジャック・ケルア...
ジャック ケッチ...
トム・ロブ スミ...
ドン・ウィンズロ...
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×