- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167545017
作品紹介・あらすじ
火の山を望む高原の病院。そこで看護士の和夫は、様々な過去を背負う人々の死に立ち会ってゆく。病癒えず逝く者と見送る者、双方がほほえみの陰に最期の思いの丈を交わすとき、時間は結晶し、キラキラと輝き出す…。絶賛された芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」の他、短篇三本、また巻末に加賀乙彦氏との対談を収録する。
感想・レビュー・書評
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医療に携わる人たちを描く短編集。
全て自然の描写がみずみずしいというか、生き生きとした描かれ方で読んでいて気持ちが良いです。冬が好きな自分は「ワカサギを釣る」の心地よい寒さの描写が特に惹かれました。
「ダイヤモンドダスト」は生命が出入りしていく、自然の摂理の一瞬のきらめきのようなものを感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
味わいがあって読みやすい。芥川賞なので勿論ドラマチックではありません。ただ、しっとりと文学の趣を噛み締めることが出来る良い作品です。大人とはこう言うことだろうと思う。わからぬように食いしばって生きてるんです。飄々とね笑。だからダイヤモンドダストが染みるんです。
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短編が4編、どれも味わいがあるが、やはり「ダイヤモンドダスト」が一番いい。医療系の作品で死を見つめるものは多いが、死に向かって坦々として、自然と一体になったような情景に心を打つものがある。
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母が骨折で入院中に南木佳士さんは心の拠り所、と言っていた事からこの作家を知り、芥川賞受賞作である題名の話を含む短編集というこの作品に触れる。カンボジア難民キャンプでの医療団であったと言う作者の経験がものを言う医療現場の実情を知る事が出来た事は、今まで漠然としていた難民や医療の問題に少しでも触れる事ができた気がして良かった。今後医療や生と死に関する出来事や問題にぶっかった時、これまでとは違う受け止め方となるのではないかと思った。
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秋田大医学部の大先輩、南木佳士の代表作。
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和夫が小学四年生のとき、夏になると必ず姿を見せていた、自転車のうしろに氷箱を積んだアイスキャンデー売りが現れなくなった。
その年の冬、電気鉄道は廃止された。
旅客の輸送はバスに代わり、春になると路線は雑草に覆われた。
父の松吉はバスの運転手への誘いを断り、あっさり退職した。
そして、今。
(冬への順応/長い影/ワカサギを釣る/ダイヤモンドダスト) -
芥川賞とった頃に読んでいたと思っていたが、初めて読んだようだ。北軽井沢あたりを設定した病院のやもめの看護士の眼線で人の死をみつめた非常に静謐な冬の高原での人の見送りを書いています。四歳くらい南木先生の文章は丁寧で惹かれます。
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この本を紹介するあらすじの素晴らしさに惹かれ、また現役の医師が書いたという興味から読み進めましたが、感動するまでには至りませんでした。でも普通に良い作品だと思います。芥川賞受賞当時に読めば違ったかもしれませんね。女性の描写に男性目線の妄想が書かれているのがちょっと引っかかりました。面白かったのは、巻末の対談です。やはり医師作家の加賀乙彦さんとのやりとりは、作者の優しさが垣間見えて興味深かったです。
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芥川賞作品ということで読んだが、面白いという感じの小説ではない。
でもつい最後まで読んでしまった。面白いという感じではないが、面白くないというわけでもない。芥川賞作品ということで、そうなのかよくわからないが、最後まで読んでしまった。どこか実体験に基づいた小説なのだろうと思う。芥川賞全集14に収録されていた。少し心惹かれるような、感動はあった。