蒲生邸事件 (文春文庫)

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著者 : 宮部みゆき
  • 文藝春秋 (2000年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167549039

蒲生邸事件 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • タイムスリップものだがミステリーとしての側面も持っている物語である。
    受験した大学はすべて不合格、駄目な奴だと自分に言い聞かせるように口にするどこにでもいそうな若者が主人公・孝史である。
    受験のために宿泊していたホテルの火災に巻き込まれ、間一髪のところを平田に助けられる孝史。
    時間移動の能力を持つ平田は自らの能力を嫌っている。
    危機に面した孝史を見捨てられなかったこと、無理をして現代に孝史を戻そうとしたこと。
    基本的に彼は善良な人だったのだろう。
    孝史がたどり着いたのは1936年2月26日の帝都。
    あの二・二六事件のあった日だ。
    平田の縁でしばらくの間住むことになった蒲生家では、同じ日に当主である憲之が命を絶っていた。
    戦争前夜ともいえる時代へ飛んだ孝史だったが、蒲生家で暮す人々は孝史の知る人たちと何ら変わらない人々だった。
    怒りや悲しみ、戸惑いやためらい、人としての感情は時代に関係なく誰にもあるものなのだから・・・。
    時間を遡り過去にたどり着いた者は歴史を変えてはならない。
    こんなルールを聞いたことがある。
    どんな場面に遭遇しても、未来に人間がそこに介入することは許されない。
    見守ることしか出来ないのだとしたら、何のための能力なのかと疑問に感じてしまうこともわかるような気がした。

    単なるミステリーやタイムスリップに終わらないところがこの物語の良さだ。
    結末に待ち受けている感動とあたたかさ。
    時を経てもつながっていく思い。
    読んでよかった・・・そんなふうに思いながら余韻を楽しめる物語だった。

  • やっぱり宮部みゆきは安定感抜群。
    読みやすくて、思わずページをめくっちゃうテンポのいい展開。

    タイムトラベルものはいろいろあるけど、
    この本はタイムトラベルに対してキャラクターがすごく現実的なとらえ方をしていた気がする。

    好きな人のために、誇りをもって能力を発揮するひと
    変えられない流れに絶望して能力を捨てようとするひと
    好きな子を安全なところに連れて行きたいと願う気持ち
    家族をおいて逃げられないと断る気持ち

    どれも、自分がその立場だったら間違いなくそうなってたと思う。

    結局、タイムトラベルなんてあっても意味ないのかな。

  • 期待通り……いえいえ、期待以上に面白かった蒲生邸なのですよ!11

    タイムトラベルだって言うのはもうあらすじで見ていたのですが
    好きなのですよそう言うの!!1

    『リプレイ』や『7回死んだ男』も『リピート』も『さよならの代わりに』も!
    映画だと『ミッション8ミニッツ(Source Code)』なんかも!邦画だと有名過ぎる『時をかける少女』や『青天の霹靂』などなど。仁先生や『信長コンチェルト』もそうか!
    舞台でもそう言えば好きなのがあったのです。
    良いのですよね良いのですよね


    この、タイムトラベル物、或いはタイムリープ物で、しーなが好きな所が2つ!あるのですよ!!1見どころと言うかなんと言うか。


    1つ目は「自分が未来、或いは過去から来たと告白するシーン」

    これってもう、伝家の宝刀みたいな気持ち良さがあるのですよね。
    未来の情報を口が滑ったり、少しだけ言ってしまったり。
    全然信じて貰えなかったのに、ちょっとした予言が当たったりすると……
    からの、終盤に「実は……」の告白。
    「何となく気付いてた」とか身近な人が味方になってくれたり。
    良いシーンなのですよね……!
    この、正解をストーリーに突き付ける気持ちの良さ。

    2つ目は、やっぱり「その後」なのです
    トラベラーが元の時間に戻ってしまう時の名残惜しい感じ。
    そして戻ってからの、歴史の確認やふれあい。手紙とか。
    過去へ戻った場合は、今から、未来にまた出会えると言う期待。

    もうね、少し寂しくて少し嬉しくて懐かしくて……と言う気持ちがめちゃめちゃ良いのですよね!!1


    と言う事で、二・二六事件へとタイムトラベルしてしまう主人公。
    楽しみに読み始めたのでした

    史実の中に蒲生さんと言う名前は無かったから、恐らくフィクションな元大将の退役軍人なのでしょうが
    蒲生邸があるのは四ツ谷。
    主人公が外に出たりして赤坂見附まで歩いたりするのですけど、道路や風景や駅が浮かんできて
    四ツ谷に住んでいたことがあるしーなとしては何とも呻いてしまったのです

    タイムトラベルした事がなかなか信じられない主人公。
    その18歳の受験生の目から見る1936年の東京は、ドラマや映画でしか想像できないのですが
    「皆が生きて働いてる」と言う、何でもボタン一つで出来てしまう現代との違いをひしひしと感じさせてて
    主人公の家庭環境を、改めて考え直したり、自分の将来について思い直したり
    そう言うミステリ以外の部分でもちゃんと物語やテーマがあって、やっぱり宮部みゆきと言う感じなのでした

    昭和初期の人達との関係が、段々会話からも親しんで行く過程が読み取れたり
    生活の中で、段々とその時代が好きになったり。
    良いのですよね。とっても。

    しーなの好きな山場もちゃんと味わえたし
    最後のシーンも悲しいけど気持ちが暖かくなったし
    そしてミステリとしても楽しめたし、SFとしても面白かったのです。
    色んな所謂「リプレイ物」を思い出したのですよ
    こう言うSFミステリーは、やっぱり時々読みたいのですよね。

  • 終わり方が美しくて、快く晴れ晴れとした気持ちで読み終えられました。大好きな作品になりました。

  • タイムスリップしてしまった主人公。しかも行き着いた先は、歴史で習った二・ニ六事件の真っ只中の軍人のお屋敷!!
    続きが気になって気になって、どんどん読ませてしまうあたり流石宮部先生です。
    主人公の孝史が当時の民衆を眺めながら一人「とあること」に気づいた瞬間は、私も雑踏の中で自分一人だけ音が途切れた空間にいるような感覚に陥りました。
    でも「ここぞ」というときに今一つグッと来なかったのは、孝史やふきや平田や貴之といった主要人物にあまり感情移入できなかったせいかな…。。
    人生経験を積んでから、もう一度読み返したいと思います。

  • 2.26事件の前にタイムトリップした少年が、退役軍人の自殺をめぐる事件に巻き込まれ、その一族の人間模様を観察し、ナゾを解くという推理小説。

    一族が集まり、犯人はこの中にいる!というシーンを見た時は、ああ、コ◯ンっぽいなぁ(笑)っと思ったが、タイムトリップすることができる人物がいるお陰で、展開が読めなくなった。意外に面白かったというのが、印象。

  • 早、執筆当時と今との時間の隔たりに驚く。

    高校時代に読んだ本を、久しぶりに読み返してみました。

    海軍3部作などを読んだ今、見返すとまた違うかしら、と。

    90年代の、自分が高校生だった頃には違和感が無かったのに、今読むと、高校生がこんな言葉を思うのか?
    かと思えば湯たんぽがわからなかったりという、作品が書かれてから20年の隔たりを感じるように。

    そうか、湯たんぽは2000年代にブームが来たからわかるけど、90年代だと全然生活に湯たんぽが無かったのかななんて思い出しながら読みました。

    NHKかな、ドラマ化されていた記憶もあって、いしだ壱成さんと奥菜恵さんのイメージがちらつくこともありましたが、いしださんはともかく奥菜さんは今の姿を知ってしまっているのでなかなかふきには重ならず。

    今や、執筆当時の宮部みゆきさんの方が近い年齢になった今は、宮部さんが何をきっかけで構想を深め、この事件と平田たちの設定を結び付け、孝史を連れてきたのかしら、という事を考えながら読みました。

    火車(だいすき)と理由の間における作品。ほんとうに、複数路線の小説を、いろいろ描かれる作家さんですね。

  • 時代小説のようだったのに、途中で一気にミステリーっぽくなったのには笑ったwしかし時代小説であり、ミステリーであり、主人公の成長物語であり、一冊の本にいろいろな要素が入っていて上手く織り交ぜてるなぁと思った。ふきちゃんかわいい。

  • 心に残った記述

    歴史の意図も知らず、流れの中で、先も見えないままただ懸命に生きる人間に。
    明日消えるかもしれない自分の命を愛せる人間に。
    明日会えなくなるかもしれない隣人と肩をたたいて笑い合う人間に。
    それがどんなに尊いことであるか知りもしないまま、普通の勇気を持って歴史のなかを泳いでいく人間に。

    過去は直したってしょうがないものだし、未来のことを心配したって駄目なんだ、その時その時、精一杯やろうってさ。

    過去を差別しないという原点

  • 再読。たしか本書が出た時、すぐに読み、感動したことは覚えていたのだが・・・・。
    いや~ね、感動したはずなのに、忘れていました^^;
    再読して、なんだか余計に感動しましたよん。精力的にさまざまな分野の小説を書いていらっしゃる宮部氏ではありますが、初期作品もよかったよなぁ~と改めて実感している次第です。
    受験に失敗し、予備校の受験をしに上京する主人公は微妙~なお年頃。
    学歴社会の渦に片足をつっこみ、自分は何者?と悩んでいるわけなんです。そしたらそしたら・・・SFの世界に突入!
    若者たちが熱く国のことを思い、クーデターを実行するなんて、もう二度とないことなんだろうなぁ~なんて思いました。
    そういうσ(^_^; も無気力・無感動世代と呼ばれていましたからね。
    二・二六事件とかなんでそこまで熱くなれるの??なんて思いましたもん。
    主人公はタイムトリップして二・二六事件の関係者たちと接することになるのですが、彼自身も成長していく過程が書かれ、なんだかほのぼのとし、こんな青年がもしいたら、日本の未来も明るいよなぁ~なんて感じました。
    ラストや終章は感動ものですぞ!
    こういう歴史があり、今日の日本があるのだと、特に若い人たちにも知って欲しいものです。
    もちろん本書はフィクションですけど、これを切っ掛けに、二・二六事件をはじめ歴史に触れてみるのもいいかもしれません。

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蒲生邸事件 (文春文庫)の作品紹介

予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二・二六事件が起きようとしていた-。大胆な着想で挑んだ著者会心の日本SF大賞受賞長篇。

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