猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 文藝春秋 (2011年7月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167557034

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猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「きっと宝物になる一冊」みたいな事が書かれていた様な。
    まさにその通りになった!
    読後なかなかこの世界観から抜け出せないでいる。

    デパートの屋上で一生を過ごした象のインディラ。
    チェスを教えてくれたマスター。
    マスターの飼っていた猫のポーン。
    親代わりに育ててくれたおばあちゃんとおじいちゃん。
    素直で可愛い弟。
    チェス指しとして働きだすリトルアリョーヒン。
    そこで出会った少女、ミイラ。
    皆が皆抱きしめたい愛おしい存在。
    リトルアリョーヒンは自らの意思で成長を止める。
    言葉の通り、体は11歳のまま。
    人間チェスと言う悪夢みたいな出来事があり、深く傷つくリトルアリョーヒン。
    心も11歳のままだから事前に食い止めることが出来なかった事を悔やむ。
    読んでいると一緒に苦しくなってつらかったな。
    しばらくしたらまた読み返したい。

  • 成長を拒んだ天才の行く末は…作中のチェスの記譜すら何だか美しく、一つ一つの対戦が尊いものに思える。
    作中のどのエピソードも美しいのだが、特に好きなのが"人間チェス"の件。
    主人公には、人間チェスで取られた駒がどういうことになるのか?理解していないまま、サクリファイス(自分の駒を技と犠牲にして良い局面にもっていくこと)で失ってしまう。
    自分の手で宝物を失ってしまう悲しみと、人間が究極的にモノ扱いされるという非人道的なエロスが溜まりません。
    人間が駒扱いされているのが好きな方には、他に貴志祐介『ダークゾーン』もオススメ。

  • -- 多少ネタばれあり --

    老いと経年による喪失、その悲哀の中で人間本来の愛しさ、優しさ、美しさを切なく描き出す小川 洋子さんのおとぎ話は今回も期待を裏切りません。

    とても限定された環境に身をひそめた天才は、映画「船上のピアニスト」とダブる部分がありますが、この主人公は外の世界に出ることを拒むというよりも、今いる場所に固定されながらも8x8の盤上に無限の宇宙を広げられるところに根本的な違いがあります。

    身体的ハンディキャップ、天才的才能を持ちながら決して日の目を見ることができないプレイスタイル、不慮の事故など、主人公および彼に関わる人々は客観的にみると悲劇的な境遇にありながら、自身は幸福に満たされていて、ある意味とても羨ましいとさえ映ります。

    これまで物理的な裕福さを人生の目標とするような固定感を強いられてきた日本社会の中で、生きていく上での価値と意味を再度考えてみる気にさせる作品だと思います。

  • インディラ、ポーン、ミイラ、そしてリトル・アリョーヒン。
    目を閉じてそれぞれのキャラ造形を思い浮かべると、どこかほっこりした気分になる。
    いろいろ世界観が破壊されそうな気がするので、映像化はなるべくして欲しく無いですね。

    あとどうでも良いことですが、グーグル検索で作品名を入力すると、関連ワードで真っ先にミイラが出てくるのが好き。


    ただその次に出てくるのは人間チェス…

  • チェスと少年の寂しさと優しさの話。登場人物全てが現状をそのまま静かに受け入れていて美しい。
    私はなんで仕事で「何で!おかしい!」ってくさくさしてるだろう。

  • 世界観が好き。耳がキーンとなりそうな静かな時間に感じる。

  • 今までいろんな小説を読んできたけど、ここまで読み終わるのが寂しい小説は初めて。
    世界にどっぷり浸かってた。

    チェスの描写があまりにも美しく詩的で、チェスを始めてしまった。
    難しいんだけど…。

    ただ唇の毛だけが受け入れられない。
    作者はどうしてそこまで異質なものにしたのか…。

    最後はもちろんのこと、不意に涙が流れる場面が何度かあった。
    何気ないところで。

    あぁ終わってしまった。

  • ミリオンセラー「博士の愛した数式」からの流れを感じる作品。ただ、私には感傷的な文体が(古典的な)文学作品っぽ過ぎて、今一つのれなかった。
    相手の棋力が低くても必ず美しい棋譜を残すというのを読んで、相手がヘボな手を指しても、わざとチェックメイトを見逃して手加減するのか? それで美しい棋譜が描けるのかなどと疑問を感じてしまう自分が野暮なのか?

  • 唇が閉じられたまま生まれ、大きくなることを怖れ、小さな身体のままチェス盤の下で美しいチェスをさすリトル・アリョーヒン。
    閉じ込められたままにそれを受け入れる人々は、静かで哀しく、いまにも消えてしまいそう。小川洋子さんの独特の世界観に満ちた小説だった。
    チェスのことはなにもわからないけれど、美しい棋譜が編み出される様子は魅力的。
    リトル・アリョーヒンは幸せだったのかもしれないけれど、最後までそうは思えなかったし、インディラもマスターもミイラもとても切ない。総婦長さんの生命力ある存在が救いに感じた。小川洋子さんの文章は本当に美しい。

  • 小川洋子ワールド全開!最後は涙がでました

  • 小川洋子の書く「才能のある人」にいつも胸が詰まってしまう。その人より優れたものが、必ずしも全ての人に迎合されるわけではないことを、静かに突きつけてくるからだ。
    彼の小さい体、毛の生えた唇、マスターとの関係を、小川洋子の目を介さずに見て愛すことができただろうか、と不安に駆られる。
    あるいは、同じ布巾を洗わずに使う老婆を、鳩を肩に乗せた少女を、キャリーバッグを引く多弁な老人を。
    優しくて静かな目を持ちたい、と思わずにはいららない。

  • またもやタイトルで選んでしまった。後悔はないけど・・ガラスの人生を生きる人々を描くのが好きなのだろうか。辛そうなことを好む人々を描くのが好きなのだろうか。もっと平凡だけれど痛くも辛くもない人生を歩むことは物語にならないのだろうか。
    チェスの場面は緊張感も戦術の詳らかさや宇宙をふくめた浮遊感も一読の価値ある。
    インディラを写真を思い出した。

  • チェスだけの人生で最後も人形の中で死んだ彼のように一生続けられることがあったらいいな。

  • チェスをモチーフとした、ちょっと摩訶不思議な幻想小説?
    比較的、人気小説なのだけど、読むのに手間取ってしまいました。つまり…あまり好みではなかったみたい。

    ずっと気になっていた本をやっと完読。
    のわりに…読後感はいまいち。
    大きくなり過ぎて、デパートの屋上から降りれなくなった象のインディラ。
    少年にチェスを教えた廃車バスで暮らす男。やはり大きくなり過ぎて、バスの中から出られなくなった通称マスター。
    少年の妄想から生まれた、壁に挟まれた少々ミイラ。
    大きくなることを恐れ、11歳のまま成長が止まった唇に毛の生えた少年、のちのリトル・アリョーヒン。
    文学風な流れが、ちょっと疲れました。
    ストーリーの流れは自然ではあるけど、いまいち付随するエピソードが必要なのかどうなのか…ちょっと私には響くものがありませんでした。
    2016.08.13

  • 『 刹那、ため息がだらしなく開かれた唇から漏れた』

    私をこの作品に出会わせてくれたことを、チェスの神様に感謝したい。

    言葉はいらない。全ての物語はこの本の盤上ならぬ盤下に記されている。

    尊い作品でした。ありがとうございました。

  • 唇が閉じられた状態で生まれ、術後の唇に脛の皮膚を移植された少年が主人公。歳をとるにつれてその部分から脛毛が生えてきて、揺れたりもつれたりする描写にわたしはどうしても嫌悪感を抱いてしまう。美しいチェスを刺せるのに、力を発揮出来るのは盤下にいる時だけ。だから身体を縮こめリトル・アリョーヒンの中に入って人形を操るにはぴったりだった。彼の心の支えである、象のインディラやチェスのマスターや少女ミイラに共通するのは、みんな「孤独」だということ。読み進めるうちに、うつらうつらと夢を見て、海底やチェスの盤下のような暗闇の中に引きずりこまていくような気がした。

  • まさに小川洋子ワールドという感じのお話。
    しずかで、透明なことばによって紡がれるチェスの世界。

    チェスは大まかなルールしか知らなかったけれど、美しい戦いというものを見てみたいと感じた。

  • チェスの才能に目覚めた少年のサクセスストーリー…ではないことはわかってた、なんせ小川洋子だ。
    インドゥラ、マスター、ポーン、ミイラ…リトル・アリョーヒンを形づくる出来事の数々。日陰のような優しさと、はっとする生々しさ、残酷さのギャップに目眩がする。
    その先にあったかもしれない幸福な未来よりも、この結末がしっくりきてしまった。

  • 唇が閉じられたまま生まれた少年は、手術によって唇を造られる。無口な少年は、ビルに挟まれて死んだという噂になった少女ミイラと寝る前に話すときだけ滑らかに喋る。ある日、バスで暮らす大きな身体の男性にチェスを教えてもらう。少年はバスで、マスターと猫とチェスをすることが楽しみだった。

    こういった始まりをする物語。
    いつものように小川洋子さんのひそやかな世界がはじまる。
    物語の概要を書いたけれど、読んだことのないひとにはよくわからない話に感じられるかもしれない。でも、このつかみどころのないボヤッとした雰囲気こそ小川洋子さんの世界とも言える。

    「猫を抱いて象と泳ぐ」というタイトル。
    この不思議なタイトルも魅力的であり、本文を読めば意味もわかる。
    タイトルからして小川洋子さんの世界が確立されていると感じる。

    チェスというゲームをわたしはよく知らない。
    ビショップだのルークだのいう言葉は聞いたことがあり、チェス盤や駒も見たことはあるけれど、それらの駒をどのように動かして愉しむものなのか知らない。
    この本を読むまでチェスを知らないことを何とも思ったことがなかったけれど、読んでみてチェスの面白さを知らないことをとても残念に感じた。
    チェスはゲームであるけれど、人生でもある。

    少年はマスターの死を見て、大きくなることは悲劇だと考える。大きくなりたくないという少年の気持ちのまま少年は少年の姿のままに大人になる。
    少年の心には、唇に奇形を持っていたことやマスターの死、猫を救えなかったことなど多くの消えない傷を刻みつけられている。
    その傷を持ったままチェスに人生を賭ける。

    物語はゆっくり穏やかに進むのだが、終わりは不意にやってくる。
    切なく物哀しいものではあるけれど、それだけではないやさしさが残る。

    慌てるな、坊や
    この言葉はマスターが繰り返し少年にかける言葉だ。
    この言葉ひとつにマスターのやさしさと少年への信頼、いつでも見守っているという気持ちが表れており、読者にまであたたかい思いが伝わってくる。

    巻末の山崎努さんの読書感想も素敵だった。

    チェス、今からでもルールを教えてもらいたいなと思わされた。

  • 大きくなることを恐れて成長を止めてしまったチェスの名手の話。

    小川さんの書く小説は、とても綺麗。

    物語の風景がありありと目に浮かんできます。
    そのどれもがしんと静まり返っていて、物哀しさを含んでいるのに、悲劇ではないんです。

    大きくなってデパートの屋上から降りられなくなって一生を終えた象も

    肥満で死んでしまい、住居であるバスを取り壊さなければ、遺体を取り出せなかった主人公が大好きなマスターも

    チェスの差し方を忘れてしまった、主人公にとってとても大切な老婆令嬢も

    一つの過ちで、一緒に過ごせなくなってしまった主人公と少女ミイラも

    そしてそのミイラと再会することもなく、チェス差し人形の中で死んでしまった主人公も

    涙がとまらないくらい哀しいのに、どこかに優しさを含んでいて
    「愛おしい」という言葉がぴったりくるような物語です。

  • 大きくなりすぎてデパートの屋上から降りられなくなった象。
    太りすぎてバスから出られなくなったマスター。

    少年は大きくなることに恐怖を感じ、十一歳の時に体の成長を止める。

    無口な家具職人である祖父と孫の成長を喜び生きる祖母に、弟と二人育てられた少年は、チェスを通じて世界とつながっていく。
    チェス盤の下に屈みこんでチェスを打つ少年。

    大きくなることを怖れながら、小さな場所に屈みこんでチェスを打つ。
    そんな彼の指すチェスは、美しい詩のようであり、マスターと過ごす時間は穏やかに調和の取れたものだった。

    この辺の文章は実に小川洋子的で、美しい世界が、少しのずれも許さない、静かに張りつめた文章で描かれている。

    ところが後半、少年は場所を変え、混沌とした世界の中で美しいチェスを指すことになる。
    この辺りの文章は、いしいしんじを読んでいるかのよう。
    調和というよりも、無垢。

    ごくごく薄いガラスに記されたような小説。
    力をこめたらぱりんと割れてしまいそうなので、そうっとそうっと大事に読んだ。

  • 他者に対して距離を保ちつつ,自分のゆずれないラインに関しては一歩も退くことなく貫く強さ,自分の選んだ人生をまっすぐに生き抜いた主人公の潔さと不器用さ,「最強より最善」を目指した美しさと調和への渇望は,無防備なくらい純粋で,ほのかな哀しさを感じます。しかし,一つ一つの出来事を粗末に扱うことなく受け止め,受け入れ,生き抜いた彼に,同情ではなく敬意を感じます。好敵手の令嬢に,手ほどきをしてくれたマスターを褒められたことは彼の人生の勲章だったろうなと思いました。

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猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)の作品紹介

「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。

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