街の灯 (文春文庫 き 17-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167586041

感想・レビュー・書評

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  • 今とは違う、少しゆったりとした空気を感じる小説。
    登場人物の上品な言葉遣いのおかげかもしれない。
    その中でベッキーさんはとても颯爽と映る。

  • 昭和初期、まだ、明治維新前の大名家や華族家、などの出自の家柄が、上流階級だったんですね。
    別世界のお大尽の暮らしを読むのは楽しい。
    暗い時代とは言うけれど、ここに描かれる銀座も軽井沢も、溢れかえる平民に蹂躙される前の“古き良き佇まい”に思える。
    作品の種類はミステリーですが、そういう舞台を読むのが好きです。

  • 「街の灯」 北村薫 昭和初期を舞台に社長令嬢とお付の運転手ベッキーさんが日常に潜む事件を解き明かしていくシリーズ。こちらが一番最初のもので、花村家のことや、上流社会における華族の序列や新興企業家との関係などが明かされている。士族出身で軍人であった祖父の代から財をなし、財閥系の商社の社長として手腕をふるう英子の父親は、先進的な考えの持ち主であったのか、当時行動を制限されることの多かった上流社会の令嬢である英子に、別宮という新たな女性運転手をつけた。英子の学友である有名大名華族の令嬢に比べれば、英子は随分と自由な身であったと思うが、これについては、英子の父親の(はっきりとした記述は無いものの)、英子の聡明さを認め、女であっても見聞を広め、能力を生かせる生き方を歩ませようとしている意志を感じさせる。経済界の一雄である父が軍国化に異論を唱える首相を擁護する発言をして云々、この時代の大きな流れとそれに戸惑う人々、自由の無い時代に向かって暗雲立ち込める時代背景を感じることが出来る。

  • 柔らかく、優しいミステリーです。

     FANである「DIRTCOOL」誌に連載を持つ、絵描き屋たまさん。
    ブクログでのたまさんのレビューが気になり、初めて北村さんの著書を読んでみました。

     舞台は昭和7年。暗い時代と言われますが、物語は緩やかな上流階級で進んで行きます。ミステリーではあるんですが、穏やかな流れに少しホットします。

    全3部作の構成と伺っておりますので、花村英子様と別宮(ベッキーさん)が、どのように関わって行くのか。別宮は一体何者なのか。とても楽しみでございます。ホホホ・・・

  • こういう心持ちの良い登場人物たちが多く出てくる小説というのは、読んでいると心が洗われる気がする。格式高い、矜持を持ち合わせた、なんといったらいいのか…こういう時代があったんだなあ。
    多くを分かっていながら決して前に出ないベッキーさん、令嬢としての立場と責任を理解しつつ、戦争に向かう時代に疑問を抱く主人公。
    カバーイラストも上品かつ優美で内容に合っている。
    華族制度の廃止後、英子嬢はどのように生きていったのだろう。

  • 昭和七年の東京が舞台。
    時代の空気・東京の空気・上流階級の空気。
    そういうものを味わうのに最適な一作。

    個人的には昭和七年という時代設定から、この後主人公英子はどのように生きていくのかが気になるところ。もっとも、作者がその時代まで描くのかという疑問はありますが。

  • お嬢様の謎解きといったお話3編。使用人のベッキーさん(本当は別宮さんという)が来て、どうしたことか主人公の英子さんは推理を働かせるようになる。私立女学校G院のお嬢様たちだなと思われる会話がレトロだ。今の銀座は風情もなにもない。昭和初期の東京は今よりも斬新で魅力的なものに満ちていたかもしれない。とても楽しかったのでこのシリーズを追いかけてみる。

  • 北村薫さんの作品はこれが初めてでした。時代が昭和7年ということもあるかもしれませんが、どの登場人物の言葉も、一言一言が丁寧に発せられている印象を持ちました。適当に言い放った言葉は一つもないというか、人と人の間にあるべき間合いを誰もが心得ているというか。今よりも女性蔑視や「こうあるべきだ」という固定概念が強かったことも淡々と描かれていますが、それでも、その中にある真摯な姿勢や振る舞いは今も共通して美しいものではないかなぁ、と感じました。続編も読んでみようと思います。

  • 読み終わって、あ、ミステリやったんや!と。昭和初期の、しかも上流階級のお嬢様。英子自身は、大企業の社長令嬢で、同窓の華族のお姫様方とは違うて認識だけども。華やかであることに代わりない。彼女を取り巻く時代も、明るく華やかな感じで、そんな中、起こる事件を。当事者ではないけれど、(間接的?)目撃者として、多分それまではあまり疑問に思わなかったことが、新しく運転手として来た、ベッキーさんに話すことで見え方とか考え方が変わってきた。と言うような。

    そんな、「謎解きです!」て具合じゃないけど、さらっと軽く読める。
    それよりも、周りの景色の情景描写の具合が、好きだなぁと思った。

  • 3~4年前の読了

    著者お得意の「日常の謎昭和初期ヴァージョン」短編としての構成、トリック、真相へ至るロジックなどなど、熟練の技モノで間違いなし。

    このシリーズの特徴は当時の街並、風俗、アッパークラスのお嬢様の日常を、丁寧な取材で綺麗に描き込んでくれてるところ、そろそろ1世紀になろうかとう昔日の日本に強く惹かれます。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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