なにも願わない手を合わせる (文春文庫 ふ 10-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167591045

感想・レビュー・書評

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  •  写真で空間を切り取って表現するのと同じように、五感が感じられる文章で、この感性には敬服してしまいます。
     身内を亡くしたあとだったので、著者の四国巡礼と死を受け入れていく心の動きに共感しました。偶然見た蝶の最期の瞬間を書いた一遍「死蝶」。死んだ蝶の死骸の下に白色化した蝶、それを両親に重ねたこの作品が感動的。
     いづれかまた再読したい作品。

  • 藤原新也氏の本はかなり読んできたが、しばらくぶりに読みました。

    文のトーンは全著作を通じるものがあります。それに同調することができれば藤原ワールドにひたれます。

    心に落ち着きをもたらす一冊です。

  • 手を合わせて祈るということは、自分が自分に触れ、自分が自分と手をつなぎ、自分の中に棲むいろんな人たち(亡き祖父母等)を呼び起こし、また宥める行為なんでしょうと、この本の写真とエッセイに触れて感じました。

    文庫版の表紙のお地蔵さまの写真は静謐ですばらしく、これを本棚に飾るだけでも買う価値があると思います。

  • 文章じょうずだなぁ… 蝶の話が印象的だった。
    まだごく身近な死を体験してないために、直に響いてこないのが残念(幸せなことだけど)
    死って神聖なんだ。すごいことなんだ。でも実際起きた時そう感じることができるかは自信ない。

  • ざわざわしている時に読むと心がすんとする。受験の時試験前に読んでたのが思い出の本です。

  • 前半はいいんだが後半薄い。

  • 死後の世界は信じないけど、死との向き合い方は人それぞれに尊敬に値する。

  • 何冊か読んだ氏の作品の中で最も「和」が凝縮されている(私的に)のがこちら。四国という霊場を舞台に著者が目にしたこの世とあの世の交錯する一瞬を書いている。中に差し挟まれた写真も良い。

  • 生き方そのものを変えてくれた一冊

  • 藤原新也(1944年~)氏は、現・北九州市に生まれ、東京藝大中退後、インド、東南アジア、アフリカ、アメリカなどを放浪し、写真・エッセイ集を発表。1972年発表のデビュー作『印度放浪』は青年層のバイブル的な存在となり、1981年の『全東洋街道』で毎日芸術賞を受賞、1983年の『東京漂流』は、大宅壮一ノンフィクション賞及び日本ノンフィクション賞に推されたが、辞退した。同年に発表された『メメント・モリ』(ラテン語で“死を想え”)は、隣り合わせの死と生を考えさせる代表作である。
    私にとって藤原氏は、三指に入る好みの(写真などを含む広い意味での)書き手・表現者で、これまで、上記の作品のほか、『日々の一滴』、『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』、『たとえ明日世界が滅びようとも』、『祈り』等、数々の作品を手にしてきたが、本書は既に絶版になっており、たまたま新古書店で見つけて入手した。
    本書は、59歳で亡くなった兄の供養のために四国霊場八十八ヵ所を巡り、そこで出会った出来事や考えたこと、及び、それまでの人生や旅において接した数多くの「死」についての想いを綴ったもので、2003年に出版、2006に文庫化された。
    藤原氏は、インドやチベットを長く放浪し、父と母が亡くなった際にも四国巡りを行っているというが、今回の旅の途中で、「祈る」という行為について、それが、愛する者の供養のためであれ、煩悩や執着心からの解放を望むためであれ、畢竟、「○○のために祈る」、即ち自己救済の行為の一つであることに気付き、「自己救済の祈りから解放されたいと思うようになった」と書いている。(その違和感は、これまでずっと抱き続けていたものなのだろう)
    そして、青龍寺(三十六番札所)で、両親に連れられた幼女の、無心にして、なお全感覚で目の前の世界を感じているであろう「祈り」、大人の「祈り」とは分かち難い「(自己救済の)願い」を一切含まない純粋な「祈り」に出逢い、本来あるべき「祈り」の姿とは、「なにも願わない。そしてただ無心に手を合わせる。」ということだと思い至る。
    更に、数々の野辺の地蔵を見るうちに、旅を終えて俗世間に戻ったときに、どのような他者の不安や心の荒廃をも受け止め得る「海のような自分になりたい。」と祈るようになるのである。
    本エッセイ集に書かれているのは、藤原氏が向かい合った、人の死や別れに関わる個別の場面であるが、我々は、その一つ一つを読みながら、他者の生や死といかに対すべきかを、自ずと考えることになる。。。
    時を置いて再読したいと思う一冊である。
    (2022年11月了)

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著者プロフィール

1944年福岡県生まれ。『印度放浪』『全東洋街道』『東京漂流』『メメント・モリ』『黄泉の犬』『日本浄土』『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』『死ぬな生きろ』『書行無常』『なみだふるはな』など。

「2022年 『若き日に薔薇を摘め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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