ハルモニア (文春文庫)

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著者 : 篠田節子
  • 文藝春秋 (2001年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167605049

ハルモニア (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ハルモニア。
    それはまるで世界をすべる黄金率にも似た調べ。
    神聖で崇高な侵しがたい神の旋律。
    凡庸なチェリスト東野は音楽療法のスタッフとして通った高原の精神医療施設で、凄まじい才能を数奇な運命を秘めた一人の浅羽由希と出会う。
    東野は彼女の秘めたる才能を引き出そうと悪戦苦闘の個人レッスンを開始するが……

    超感覚ホラー。
    サスペンス。
    人間ドラマ。
    この小説を飾る言葉はあまたあれど、一番しっくりくるのはやっぱり音楽小説だろう。
    そう言うととかく高尚なものを思い浮かべがちだが、登場人物の苦悩や懊悩、葛藤が非常に生々しくリアルに迫ってくるせいで、どっぷりのめりこんでしまう。
    血肉が通った饒舌でありながら流麗な描写は、とくに演奏シーンでその本領を発揮し、光の渦を巻いて読者をめくるめく翻弄する。
    二十年間音楽に人生と情熱を注ぎ続けたチェリストでありながら、凡庸な秀才の域をでぬ東野は、重い障害を持ちながらけっして自分が叶いえぬ「天才」由希に激しい羨望と劣等感を抱く。
    が。由希は紛れもなく音楽の天才でありながら、同時にコミュニケーション不全で、東野とも殆ど交流が成り立たない。
    困惑する東野だが、一対一のレッスンを辛抱強く続けるうち、言葉よりも多弁な音楽を通して二人は次第に互いへの信頼を深めていく。

    凄い、とにかく凄い。
    音楽という神にして悪魔に魅入られ破滅した男女の物語にもとれるのですが、由希を背負って砂浜を歩く東野の姿には、「ハルモニア」を聞いた者だけが得る至福を感じられ、二人にとってどうするのが一番よかったのか、これでよかったのか、なにが幸せでなにがふしあわせだったのかわからなくなります……。

    天才と凡才。
    聖と俗。
    虚構と真実。

    さまざまに反発し対立する要素が絡み合って重層的な構造を生み出す物語の結末は、ぜひあなたの目で確かめて下さい。

    願わくば砂浜を行く二人の耳に、今もハルモニアが聞こえんことを。

  • 脳に障害を負った女性にチェロを教えることになったチェロ奏者の主人公。彼女の天才的なチェロを目の当たりにして自分の才能のなさを痛感させられる。それと同時に彼女自身の音が出せるようあの手この手で導いていく、彼女が望んでいるかわからないが。
    主人公も含め彼女を取り巻く人たちが自分のエゴを彼女を通して実現させようとするのにうんざりする。それぞれが彼女のためと言いながら自分の夢を託す。それとサイコキネシスが出てくるのに興ざめ。

  •  脳に障害を持つ女性が音楽に異常な才能をみせる。サヴァン症候群「知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す」(wiki参照)これを病気と片づけて無視することはできない。それほどに常人では達成できない才能を示す女性が登場する。現実では病気とワンセットになって宣伝されることが多いためにニュースねたやTVの特番などで注目されるに程度だ。この小説のラストも悲しくやるせない。

  • 篠田節子の大好きな(?)オカルト物。人智を超えたレベルの音楽の才能と念力という2つの超能力を持った少女をめぐるいろいろ。

    同じようなテーマで「カノン」という作品があり、いずれもチェロが題材になっているので、おそらく著者は以前にチェロをやっていたのだろうということが推測される。「カノン」に比べると、チェロにまつわる文やバッハの曲などのウンチクが、明らかに必要以上に多いし、その一つ一つにトゲがあって厭味ったらしいので星一つ減点。

    また、オカルト系によくある話だが、障害者や脳に対して、夢を持ち過ぎである。その辺はオカルトということで流すが。

    全体には一筋通っていて、読みやすいしのめり込める作品となっている。主人公が読者を何度か裏切る辺りもスリリングで良い。同じく長編の「カノン」で気になった、訳の分からないイベント(不倫など)も無く、適当なボリュームであった。

    ところで、女性作家の作品って、まず事後の情景を描いて、途中や最後でそこに到達するという作品が多いのだけど、小説の書き方教室みたいなのって有るの?この作品では、その部分が蛇足という感じしかしなかったのだけど。

  • 2013.08.08 読破。
    Kindleにて。

  • チェロひきが、脳に傷を持つ女性に施設で教える。
    どんどん上達し、演奏会を開催する。
    集中すると周囲を傷つけることがあるのを理解していなさそう。

    音楽会の裏表がわかる。
    最後は、文学だから仕方がないのだが、幸せをつかむことができたのだろうか。人生と住んでいるところからの逃亡が幸せでは悲しい。

    脳と音楽の関係が、もう少し深掘りしてあるといいかもしれない。
    脳波と体温の関係とか、血中の諸物質の濃度との関係とか、肺での酸素の出入りとか。

    解説を石堂藍が書いている。ファンタジー評論家とのこと。
    解説ももう一歩、もう二歩、突っ込みが欲しいかも。

  • 賛否両論あるけれど。

    大好きなのに変わりはない。
    ドラマのDVD出してください。

  • ドラマの主題歌を思い出して読んでみた。
    ドラマ版ではショッキングな映像ばかりを覚えているのは
    年齢のせいかもしれない。
    荒々しさはなくゆっくりと、でも確実に加速していく物語だった。
    音楽を題材にしているが、内容はひとりの女性に操られた
    数奇な運命を辿る話という印象。
    しかし由希の感情が明確に言葉として記されていない分、
    彼女の能力を際立たせているのかもしれない。

  • 読むのは2度めだが、やっぱり面白い。ぐいぐい引き込まれてしまう。

    一番は、自分の平凡な日常を崩していく音楽家ののめり込み方。それぞれの人間がみにくい部分を持っている点もハマる。女の子の現象も、超能力とかポルターガイスト的なことだとって感じない。
    単純に面白い。

  • 脳の外科手術中に事故で脳の一部を失ってしまい、言葉によるコミュニケーションがとれず、当然普通(何を持って普通というかという問題はあるが)の生活が出来ず、施設に預けられている由希。

    失った部分を脳に他の部位がカバーしようと成長する。

    その成長する部分が音楽をつかさどる部分であることから、チェロを教えたところ、常人では考えられないほどの才能を発揮する。

    それとともに、他の才能も発達してしまい、他の人を傷つけることを避けられないようになる。

    チェロを引く場面では、多分専門的な技術用語が出てきて、これって難しいんだろうなという雰囲気だけはわかるけれど、本当はどういうことを言っているんだろうと思いながら読んだ。

    それはそれとして、こういう展開でハッピーエンドにするのは、難しいだろうと思う。

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