白仏 (文春文庫 つ 12-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167612023

感想・レビュー・書評

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  • 他人の走馬灯を見ているわけだが、これは私の走馬灯なのではないかと錯覚する感覚に陥る。そのくらい読者自身が『死』をすぐそばに感じることができる。文章自体の読みやすさやストーリーの展開はもちろん良いのだが、構成のおかげもあって何度でも無限に読み直せる形になっているところが良い。

  • 生きることと死ぬことを、本当に興味深く考えた。
    静かな感動がずっと残る。
    すごくいい。

  • つきまとう死とどう向き合うかを描いた作品。
    ある種の残酷さや死との向き合い方といった辻仁成の原点を感じられる一冊。
    和というよりは、オリエンタルな雰囲気。
    これがフランスで評価されたのはスゴイ。

  • 生を全うした者すべてに与えられるのが死。
    死は無ではない。
    死は深い宇宙。

    死=それは自分が生きてきた証。

  • 筑後川下流の島に生まれた稔は戦前は刀鍛冶、戦中は鉄砲修理、戦後は海苔の加工機製造などをしてきたが、戦死した友人や亡き初恋の人、家族の魂の癒しのため、島中の墓の骨を集めて白仏を造ろうと思い立つ。明治、大正、昭和を生きた著者の祖父を描く芥川賞受賞作。1999年仏フェミナ賞外国文学賞日本人初受賞作。緒永久(おとわ)に会いたい。

  • 主人公の半生を描いた作品。
    辻さんのお祖父様のお話。
    運命に翻弄されながらも
    力強く自分の人生を生きる主人公に
    共感しました。

  • 仏・フェミナ賞を受賞。現時点(2007年)での最高傑作か。実在の祖父の歴史を辿りながら、日本の近代史を一つの視点で総括したような手腕は素晴らしい。

  • 【2007/3/3】
    登場人物の言葉が、嫌味なく心に沁みた。
    心の葛藤とそれに対する答が次々に提示される小説は、時に読者には押し付けがましく思えたり、
    空々しさや、物語る方向性を無理やりに示唆する強引さが感じられることがある。
    しかし本作では、主人公稔の心の動きに自然と寄り添うことが出来る。
    それはきっと、稔の抱く疑問や見出そうとする答が、誰しも一度は考えた経験のある事柄だからだろう。
    人はなぜ生まれ、そして死して何処へかいかん・・・ということ。
    そしてもう一つは、稔の生き方にあるべき人としての姿を見て取れるからではないだろうか。
    決して長くはない単行本290ページで、長い時間を描き心象描写は拡がりをみせ、
    それは無抵抗になった読者の心と一体になる。
    稔の心が辿ってみせた筋道に寄り添いながら読み進み、小説の終焉と共にその筋道は稔だけの
    ものとなり、私は私だけの筋道を見出したいと思わされた。
    そんな読後感だ。とても穏やかで心地よい。
    なお、稔は辻さんのお祖父様がモデルだとのこと。
    とても丁寧な文体で大切に書いたのだろうことが窺える。

  • 食い入ってしまった。ページをめくる手が止まらなかった。

  • 骨で白仏を建立するお話。辻ワールドらしからぬ傑作。この作品で辻さんを見直しました。

著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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