ダナエ (文春文庫 ふ 16-5)

著者 :
  • 文藝春秋
3.60
  • (25)
  • (68)
  • (64)
  • (13)
  • (1)
本棚登録 : 481
感想 : 51
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167614058

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 宝石のようなきらめきの、美しい一冊。

    死を意識した作品ともいわれているが、
    なんとも言葉にできないような、はかなく美しい作品に仕上がっている。

    テーマが特にファンタジックなわけでもなく、
    しっかりと日常が描かれているのに、
    ここまで透明感のある文体はどうしてなんだろう?

    この人の作品がもう読めないこと、その事実が切ない。

  • 亡くなる前、最後の短編集。
    出張帰りに本がなかったので静岡の駅で購入、
    東京に着くまでに読み終えました。
    ダナエ、というと私はクリムトの絵が一番に浮かんでしまうんですけど
    ここではレンブラントの方がフォーカスされてました。

  • ハードボイルド、切ない中編小説です。ウイスキーにぴったり!秋の読書にぜひ。 by ulis99226

  • 藤原さんは、長編のが個人的に好き。
    いつものハードボイルドっぽさはなく、さっぱりとした短編集。

  • 藤原さんの小説は、男のロマンが感じられるハードボイルドで、それが鼻につかず心地好い
    きっと文章が美しいのでしょうね そして登場人物に好感が持てる
    今回は短編だったので、あっという間に読んでしまう読みやすさ
    ダナエというのはエルミタージュ美術館にあった破壊された絵のことで
    その絵のもつ物語と関連しながら実際の事件が解決されようとするのだけれど・・・
    推理小説なので、いや、どんな小説は読んでも結論は言っちゃいけないですね
    稚拙な言葉ですが、おもしろかったです

  • やっぱり藤原伊織は面白い。

    みんな仕事とかで抜群の力を発揮してた過去をもちつつ、何かのきっかけで斜にかまえるようなスタンスの生き方になって、今は世の中を達観しつつハードボイルドに暮らしてるっていう主人公だよなあ


    厨二病かもしれんが皆かっこいいんだよな

  • 大好きな作家です。
    本当に惜しいことに、2007年に既にお亡くなりになられております。
    この作品は、亡くなられる直前に出版された短編(中編)集です。
    解説を、これも好きな小池真理子氏が書かれております。
    この解説もまた良い。
    これだけで一編の小説というか、弔辞というか、そんなかんじになっております。
    なにかと縁のあるお二方で、伊織氏が亡くなる前に、『デート』と称して二人で飲みに行っていたということです。
    なんだかあまりにも美しすぎて泣けてきてしまいました。

    で、肝心の作品。
    なんとなく静かな語り口のなかで、大人のオトコの激情が、かなり抑えた文体で描かれております。
    どうしようもない状況を、それでもグッと我慢して、だけどそれぞれの行動で自分の哲学を語る。
    う~~~ん、渋い!
    ハードボイルドの原点ですね。

    成功した画家が個展に展示した絵を目茶目茶にされ、さらにまた脅迫が…。
    それを何故か画家は軽く受け止め、更に何か考えがあるようだが、画家には何があったのか…?
    『ダナエ』という聞きなれない言葉は一体何なのか?

    複雑な関係の姉と弟と、彼らに付きまとう影。
    『まぼろしの虹』とは、何なのか?
    母親の不倫相手のオトコの別のオンナの背景とは…??

    『水母』。昔のオンナの展示会に立ち寄った元敏腕CDの選択とは何か?

    それぞれ、渾身の作品群です。
    この短編集と同じ系統では稲見一良っていう、やはりお亡くなりになられた方の作品があります。
    この人たちみたいな足跡を遺したいものです。
    合掌。

  • 世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。

  • 「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母」の3篇からなる短編集。
    いずれも長編で読んでみたかった。
    巻末の小池真理子氏による解説が、解説と思えないほど心に響く。

  •  収められているのは「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母(くらげ)」の中篇3篇。
     タイトルとなった「ダナエ」の主人公・宇佐見は萩原朔太郎の詩の一節に象徴される「何物をも喪失せず、同時に一切を失ってしまった男」として描かれている。人もうらやむ成功を収めた今も、過去を引きずりどこか世捨て人のような生き方しかできない男。伊織さんは溢れんばかりのロマンティシズムとリリシズムをもって描ききっています。主人公の想いに思わず涙してしまったほどです。
     こうした男のリリシズムは、この本に収められている「水母(くらげ)」の主人公にも共通しています。昼日中から酒場の椅子に腰掛け酒を飲んでいる男、酒を愛し、博打を愛し、考え方は堅苦しく礼儀正しいくせに放蕩を愛する男、仕事にはけっして妥協しないくせに私生活には逸脱を愛する男。自堕落に見えても矜持だけは持ち続けている男。直木賞を受賞した伊織さんの名作『テロリストのパラソル』の主人公であったアル中のバーテンダー・島村もそうでしたが、とにかく切ないほどにカッコイイのです。

全51件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤原伊織の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×