小さなスナック (文春文庫 な 36-10)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167622107

感想・レビュー・書評

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  • 先日リリー・フランキー氏は保護欲をくすぐるタイプなのでは、と思った発端はこの本だ。
    ナンシー関が好きだった。まだ中学生だった私は氏の書く文章にさっくりとやられ、お小遣いをためては著作を購入していた。今にして思えばちょっと心配になる中学生だ。だが後年よく言われていたとおり、「テレビの中の人が時折発する違和感」について、彼女ほど的確に、そして明快にすらりと書く人はいなかった。今も、そういう人は現れていない。
    そして、週刊誌以外に楽しみにしていたのがクレアの対談だ。リリー氏に具体的に興味を持ったのも多分この対談でだった。ナンシー氏は数年間他の人とこのコーナーを続けていて、最後を飾ったのがリリー氏である。私の印象のみの話だが、前の二人(大月氏と町山氏)との対談の時は、ナンシー氏は微動だにしなかった。大人同士で容赦がなかった。まさに動かざること山の如しといわんばかりにぶれず、相手が多少走りすぎてもおもねることなくきっぱりと否定し、大月氏に至っては最終回で「毎月閻魔様の前に座らされているようなもの」との名言すら残している。そんなところがかっちょいいナンシー氏であったが、この「小さなスナック」ではなんとなくソフトなのだ。
    ナンシー氏よりも年下の男子であるリリー氏がフニャフニャとくだらない話をしていて、それにナンシー氏が乗ったり、突っ込みを入れたり。リリー氏は大人になりきれていなさを全開にしている人だと思っていたので、常識人でぶれないナンシー氏がどう思うのだろうか、下ネタ嫌いだし…とちょっと心配していたのだが、この穏やかさ。弟妹のいるお姉ちゃんであるナンシー氏は、ふらふらしている生涯男子の一人っ子・リリー氏を「しょーがないねえこの人は」の穏やかさで見守り、リリー氏はリリー氏で、先輩であるナンシーに尊敬を抱きつつ、下ネタを控えめにしている(でも少しは出すあたり自分を崩さない)。まるで親戚の集まりで、久しぶりに会った従姉妹のお姉ちゃんと男子小学生のようだ。お姉ちゃんは小学生のくだらないのも心底面白がって聞いてくれる頭の良い人で、男子小学生は嬉しくて、甘えて次々と話しかけているような。そんな妄想すらしてしまった。
    なんだか前3作に比べ、ほのぼのとした空気の流れる対談集で、好きだ。

  • ゼロ年代初頭、『クレア』に連載されたナンシー関とリリー・フランキーの対談をまとめたもの。

    ほんとうはまだ連載がつづく予定だったそうだが、2002年7月にナンシー関が急逝したことで幕となり、2人の唯一の対談集になってしまった。

    対談の中では、2人ともまだ30代。
    ナンシー関が30代の若さで亡くなったことに改めて気付かされ、しんみりとした。

    私はリリーの〝遅筆伝説〟について知りたくて読んだのだが、それ以外の話も総じて面白く、けっきょく全部読んでしまった。

    20年近く前の連載対談だから、話題が古くなっている点は随所にある。それでも、いま読んでも十分に楽しめる。

    『小さなスナック』というタイトルのとおり、スナックの常連客同士が店で会話しているような趣の対談集。
    どうでもいいことばかりが語られ、微塵も「ためにならない」本ではあるのだが、2人の丁々発止のやりとりを味わうだけで面白い。

    私の目当てだったリリーの〝遅筆伝説〟は、キョーレツなエピソードがたくさん出てくる。
    対談の一回分が丸々「〆切話」で占められている回まである。

    いくつか引用してみる。

    《ナンシー (リリーが)締め切り守んないのは有名だよね。私も早いほうじゃないけど、何回か同じ雑誌で仕事した時に「私が一番遅れてますかねえ」って様子うかがうと「いや、リリーさんいますから」って言われたことある。あと「リリーさんの連載を担当した女編集者は生理が止まる」っていう噂も聞いた(笑)。
    リリー 「人が信じられなくなった」って台詞を吐いて去った担当者もいましたね(笑)。》38ページ

    《リリー だけどこの間も、若い女の編集者が延々とファクスで「本当に困ります」とか「こちらがどれだけ困っているか、おわかりのはずです」とか書くわけ。そういう攻撃されると、サラ金に毎日取り立てられてた頃思い出してブルーになる(笑)。なんかもっとクールにやってくれなきゃイヤだ。
    ナンシー なるほど。そういう考え方か。すごい。やっぱり徹底してるわ(笑)。》55ページ

    《リリー 俺みたいに締切りに遅れると、常に非が100パー俺にあることになってて、対する編集者は常に「善意の第三者」みたいに描かれてるけど、けっこう違うんですよ。
    ナンシー 変な人もたくさんいますしね。》61ページ

    こんな遅筆ぶりなのに、リリー・フランキーがいまだに物書きとしても売れっ子であるのがすごい。

  • CREA00/9~02/8掲載~バンドエイドかサビオか・福田和子はすごいテクらしい・インターネット通販でパンツも返品・編集者への恨み辛み・行く世紀来る世紀・顔は可愛くても怖い動物・ポジティブ嫌い・約束の泣き借り物の笑い(テレビの仕込みの反応)・新生活の臭い罠・タキシードはアメリカ産・魅惑のヘアスタイルはアフロ・懸賞旅行は恥ずかしい・書は心の鏡・ビールで乾杯・カラオケ・脇役の無名性・年末恒例・かっこよければエンジン要らない・川魚臭いカレー・マネーの虎の穴・中国はワイルドサイドが面白い・恍惚の耳垢取り・占い興味なし・追悼~ナンシー関がこの途中で死んじゃったんだけど、調べたら虚血性心不全だった。まあ、こうした細かいことを憶えていないとコラムは書けないね。私ったら、すーーーぐ忘れちゃうんだから

  • 1/4飛行機の仲で読了。飛行機と言えば私の中ではナンシー関なのだ。リリーフランキーが初めてちょっとだけいいと思うくらい、ナンシーのことを敬愛しているのが伝わってきてよかった。やぱおもしろいなあ。この人。そしてコラムからは見えない、やさしい人柄ってのもまた。

  • 「ナンシー関」と「リリー・フランキー」の対談集『小さなスナック』を読みました。

    ちょっとハードな本を読んだあとだったので、軽い読み物がイイなぁ… と思い、本書を選択しました。

    -----story-------------
    小1の時、赤痢で隔離された「リリー・フランキー」と、小5の時、水疱瘡をうつして、友達の修学旅行を台無しにした「ナンシー関」が、絶妙な立ち位置から繰り出す伝染病に、カレーに、中国、「福田和子」…。
    苔むす間もなく話題は転がり、思えば遠くへ来たけれど、そこに広がる風景は、ポジティブ世代に贈る妄想と諦念の荒野。
    二人の最初で最後の対談集。
    -----------------------

    外国人のような名前の、個性的な日本人二人の対談集。

    二人の名前の由来も紹介されていました。
    二人とも、長く活躍することは想定しておらず、あまり深く考えた名前じゃなかったようですね。


    久しぶりに声を出して笑いながら読める作品でした。

    でも、面白かったぁ… という印象は強いものの、内容は… と問われると、あまり覚えていない。

    そういう類の読み物なんでしょうが、愉しめたから、まっ、イイですね。
    二人の人柄も良くわかった感じがするし。


    対談毎に、必ず二人のイラスト(消しゴム版画)が載っていました。

    それぞれ、個性的でイイですね。

    この対談は、2000年9月から月刊誌「CREA」に連載されていたようですが、連載中に「ナンシー関」が亡くなってしまったので、2002年8月への掲載を最後に連載は中止。

    本書のラストは「リリー・フランキー」による追悼文となっていました。
    亡くなってから、もう10年近くになるんですねぇ。

  • 他愛ないことを他愛ない路地を経て親密に話している印象。水戸泉の婚約者、東京牛パラダイスオーストリアてバンド、街で占い師に呼び止められ、あんた女になった方がいいよと言われたリリーさん。自分が水疱瘡をうつしたせいで修学旅行にいけなかったクラスメイトにずっとそのことを言われ続けたナンシーさん。アンチのはずの椎名林檎が売れたことへの思い。浜省のマネーって曲。郷ひろみのアーバン三部作がしみるというナンシーさん。死の直前まで続けられた対談だったので、最後の方になると、ああ、もう少しで時系列で行くと亡くなってしまうんだ、という思いを止められなかった。

  • 20181116

  • 二人の不毛だけど、たまに深みのあるお話がおもしろいです。連載中にナンシーさんが亡くなったのを受けて、リリーさんが追悼文を書いていますが、本当にまだまだ続いてほしかったですね。

  • リリー・フランキーと今は亡き、ナンシー関のとっても肩の力の抜けた他愛のない対談(お喋り)集。
    さすがのお二方の何気ない話題からの鋭い考察。かつ小気味良い語り口が楽しい一冊。

  • リリー・フランキーとナンシー関(故人)の世紀末・新世紀対談。何やかや10年以上前のことで、彼らとはほぼ同世代の筈なんだけれど、今一つ話題に乗ることができなかった。書名どおりのスナックの片隅で、浮世の不満を語る彼らとは価値観が違うんだと認識させられたら、途中から読むのが苦痛になってきた。義務感だけで読了。ナンシーが10年後も消しゴムを彫っているかもしれないというコメントに、人生何が起こるか分からない無常を感じた。でも、ナンシーのテレビ消灯時間シリーズとかは読んでみたいと思う。

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著者プロフィール

1962-2002 青森県生まれ。法政大学中退。消しゴム版画家。雑誌のエッセイや対談でも活躍中。著書に『ナンシー関の顔面手帖94夏』『信仰の現場』『小耳にはさもう』ほか多数。

「2014年 『語りあかそう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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