センセイの鞄 (文春文庫)

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著者 : 川上弘美
  • 文藝春秋 (2004年9月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631031

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センセイの鞄 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 単調な日常の中で、徐々に距離を縮めていく男女間の穏やかな親密さと、反して高まっていく緊張感の矛盾を絶妙に書き表した作品。

    年齢だけなら親子以上孫未満ぐらいに離れている、高校の国語教師だった「センセイ」と、その生徒だった「ツキコさん」は、二十余りを経て、ばったりと居酒屋で再会する。
    特に約束もせずに、それでも出会えば、それぞれのペースで酒を呑んで、それぞれ好きなアテを食べながら会話をする。そのうちに四季はめぐって、キノコ狩りやらお花見やら、店の外でもなんだか会うようになってくる。

    共に重ねる時間の中で、時々些細な喧嘩をしながらも、互いの気質と程よい距離感に馴染み、確実に恋慕の対象として意識し合うようになっているのに、それに相反するかのように、それぞれが抱える過去と孤独のためか、予想外に近づいていく関係に戸惑う二人の間の緊張感は高まり続け、やがてぬきさしならないものとなっていく…。

    不器用な男女の、端から見たら凡庸な日常でしかないのに、実は激しさ吹き荒れる歪な関係を、川上さんらしい、静かな語り口で、淡々と、けれど、とことん濃密に描いた秀作です。

    川上さんの独特の擬態語を用いて語られる二人の関係の終わりは、逃れられない哀しい真理であると同時に、寂しい優しさに溢れていて、余韻を残します。

  • ★3.5

    38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の一杯飲み屋で
    居合わせて以来の中だ。
    お互い1人で酒をのみ、肴の好みがよく似ている。
    憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、
    キノコ狩りや花見、あるいは島へと出かけた…。

    最初この淡々と流れる二人の時間はなんなのだろう?って思いながら読んでた。
    二人の間に流れる空気感がとても心地いい。
    二人の関係が良いなぁって思ったり、
    でも、ツキコさんの想いが届かなくて、切なかったり…。
    ツキコさんのまっすぐな思いを受け止めてくれたセンセイ。
    二人のゆったりと進む時間に、もどかしかったりじれったかったり、
    微笑ましかったり、切なかったり…。
    やっぱり、最後は…泣けました。

    初めて読んだ川上さんの作品。
    とても不思議な雰囲気で、情景が柔らかでその空間にいるみたいに感じさせられた。
    温かく、人を愛する事の切なさがじんわりと伝わってきました。

  • 言葉がほろほろと綺麗に流れていくようなお話でした。
    ツキコさんとセンセイの着かず離れずの心地いい距離感や想いが読み手にとっても心地の良い作品。
    ツキコさんの恋の駆け引きのお話のようにも感じました。
    恋の駆け引きといってもバチバチした激しいものでなく、それもまたほろほろとした美しい言葉で表現されていて、大人の渋くてほろ苦くて、それでいてチャーミングな恋愛を見ているようでした。
    結末がとても美しい終わり方で、じんわりと心に沁みて読み返したくなりました。

  • 川上弘美さんの描く恋愛は、ただ幸福というよりは、どうあがいても払拭しきれない寂しさ(それは、男女関係だったり、もっと大まかな関係性だったりするかもしれません)がいつも潜んでいるように感じます。
    たとえ燃えるような恋をしても、たとえ徐々に関係を深めて行くような静かな恋をしてたとしても、人生のどうしようもない寂しさはたとえそれが一瞬であったとしても消し去ることはできない、そんな人生の「どうしようもなさ」を川上弘美さんはいつも描いている気がします。
    知人の女性はこの作品を「色っぽいよね」と評していましたが、そんな人生の「どうしようもなさ」こそが、人生の色気や艶やかさなのでしょう。

  • 僕はセンセイをしているので。しかもまあまあ歳を食っているので…このような人生の終焉に共感した。

    愛されたいし愛したい。そんな純粋なことが、ほんの少しの時間のズレや、想いの強さのすれ違いでかなわないのが人の世だから、結ばれた二人を羨む気持ちは、強い。

    カウンターで呑む二人の繋がり具合が微妙でもどかしくて。だからこそ純粋だ。

  • ツキコは松本先生を、「先生」でもなく、「せんせい」でもなく「センセイ」と呼ぶ。


    「センセイ」
    どんな呼び方なんだろう。


    「先生」より堅苦しくなく、「せんせい」より親しげでもなく
    ある程度の距離感がある関係、それが「センセイ」なのだろうか。


    センセイには、忘れられない、忘れたくない過去がある。
    だから、ツキコが距離を縮めようとしても、センセイとツキコの間には見えない壁がある。隣りにいるのに二人の距離はなかなか縮まらない。


    手を伸ばせばすぐに届く距離にいるのに
    近いのに遠いな、、。


    不器用な二人のやりとりが微笑ましくて、いとおしく思った。


    センセイとツキコの再会から別れまでを書いた温かくて、切ない物語。

  • 静かだけれど、温かい時間が流れています。

    田舎の夜の様な、どこか懐かしい気持ちになりました。
    センセイのデートの申込み方、素敵だなぁ。。

    何より、季節の食べ物、お酒が物凄く美味しそうー。
    そら豆で一杯。

    たまりませんね!笑

    恋情は『育てるから、育つ』
    なるほど。素敵な言葉です。

  • 胸がキューンと締めつけられる、切ない恋愛物語。しかも年の差。
    綺麗な読後感。けっこう知人に薦めてる。

  • 読んだ後、こんなに甘く切なく、そして暖かい気持ちになる恋愛小説は久しぶりでした。
    出会ったばかりの頃のセンセイはとても紳士的。それは二人の距離が近づいても変わらず・・・
    最初から最後までずっと紳士なのですが、逆に丁寧な言葉や行動だからこそ、ツキコさんに対する溢れんばかりの愛と優しさが感じられて・・・
    二人の距離が近くなりそうになると離れて、また近づいてを繰り返していくのですが、離れては近づく度に次離れる距離は前よりは近くなっているという感じで徐々に縮まっていくのが良いなと。
    激しい感情だけが恋じゃない。
    こんな風に穏やかに進む恋も素敵だなと思いました。

  • 主人公大町ツキコと、彼女が当時高校生だった頃の国語の”センセイ”の関係を綴った物語。30歳以上も歳が離れている2人の恋愛話は、他の小説にはない、ひっそりと静かに語られる感じ。大きなハプニングもなし、若者の恋愛と違い、特にドラマチックな展開や、ドロドロした勃発などもない。ただただ、2人の掛け合いがあっさりしていて、爽やか。でも、どこか高校生のような、初々しいやり取りも見れて、ほっこりしてしまう。お互いに依存もせず、干渉せず、だからと言って愛がないわけではない。むしろこれが真の愛情なのだと思う。

  • 恋愛小説なのだ
    飲み友達⇒好きな人へ
    40女と30歳離れた男とが、恋をする物語
    お互い 気合いながらも一緒にならないのは なぜ?世間体なのだろうか

    「こおろぎ」 が せつない

  • ツキコとセンセイとの間に流れる曖昧な時間、移り変わる旬の酒肴の数々。はかないが確たる生の営みが滋味深く綴られている。
    私見だが、センセイの振舞いには手練のずるさを感じてしまい、感情移入できなかった。

  • 最初はなんの話かわからんように進むけど、結局はアラフォー女性と高校の時の国語の先生のじいさんとの恋の話。
    いきつもどりつの本屋本屋した話で好き嫌いのわかれそうな文章。
    自分的には好きな文章だったので著者の他の作品も読んでみようかなと思った。こういう微妙な心理の機微を描いた作品は好きかも

  • 一生涯、忘れ得ぬ本。
    棺桶にはこれを入れて!と声高に人様に告げるのだけど、良さを説明しようとすると、それはこの本の良さではなくて、自分の中の記憶のかけらにたどり着く。


    春の夜、つい上着を忘れて出てきた心細さ。
    昔好きだった人が結婚したことを人づてに聞いた薄ら寒さ。
    やけに美味しく感じた出し巻き卵の後味。
    上野公園の落ち葉、祖母のおにぎり。

    そんなかんじ。

  • 恋愛関係なんだけど、距離感がいいというのかな、ちょっと植物とまでいかなくて、虫がたわむれてるみたいな。最後のほうになってきて、ああ、もう終わっちゃうなとさびしくて惜しい気持ちになった本は本当に久しぶりでした。

  • いい本でした。センセイ、センセイと追いかけるうちにいつの間にかツキコさんがどんどん大人から淡い恋をする高校生になっていくのがわかりました。恋をするのってこうなるものなんだろうな。

  • 男と女がそろったら、結局は「そういう」展開になってしまうのでしょうか。
    前半部の月子さんとセンセイの、これという名称を付けられない関係性に羨望にも近い感情を抱いた私には、後半部は正直、肩透かしでした。彼等に裏切られたように感じてしまったのですが、それは私の身勝手だし、あまりに夢見すぎですね。

    嗚呼、やっぱり一人の男と一人の女が軸の物語は、「そう」ならざるを得ないのか。つまんないな。

    そんな風にがっかりしながらも、何故かページを繰る手は止まらず、気付けば月子さんのもとから去っていった「センセイ」を恋しく思ってしまったのでした。

    辛口なんだか甘口なんだか訳の分からないコメントになってしまいました。
    女って、面倒臭いですねえ←


    何の飾り気もない背表紙の内容紹介が、読了後、何だか胸に迫ったのでそのまま引用↓↓
    駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

  • もっと早くに読んでればよかった・・・。この人の文章が好きです。よく擬音が出てくるのが印象的でした。繊細で柔らかい雰囲気の文体。
    わたしに感情移入するのか、センセイを応援しながら読むのか。ちょっぴりしんみりしてシリアスで笑いもある。人生ってそういうものだなぁ・・・。二人の気持ちが合わさっていく過程が微笑ましくて、それだけにあのラストは急に大切なものを失った気持ちで思わずツキコさんと一緒に涙をこぼしてしまいました。
    切ないけど、素敵な小説です。

  • センセイとツキコさんの、
    ゆったりと流れる日々は、
    少し笑えて、少し切なくて、
    少しもどかしくて、少しだけ熱い。

    難しいことなど書いていない。
    まわりくどい表現など一切ない。
    過剰な情緒表現もない。
    実に巧妙。
    素晴らしい。

    飲み屋のカウンターで酒を注ぐ2人は、
    互いの心に何を注いでいたのか。

  • 僕はこのエンディングを一生忘れないと思う。

  • センセイと月子。年は離れているけど、ゆったりとそして淡々と流れていく時間の共有が素敵。

    小泉今日子と榎本明主演で映画になっている。

  • 言っちゃえば
    30そこそこの女性と
    おじいちゃんの恋のおはなし。

    現実考えたらけっこうきもちわるいよなぁ(笑)

    しかしそのきもちわるさも
    作者の文体があまりに綺麗すぎて全部消えてる。

    ゆらゆらしていた。
    いーですなぁ、「ゆらゆらしていた。」

    こういう表現ちょーたいぷ。



    *それといちいち料理うまそう。

  • センセイとつきこさんの会話が愉快でした。距離がだんだん縮まっているのに、離れていくような。でも通いあって。
    さびしくて、温かくて、ちょっとほっとしました。

  • 高校生に読んだときには琴線に触れなかった。いま読んでみるとツキコさんにすっかり感情移入してしまった。お正月ただ街を歩いてセンセイを求めるツキコさんの気持ちになって泣き、ラストのセンセイを失って泣き。せつなくて愛おしくて、読み終わって好きなひとに会いに行きたくなりました。すごく素敵で大切な作品になりました。また時が経ったら読み返したいです。

  • ひとの上に立ちたい欲望があるように、大きなかさのようなひとの下で、安心してうずくまっていたい欲望だってある。おとなになったって本当は大人じゃないひともいるし、みんなと同じようにひとを好きになれないひとだっている。そういう人はセンセイみたいな人に、こどもでいさせてもらうしかない。

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センセイの鞄 (文春文庫)の作品紹介

駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

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