センセイの鞄 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631031

感想・レビュー・書評

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  • 居酒屋で再会した高校で先生と生徒だったセンセイとツキコさん。
    ふたりは居酒屋でのんびりと飲んだり、そこからセンセイの家で飲み直したり、日本語を直されたり、居酒屋の店主ときのこ狩りに行ったり、島に行ったり、教師の花見に行ったり、古市に行ったり。
    そして募る恋心をどうしたらいいのか考えながら、ツキコさんはセンセイとの距離を掴もうとしたり、すり抜けた手を見つめたり、やけ酒を飲んだり、追い詰めてみたりする。
    そして二人はお互いをお互い以外ではどうすることもできない存在になっていく。

    おいしいお酒を飲んでいるようなお話。
    やわらかで、軽妙な言葉が並び、お猪口の水面にうつった月のような世界にゆられていた読書だった。

  • えええそんな展開となったのははじめてかも。こんな感情を味わったという記念の一冊として記録しよう。

    これまで友人が、自分はこういう展開であってほしかったんだあ、と話すのを聞いてもいまいちピンとこなかった。というか、お話の進むままに、作者の書いたままを受け入れてたから特に何も違和感とか持ったことなかった。こんな感情ははじめて。ちょっとだけもやもや。

    けど、作中の至るところの表現がなんとも言えずやわらかい言葉だった
    ーーー
    自分もどこかで私の「センセイ」にばったり再会して、時々会ってお話しできたらいいな

  • 中盤まで退屈を感じていたけど、途中から一気に面白くなった!
    センセイの元妻が「死んだ犬のフリ」をする奇妙な女性だった、という話が出てくるが、これは「私はグズな人間なんです」というセンセイの台詞とリンクしている。こっそり俳句を愛すセンセイもそこまで器用な人間ではないから、主人公のようなちょっと浮世離れした女性に惹かれてしまう。
    事実主人公は小島孝のような優秀なサラリーマンには居心地の悪さを感じていた。
    盲目的な恋情は、相手が歳の差で亡くなると自身の若さを無駄にしてしまうことに対する空虚感すら打ち砕くんだな……と不思議な気持ちになりました。

  • 淡々とした文章も、出てくる美味しそうな居酒屋ごはんも好みなのに、どうしてか登場人物たちにしっくりこなくて、気持ちがのりきれないまま読んだ。
    センセイと月子が対等ではなさそうだからかなあ。別にそういう恋愛もありと思ってるはずなのに、月子の慕情がどうにもしっくりこず、オトナとオトナのはずなのに、オトナと子どもみたいだなあ、と感じてしまった。「なぜならば、わたしは大人ではないのだから」にあるように、センセイに対して大人でいなくても平気なことが心地よい関係性なのかな……また何年かして読んだら印象が変わるかもしれない。

    そうは言いつつ、少しずつ少しずつ色々なエピソードが積み重なって、かけがえのない関係になっていく感じは好き……好きなんだけど、好きでもない不思議な感覚の読書になった。


  • センセイのような存在が欲しいな

    ずっしり来る感じではなかったけど、
    賢い人の恋は面白かった

    安心してゆっくりじっくり読めた

  • 70台の「センセイ」と30代の「ツキコ」さんの恋愛に「ホッコリ」するという面のみ見るならば、「マディソン郡の橋」や「失楽園」と変わらないことになってしまう。
    (見ても読んでもいないけれど)
    ここは酒が取り持つ縁を、大きく取り上げたい。
    酒飲みと文学好きに送る、恋愛小説である。

  • センセイとツキコさんのお話です
    この呼び方も ちょっと古めかしい、そして頻繁にでてくる 居酒屋さん、季節の肴 お酒 どれも欠かせない
    けして パスタや洒落たバーのカウンターでない、馴染みの店主がいる居酒屋 そんなところで並んで過ごす心地よさ、この作品の味わいは 湯豆腐、豆腐に鱈と 春菊が入ったもの…
    さいごにでてくる この湯豆腐みたいに あっさりして でもちゃんと鱈や季節の野菜もある 味わい深く そして季節の移ろいが感じられる そんな作品でした

  • センセイの鞄 川上弘美

    餃子の満州で餃子を頬張りながらの時の事。餃子のタレが少し付いてしまい、私は一旦手を止め、ぼんやりとそのシミを見つめた。餃子食べながら読む本ではなかった。とはいえシミみたいな物語だった。こういう言い方は失礼と承知つつも、静かてすーっと心の中に入り込んで、気がつけばシミになっていた。

    センセイの鞄はとても静かな物語です。賑やかな恋愛話でも、ドロドロの昼ドラみたいな話ですでもなく、時間がゆっくりと、ツキコさんとセンセイとの間に流れてゆく。歳の離れた片思いが実って、最後は永遠の別れを、読む人達はその結末を想像できたけど、やはり涙をするんでしょう。

    ツキコさんとセンセイの話もそうですが、私はセンセイと出奔した奥様の間の話がとても好きでした。互いに分かり合えなかったけど、最後までセンセイは奥様を大切にしていた気がします。その誰かを大切にする気持ちだからこそツキコさんとの物語が出来たと思う。文字に辿ることに連れて、私の中のセンセイを思い出して、また本を閉じる。

    • kayoko.さん
      素敵な感想ですね
      素敵な感想ですね
      2022/04/29
    • 爽健美茶さん
      ありがとうございます☺️
      ありがとうございます☺️
      2022/04/29
  • 駆け足で恋愛をするのもいいのかもそれないが、センセイとツキコさんぐらいゆっくりと、そして少しばかりの臆病さがあったほうがいいのかもしれない。

    上品な作品です。


  • 川上さんの本は、寂しいなんて、とても誰かに言えない時に読みたくなる。 
    そしてしんみりと静かな気持ちになる。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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