幻の声 (文春文庫 う 11-1 髪結い伊三次捕物余話)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167640019

感想・レビュー・書評

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  • 前から勧められていた、髪結い伊三次シリーズ。
    ようやく第1巻にいきあった。

    髪結いとしての確かな腕はありながら、師匠との諍いで店を飛び出した伊三次は、髪結い道具を持って客先で仕事をする廻り髪結い。
    深川芸者のお文とは良い仲だが、お文と所帯を持つまでの蓄えはまだない。
    髪結いのかたわら、同心の不破の手先として、市井の事件に関わる情報を集めている。

    現代風にいえば、地取り捜査と情報屋を兼ねている伊三次の物語には派手な立ち回りはなく、実際の捕物は同心の役回り。
    だからこそ、『捕物余話』なのだろう。


    宇江佐真理さんの他の短編集は読んだことがあったけど、シリーズもののせいか、物語の本筋よりも市井の人々や風俗の描写に多くを割いている感じがして、ちょっとじれったい。
    伊三次とお文もじれったいったらありゃしない。
    まぁ、ぽつぽつ気長に読み進めていこうかな。


    …などと、読書メモに書いておいて投稿を忘れていたことに気づいて、今さらながらの書き込み。

    いまは宇江佐真理さんも空の上に行ってしまったけれど、今からでもシリーズを読み始める人に、「この先どんどん面白くなるから、読んで!」とお勧めしたい。

  • どの話も良いが、「備後表」が良かった。
    幼い頃に両親と死別し、姉の婚家へ身を寄せて使用人のような扱いを受けていた主人公に母と呼ばれるほど優しかった畳表の職人が口にした最後の願いにまつわる話である。

    藺草の問屋だったという私の母の実家に畳表の織機が残されていた事もあり、惹かれた。あれを個人の家に置いたら他の生活空間を確保するのは大変かと思うが(重量も結構あるらしい)、とにかく誰もが優しく、母の願いを叶えようとする主人公に手をさしのべる。


  • 時代小説のお薦めとして、時々目にしていた、髪結い伊三次捕物余話シリーズ。知ったのが、割と最近で、巻数としても多めなので、なかなか手を出せていなかったが、ようやくシリーズ1巻目を読んでみた。

    1話1話が短いので読みやすく、伊三次も不破もお文も魅力的で、2巻以降も読んでみようかな、と思っているところ。しかし、15巻あるとのことで、ちょこちょこ読んでいくつもりなので、先は長そう(苦笑)

  • 捕物帖だけど、さっさといかないでそれぞれが辛い気持ちがあるのがしみじみと感じました。

  • 目次より
    ・幻の声
    ・暁の雲
    ・赤い闇
    ・備後表
    ・星の降る夜

    デビュー作だし、髪結いだし、短編だし、これは読み終わった後ほっこりとよい気持ちになれる人情ものなんだろうと思って読み始めたのだけど、違った。

    表題作の「幻の声」は、ろくでもない男にたぶらかされた女が、男の罪を全て被って刑に服す(死罪)のは、なぜかという話なのだが、最後まで読んでも男は改心しないし、女も罪をかぶったままだ。
    何故かというと、それは幻の声のためなのだけど。

    二作目は、伊佐治の恋人のお文が事件の謎を解くのだが、これもまた切ない幕切れで。

    伊佐治もお文も家族との縁が薄い。
    だから余計に安っぽい人情ではなく、もっと芯の通った生き様を通して人と繋がろうとするのかもしれない。

    己を貫くことで自分が不利になる女がいる。
    真っ当に生きてきた自分の人生を、ようやく振り返ることができる女がいる。

    人生の転機にしようと貯めていた金を盗まれた伊佐治は、犯人を獄門送りにしなければ気がすまないくらい怒っているのだが、結局は許すのである。
    大金の重みを知ったうえで、「たかが金」と許さざるを得なかった裏には、上司である不破の奥方のこれまた重い人生の矜持があるのだった。

    人生はおおむね大変なものかもしれないけれど、考えようによってはいい人生になり得ると、満足して本を置くことができたのだった。

  • 一日を懸命に生きる市井の人々、彼らに寄り添う伊三次とお文。二人の仲は…。

    何度でも読み返したい、シリーズの一つ。

    廻り髪結いを生業とする伊三次と、芸者のお文、
    そして、二人をとりまく人々の切なく、愛おしい生き様が、
    時には熱く、時には淡々と描かれる。

    十手は持たないが、同心、不破の小者として、伊三次は、
    事件の謎を解き、下手人を追い詰める。

    十手を持たない伊三次は、
    細工を施した髷棒で、悪人を相手にする。


    十五巻続く、長いシリーズだが、
    作家の宇江佐さんは、2015年に亡くなり、
    このシリーズは未完のまま終了した。

    本当に、惜しい…。

  • 髪結い伊三次シリーズの始まりを久しぶりに読んだ。最初からこんなに面白かったのか、と改めて思った。時代小説にハマり始めた頃に図書館で適当にバラバラに借りて読んでいたので、途中で『幻の声』を購入して(図書館になかったので)読み、伊佐次とお文の出逢い、伊佐次が仕える町方同心の不破と妻のいなみが結婚した経緯、そして伊佐次の生い立ちや不破と知り合うキッカケを知りさらに面白さが増した。原作者が亡くなった事で、それでもちゃんと物語は終わったけれどもっともっとこのシリーズの先を読みたかった。

  • 宇江佐真理の髪結い伊三次捕物余話シリーズの一作目になります。本当に面白いです。伊三次と文吉に幸あれ。

  • 読み応えのある、読後感のよい時代ものがいいなあ、という願いを叶えてくれる宇江佐真理さんのシリーズ。
    再読だけど、すっかり忘れているので、楽しく読めた。
    文吉ねえさんがかわいい。いなみさんもいい。

  • 髪結い伊佐次シリーズ一弾。
    廻りの髪結伊佐次がもう一つの仕事である下っ引きとして関わった事件を描いた捕物帖。
    恋人である深川芸者、お文との恋模様や、同心不破との関わりなども描かれている。
    捕物帖だが市井ものでもあり、江戸の人情咄として楽しめる。
    捕物咄ではないけど、畳職人の老女の話「備後表」がしみじみと良い。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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