君を乗せる舟 (文春文庫 う 11-8 髪結い伊三次捕物余話)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167640088

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  •  宇江佐真理さんのライフワークだった「髪結い伊三次捕物余話シリーズ」。今回は「君を乗せる舟」、シリーズ№6、2008.1発行、連作6話。今回は、不破や伊三次の子供たちの話が多かったです。第2話「小春日和」と第6話「君を乗せる舟」が印象深かったです。

  • 目次
    ・妖刀
    ・小春日和
    ・八丁堀純情派
    ・おんころころ……
    ・その道 行き止まり
    ・君を乗せる舟

    ちょっとオカルトっぽい話もありましたが、伊三次のビビりっぷりが愉快でした。
    そして、特別子ども好きなわけではなかったという伊三次が、子煩悩ないい父親になっている様子を見て、江戸時代、「イクメン」という言葉はなくても「子煩悩」という言葉があったなと思う。
    仕事から帰ると当たり前のように子どもを受け取り、夜は親子川の字で寝る喜び。
    家族の縁が薄かったからこそ、今が幸せなのかもしれない。

    この巻では不破友之進の嫡男・龍之介改め龍之進の話がどれもよかった。
    自分の証言により父親を殺人犯としてなくすことになった娘に、淡い恋心を抱きつつ何も言えない龍之進。
    その娘・あぐりは、世間を騒がせている「本所無頼派」のリーダー(次郎衛)に思いを寄せていることを龍之進は知る。

    あぐりに15歳年上の、あったこともない男との縁談が持ち上がる。
    最初は、後妻でもしょうがないと諦めていたあぐりだが、やはり次郎衛のことが忘れられない。
    最終的にあぐりは次郎衛の正体を知り、黙って嫁いでいくのだが、それをそっと見送る龍之進が切ない。

    「わたしは舟になりたいと思いました」
    自分が舟となって、あぐりを自由な世界へ連れて行ってやりたいということなのかと思った。
    しかしそれは、現代の考え方である。
    龍之進は、見も知らぬ男の元へ嫁ぐあぐりを、せめて自分が送りとどけたい、と、そう言うのだ。

    元服したての、現在で言うならまだ中学生の年齢の龍之進にはあぐりを幸せにすることはできない。
    けれどもいつまでも下町の裏店の長屋住まいをしていても、あぐりにいいことはひとつもない。
    あぐりを幸せにするだろう場所へ、せめて自分が連れて行きたいと。

    くう~。

  • 髪結い伊三次捕物余話の第六弾。不破の息子が同心見習いとして出仕となり、そこから物語は進みます。妖刀などホラー的な物語も入ります。

  • 不破家の坊ちゃんが成長して、初恋が……
    伊三次とお文は良い夫婦になって落ち着いた。
    このシリーズは皆きちんと年齢を重ねていくのがいい。地に足のついた人物造形で、ご近所さんのような感じ。見守りたくなる。

  • 髪結い伊三次捕物シリーズの人達が好き。

  • お文さんの出番が少ない。

  • 髪結い伊三次にしては、今回、ちょっと、妖怪風な話も、、、、
    子供が病気になったら、神頼みも、、、やっぱり親心が、、、ヒシヒシと。

    そして、不破龍之助も、元服して、龍之進として同心見習いに。
    初恋も、、、結ばれぬ恋を胸に秘める事も、大人になる一歩。
    若者の、焦りや、失敗、戸惑い、友情、色んな思いを龍之進と共に八丁堀純情派の面々に描かれている。

    伊三次よりも、龍之進の話の方が多かったかも、、、(笑)

  • 子どもから大人へ。誰もが経験するこの過程だが、当然のように境界線は解らない。元服した瞬間に大人になるはずもなく、狭間でゆらゆらする時間は長い。それでも、その期間に経験した事が大人になってからの肥やしになる気がする。って読了後にふと思った。未だに前髪の取れない自分を棚に上げたまんまで。

  • 2018/2/1
    龍之介が大人になっちゃう。寂しい。
    九兵衛に八つ当たりするのかわいくない。
    今回は龍之介改め龍之進の回だったな。
    私はお父さんが好きなのでちょっと寂しかった。

  • 同心、不破の息子龍之介が元服し、見習いとして出仕しました。同輩の見習い達と“八丁堀純情派”を結成し、一人前になるべく頑張っています。“本所無頼派”と言われるお騒がせ連中を追ううちに初恋のあぐりと再会し、心乱されます。結ばれることは叶わない相手ですが、あぐりの父の事件のことで負い目もあり、あぐりの幸せを願うのですが…。
     いやぁ、彼は何年後かにはいい男になるでしょうね。楽しみです。

     『妖刀』では伊三次の強運さを、『おんころころ』では親の愛を思いました。昔は病気で子を喪うことも多かっただろうし、お文の悟ったような「寿命だと思って諦める」という言葉は運命に委ねるしかないという気持ちだったと思います。藁にすがってでも伊与太を助けたいという伊三次の思いが届いて良かったです。ほろりとしました。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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