今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫 う 11-16)

著者 :
  • 文藝春秋
3.85
  • (20)
  • (47)
  • (22)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 347
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167640163

作品紹介・あらすじ

江戸の大火で住み慣れた家を失ってから十年。伊三次とお文は新たに女の子を授かっていた。ささやかな幸せをかみしめながら暮らすふたりの気がかりは、絵師の修業のために家を離れた息子の伊与太と、二十七にもなって独り身のままでいる不破龍之進の行く末。龍之進は勤めにも身が入らず、料理茶屋に入り浸っているという…。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人気シリーズ。
    大火の10年後、無事に暮らしている人々に起きている変化は‥?

    髪結いの伊三次と妻のお文は大火事で家を失ったものの、家族は無事。
    その後に生まれた娘のお吉もすくすく育って、明るさを振りまいています。
    伊三次は義兄が倒れたために、義兄の店を半ば継いだ状態で働き、お吉もその店に通っています。

    不破の息子の龍之進は、芸者のお文の働く料理茶屋に入り浸りとなり、まわりに心配をかけている状態。
    というのは一人だけ結婚が決まらず、その理由というのが‥
    とはいえ、仕事となれば駆けつけ、周りが困っているところに乗り込んで、勢いで捕縛したりするのが妙にカッコイイ。
    このくだりは新作歌舞伎になりそう!
    (海老蔵に似合うでしょう)

    大店の娘おゆうが龍之進の母いなみに行儀見習いに来たり、そこへ妹の茜やお吉も参加したりと、それぞれ違う個性が出会い、巣立っていく様子が描かれます。
    龍之進の後輩の姉に、いきのいい女の子が登場。
    恋愛模様が多い回でしたね。

    伊三次とお文もそれぞれにらしさを発揮する機会があり、満足な読み応えでした☆
    作者急逝は惜しまれますが‥
    読んでない作品を大事に読んでいきたいと思います。

  • 久しぶりの髪結い伊佐次シリーズを堪能した。
    推理小説の主人公が次々と事件を解決しながら、たいがい年をとらずにシリーズが何年も続くのに対し、時代小説シリーズの登場人物たちが、それぞれに年を重ねるのは、スッキリと納得できる。
    この伊佐次シリーズは、いつのまにか10年も過ぎてしまった(笑)
    今回の主役は、不破の息子龍之進で、伊佐次やお文は脇役に退いている。捕物も背後に退き、もっぱら登場人物たちの日常や結婚話が主題である。
    著者自身の解説で、このシリーズに対する思いを書いているが、読者としても、これからも伊佐次シリーズを見守っていきたいし、応援したい。

  • 最初びっくりしましたが、後書きで納得。相変わらず、人がやさしいのにきれいごとだけじゃない部分も書かれているのがいいな…

  • 「髪結い伊三次」シリーズの・・・・・何作目だっけ?

    前作から、一気に10年進みました。
    2世世代も、すっかり一人前の貫録を見せてますね。
    でもって、親世代もまだまだ現役で、ここぞという場面では活躍を見せます。

    うーん、作品の安定感が心地よい。

    また当分先になるであろう次回作を待ちましょう。

  • 前巻から 相当な時が経っている設定。
    これには筆者の思いがある。その思いは達成できたのか? 最終巻まで読んでみよう。

  • 「宇江佐真理」の連作短篇時代小説『今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話』を読みました。

    「池波正太郎」、「木村忠啓」、「月村了衛」、「神楽坂淳」、「翔田寛」の作品に続き時代小説です。

    -----story-------------
    人気シリーズ、待望の新章スタート

    江戸の大火で住み慣れた家を失ってから十年。
    「伊三次」と「お文」は新たに女の子を授かっていた。
    ささやかな幸せをかみしめながら暮らすふたりの気がかりは、絵師の修業のために家を離れた息子の「伊与太」と、二十七にもなって独り身のままでいる「不破龍之進」の行く末。
    若き同心「不破龍之進」も身を固めるべき年頃だが……「龍之進」は勤めにも身が入らず、料理茶屋に入り浸っているという…。
    -----------------------

    2010年(平成22年)に刊行された『髪結い伊三次捕物余話』シリーズの第9作… 小説誌『オール讀物』の2008年12月号から、2010年3月号にふた月おきに連載された6作品が収録されています、、、

    本シリーズは初めて読んだのですが… 前作から10年が経過し、主人公で町方同心のお手先をつとめる「伊三次」は32歳から一足飛びに42歳の厄年を迎えているという設定らしいです。

     ■今日を刻む時計
     ■秋雨の余韻
     ■過去という名のみぞれ雪
     ■春に候
     ■てけてけ
     ■我らが胸の鼓動
     ■文庫のためのあとがき

    シリーズ物なんでね… 途中から読むと、物語のディティールを掴むまで、ちょっと戸惑いがありますね、、、

    連作短篇だから、途中からでもそれなりに愉しめるし、前作から10年経過している設定なので、比較的、入りやすかったんでしょうけどね… やはり、最初から読んだ方が、登場人物たちの歴史が実体験のように共有でき、それにより物語への理解度や愉しみが格段に違ってくると感じましたね。


    「伊三次」と「お文」が授かった女の子「お吉」の登場や、親の跡を継がず絵師の修業に励む「伊与太」のこと等、人情に厚い「伊三次」と「お文」夫婦に関するエピソードも描かれていますが、、、

    本作品では、27歳になっても独身を続ける「不破龍之進」の嫁探しに関するエピソードが多かった感じですね… 大小様々な事件が起きますが、「龍之進」が出会った「小勘」や「おゆう」、「ひふみ」、「徳江」等の女性の中で、誰が意中の女性となるかが、主なテーマだったと思います。

    でも、良い相手と巡り合ったんじゃないかな… と感じさせられましたね、、、

    「龍之進」が、吉原に身を落としていた過去がある母親の「いなみ」のことを、きちんと受け留めることのできたエピソード『今日を刻む時計』が印象的でしたね… 「龍之進」とはねっかえりの妹「茜」のやりとり面白かったです。

    読むなら、最初から一気読みしたいなー

  •  宇江佐真理さんが読者に訴えたいことは:人を殺してはならない。人の物を盗んではならない。弱い立場の人間に危害を与えてはならない。親子なかよく。夫婦なかよく。ご近所さんともなかよく。「今日を刻む時計」、髪結い伊三次捕物余話№9、2013.1発行。前巻、伊三次、お文、伊与太の住んでた家は火事で焼失しました。10巻はそれから10年後、物語はリニューアルです。伊与太は14歳になり、お吉9歳が生まれてます。不破友之進の妻、いなみ、大活躍です。龍之進は19に、茜は15に。龍之進が徳江16歳にプロポーズ、電撃結婚ですw

  • 作中で、前巻から十年経った。
    父世代と子世代と、物語が多層になって面白い。

  • 目次
    ・今日を刻む時計
    ・秋雨の余韻
    ・過去という名のみぞれ雪
    ・春に候
    ・てけてけ
    ・我らが胸の鼓動

    火事で家を焼け出された伊三次一家、というのが前作の終わり。
    今作は10年を一気にすっ飛ばしたところから話がはじまる。
    えぇ~!?

    あの可愛かった伊与太は、絵師の修行のため家を出てるし。
    たまに帰ってきても反抗期だし。
    火事の後生まれた娘は既に9歳でしっかり者で、やっぱりあの頃の伊与太の可愛さには及ばない。

    龍之進もまた、母の出自が自身の縁談の障りになっているとふてくされて、仕事をさぼって料理茶屋に入り浸っている。
    あの真っ直ぐな気性だった龍之進が、なんてことだ。

    どうしてこうなったのかと言うと、作者がどうしても、生きているうちにこのシリーズの最終話を書いておきたいからなのだという。
    そのためには、どうしても10年を端折らなければならなかったのだと。

    今作では龍之進の結婚がテーマになっている。
    龍之進が結婚して落ち着いたら、多分友之進は隠居するのだろうけれど、そうなったら伊三次はどうするのだろう?

    九兵衛と、もう一人安吉という弟子を持ち、廻り髪結いと友之進の小者としての活動以外に、義兄の髪結床を手伝っている伊三次。
    相変わらず芸者を続けているお文。
    次は伊与太の修行の話だろうか。
    それとも茜の縁談?
    15歳で縁談は早すぎ?

  • もはや龍之進が主役になったけど、それもよし。各編の締めくくりが鮮やか。

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇江佐真理の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×