灘の男 (文春文庫 く 19-8)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167654085

作品紹介・あらすじ

古来、日本では、"悪"は、"強"という意味をもっていた。そんな"悪"の魅力にみちた「粋で、いなせで、権太くれ」な男こそ灘の男。実在した二人の男の破天荒な生涯に材をとった「灘の男」のほか二篇を収録。私小説の名手が新境地をひらいた、聞き書き小説の精華。

感想・レビュー・書評

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  • 灘の男 カッコ良かった。

  • 車谷長吉『灘の男』文春文庫。

    リズムのある口語調で綴られた3編から成る短編集。

    表題作の『灘の男』は実在した濱田長蔵と濱中重太郎の破天荒な二人をモデルに姫路の激動の時代を描いてみせる。

    他に『深川裏大工町の話』『大庄屋のお姫さま』を収録。

  • 本作は、私小説ではなく、聞き書き、あるいは「オーラル・ヒストリー」といってよい作品です。それ故、私小説群とは異なり、流暢な播州弁が全面展開で、その語りの世界を堪能できます。時にネィティブすぎて、意味を測りかねる表現にも出くわしますがーー。ここでの灘は、神戸の灘ではなく、姫路の灘、かの「ケンカ祭り」でその名を世界に馳せる灘です。その灘が生んだ2人の経済人の聞き書きで、決して間違っても日経新聞の私の履歴書にはのらいないような、人生の歩みが、本人、ときには周りの人から語られます。中小企業に支えられた、この地域の産業構造が、経済書からでは決して得られない生き生きとした形で浮かび上がってきます。

  • 初読 ★2.5

    私小説家廃業宣言をした後の作品らしく
    口伝調の実在の人物伝3編。

    それなりには興味深いんだけど
    「…………で?」という感が無きにしも非ずw
    特に「灘の男」は誰が誰やらこんがらがった。

    「大庄屋のお姫さま」の終わり方は意味深で良かった。

    しかしこれ読むと
    (やっぱりこの人、人一倍権威主義な反動なのでは…)
    とちらっと思ってしまうw

  • 2017/12/21購入
    2018/10/28読了

  • 灘の男、深川裏大工町の話、大庄屋のお姫さまの3作の短編集。
    「灘の男」
    「はあ。わしが濱長や。灘の濱田長蔵や。わしはもうなにもいらん。」と始まるこの話は、姫路城の東南の播磨灘に面した灘の地に実在した濱田長蔵、濱中重太郎の二人の人物伝が書かれた作品です。
    初めて読む車谷長吉の本は、細部に至るまで丁寧に取材されていることが伺えました。他の書評によると聞き書きによるらしい。
    綿密な取材と読み物として再構成する筆力を感じることができました。
    「深川裏大工町の話」
    太平洋戦争時の東京下町で生活を当時の少年の語り
    「大庄屋のお姫さま」
    市川はさんで灘の対岸の高浜町上垣内の大庄屋、松ノ下六郎右衛門家第十六代当主の松ノ下頼子の語り

  • 実在した人物と、
    その人々が生きた土地とについて、
    それぞれが語る物語。
    こうして言葉にして、
    人は時間をこの世に、
    既存のものとして残すのだろうと連想しながら、
    その言葉を聞き取り、書き取っている、
    独りの人間のことを想うと、
    なぜか胸が締め付けられ、
    そして温かくなった。

    車谷長吉の作品で、
    このような感触は初めてだと感じていたら、
    あの自己愛に満ちたねっとりとした私小説から、
    脱却を宣言した最初の作品だったか。

    ねっとりとした世界も、
    もちろん好きだが、
    その先にこのような言葉を構成できたことが、
    作者の精神性の高さと純正なのだろう。

  • 昭和の、人間味溢れる男を取り上げた“聞き書き小説”(?) 史実、事実とフィクションがどれくらいの比率で織り交ぜられているのか判らず、起承転結がとくにあるわけではない、証言の羅列が大半の小説だが、気持ち良い関西弁と、破天荒な主人公たちの生きざまに、ついつい頁を繰って読んでしまう。元は私小説を得意とした作者ということもあってか、どことなく、先の芥川賞を受賞した「共喰い」の田中慎弥を思い出しつつ読んだ。方言を前面に押し出して書いているところも似てるなと思わせる点かもしれない。登場人物は十分に魅力的だけど、小説として、面白いか?と言われると、この「灘の男」は、ちょいと微妙。

  • かつて「反時代的毒虫」を自称した作者の
    私小説から「私」の毒を抜いたら
    懐古的な(?)ロマンが残った
    車谷長吉の小説をちょいちょい追ってきた自分などからすれば
    なんだかほっこりする展開である

  • 文体から荒々しさは出ているのだけど、もう少しなんとかならんかったんやろうか?

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著者プロフィール

車谷長吉

一九四五(昭和二〇)年、兵庫県飾磨市(現・姫路市飾磨区)生まれ。作家。慶應義塾大学文学部卒業。七二年、「なんまんだあ絵」でデビュー。以後、私小説を書き継ぐ。九三年、初の単行本『鹽壺の匙』を上梓し、芸術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。九八年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、二〇〇〇年、「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。主な作品に『漂流物』(平林たい子文学賞)、『贋世捨人』『女塚』『妖談』などのほか、『車谷長吉全集』(全三巻)がある。二〇一五(平成二七)年、死去。

「2021年 『漂流物・武蔵丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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