受難 (文春文庫 ひ 14-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656287

感想・レビュー・書評

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  • これまでの読書歴で3大トンデモ設定の称号を与えよう。ブラックジャックやぬ~べ~でも描かれ、その強烈な存在感を知らしめた人面瘡(人のような顔つきをもった喋るできもの)。それが汚れを知らぬうら若き乙女フランチェス子の秘所に出現し、彼女を思うさま罵倒し始める。

    実はフランチェス子(元モデル)、天涯孤独で修道院育ち。美人(しかもバスト109センチ)なのに、なぜか男を寄せ付けない先天的性質で交際経験ゼロ。男に求められたことがない彼女をダメ女と罵り嘲笑うオッサン顔の人面瘡。そんな彼(?)のことを、人面瘡をテーマにした恐怖漫画『のろいの顔がチチチとまた呼ぶ』の作者、古賀新一にちなんで「古賀」と命名し、フランチェス子と古賀さんの奇妙な同棲(?)が始まった。

    女としての存在意義を失っているフランチェス子。だが、俗欲を抱かず信心し、質素な生活を心がけ、暇があればゴミ拾いをする等、常に人のために尽くし、55歳になれば修道院に戻ると決め日々を送る彼女は聖女のようだ。

    人助けの一心からあるサイドビジネスを始めた彼女をまた予想外のアクシデントが襲い・・・
    知らぬ間にバージョンアップがなされてしまう秘所、侮辱されているのにどこか前向きなフランチェス子、古賀さんとのおかしな同棲生活の行方は・・・。

    解説は米原万里さん。

    直木賞候補になるも受賞できなかったのはアクが強すぎたのが原因かもしれないけど、一度読んだら忘れられない。知らなかったけど、2013年には岩佐真悠子さん主演で映画化もされたそうな。ど、どんな絵面に・・・。。

    ちなみに3大トンデモ、他の2例は妙齢の女性の右足親指がアレに変化してしまう、松浦理英子氏の小説『親指Pの修業時代』、愛する妻の魂がハゲデブ加齢臭のおっさんの肉体に宿って帰ってくる、阿部 潤氏の漫画『パパがも一度恋をした』である。

  • 修道院で育った貞淑な処女フランチェス子のXXXに、しゃべる人面瘡が出現する。あろうことか、フランチェス子は人面瘡を「古賀さん」と名付けて話し相手にする…だけならまだしも、古賀さんが一方的にフランチェス子を罵倒する。そんな二人(?)の奇妙な毎日。

    友人(男性)に薦められて読んだのですが、巻末の米原万里の解説が秀逸で、この小説がどんな存在であるかを的確に言い表している。
    正直、その解説を読んだ後だとこの小説に対して自分の口で書き加えることはあまりない。「ホッベマなんて大学の美術史で習ったけれど小説でその名を見つけたのは人生初めてでした(笑)」という個人的経験と照らし合わせた感想くらいか…。

    そんな感じなので、もはや感慨程度でしかない感想を書き連ねる羽目になるのだけれど、私個人は米原万里ほど全面的に抱腹絶倒できたわけではなく、どちらかというとあまりに過激なネタの数々に若干(いや、かなり)辟易する思いで読んだ。その意味では、直木賞選者たちの寸評に近い感慨を持っている。
    あと後半部にある、古賀さんのあまりに鬼畜な仕打ちに対しては、私は含蓄も何も汲み取れず、ただ嫌悪感だけを覚えた。なので、ラストで起こったどんでん返しに対しては、まぁストーリーの構成上これ以外の結末はありえないよなぁと思いつつも一人の人間の感情としては釈然としないものを覚える。

    …と、なんだかネガティブに書いてしまったけど、とにかく人間が敢えて見ないようにしている部分に過激に切り込んでいる衝撃作であることは間違いなく、空前絶後の読書体験をさせてもらった。

  • 私はよくわからなかったなぁ。
    エリーゼのためにをやり始めた辺からは、ふむふむってなったけど、、
    電車で読むの恥ずかしいくらいには下ネタだらけ。
    いや、ここまで堂々と色々書いてあると、下ネタって言うのも違うのかもな。
    食事睡眠家事洗濯、、と同じテンションで下の話を普通にしてる。
    というか下の話しかしてない。

    何年かしてからもう一回読んでみようかなぁ

  • こんなシュールな小説は久しぶりです。フランチェス子は本当に聖女のようですね。古賀さんに逆プロポーズした時は、切なさがこみ上げてしまいましたよ。

  • 姫野カオルコは『リアルシンデレラ』しか読んでいなくて、それを読んだときもこういうの書く人だったんだ?と意外な気持ちだったんですが、これはもっと意外。フォロワーさんの感想を読んであまりにも面白そうだったのでいそいそと本屋へでかけて早速購入したものの、うっかり電車の中でページを開けない単語が満載(笑)。なるほど、松浦理英子の親指Pを彷彿とさせられるトンデモ設定です。

    各国の処女に寄生し更生(?)させてきた人面瘡の古賀さんと、そんな古賀さんに困った場所に寄生されてしまった日本の乙女(しかしすでに30代)フランチェス子の奇妙な同棲(?)物語。ネガティブが一周まわってポジティブになってしまっているフランチェス子の天然っぷりと、毒舌で辛辣だけど鋭い古賀さんとの、微妙に噛み合ってないけど妙にうまがあってる風のかけあいが楽しい。

    個人的にフランチェス子の特殊能力(相手の性欲を失わせてしまうばかりか、場合によっては破壊してしまうという男性にとっては恐怖の能力)を上手く生かせば、日本から性犯罪者を失くせるのでは?とか、新興宗教の教祖になることも可能なのでは?とか色々考えてしまったのですが、なぜかフランチェス子の商才(?)は別な方向に発揮されてしまいます。

    ラストのオチは意外だけれど大団円で、ばかばかしいながらも良かったね!と笑ってしまう。ふざけているようで、結構恋愛における哲学というか真理のようなものもちりばめられていて、なかなかシニカルに楽しめる1冊でした。

    余談ですが、若いころのバイト先に筋肉少女帯の「踊るダメ人間」をカラオケの十八番にしている男の子がいたんですが、この曲、合いの手を入れるとものすごく盛り上がります(笑)だーめだめだめだめ人間(ダメ!←ここ)にんげーん、にんげーん・・・

  • 限りなくお下品な設定を、限りなく麗しい小説にしてしまう、さすがだカオルコさん。
    しかも、驚いたことにこれ、映画化だって。どうやって映像化するんだ…
    放送禁止用語とか、どうするんだ…
    古賀さんとフランチェス子の「同棲」。なんだかんだ言って幸せなんだな。

  • 2014/01/30読了。
    修道院で育ったアラサー女、フランチェス子の大事なところに突然できた人面瘡。いろいろな女を渡り歩いてきた経験豊富?な毒舌の人面瘡で、フランチェス子は彼を「古賀さん」と呼び共同生活を送ります。
    かなりの奇抜設定で、古賀さんやフランチェス子のキャラクターやせりふも面白い!すごく印象に残る作品。まじめで質素で、自分の恋愛はあきらめて友達の恋を応援してばかりのフランチェス子を、つい応援しちゃいます。
    かずのことイソギンチャクのエピソードはめちゃくちゃ可笑しかった!!

  • どうやら見た目は悪くないらしい、けれども男のチ××を萎えさせてしまう魅力のない女、フランチェス子。ある日そんな彼女のオ×××に、"グレートでピュアでノーブルな"人面瘡ができてしまった。フランチェス子が「古賀さん」と呼ぶその人面瘡は、フランチェス子を完全にダメ女扱い。禁欲に徹し、というかそもそも欲望がなく、性欲なんてのも諦めてしまっているような彼女に対し、古賀さんは「女としての魅力がない」と叫び続けるのだが…。
    体と体を重ね合わせる"あの"行為、これって一体何なんだろう?いっそ言葉なんか持たず、感覚的な方が恋愛ができる、というのが古賀さんの主張だったはず。でも結局、フランチェス子は「言葉で」心の内を伝え合う古賀さんに告白し、そして古賀さんはそれを受け入れるのだ。果たして世間で過激に色付けされたエロスが恋なのか、はたまた恋とはもっと複雑でプロセスを要するものなのだろうか。
    読みやすい文、どんどん読み進めてしまう奇妙な展開。あっという間に読了した。

  • 久しぶりに声を出して笑える小説を読んだ。
    まず、オトコとオンナの関係論を“ヤル・ヤラレル”の二元論に還元する潔さ。
    物語の主要な部分はその二元論についての対話篇なのだが、主人公自体は男女の渦の中心から外し、外したままで終わると思わせて終盤でまさに中心に投げ入れ、さらにハッピーエンドで締めくくるその手腕は、舌を巻かざるを得ない。
    貞節論や性価値の貨幣交換性や自慰論など、中学生レベルの性に対する疑問でも、少し異なる観念で照らすと異なって見えるのが改めて思い知った。
    巨乳の修道女という萌え的な設定も、突っ込みどころ満載の状況や会話も、最後まで飽きることなく楽しませてくれた。
    ただ、ちょっと長いかな…。短編とまではいかずとも、中編程度のほうが途中で萎えずに一気に読めたかもしれない。

  • 姫野さんの中でベスト3に入るかも。
    喋る痣との奇妙な共同生活は、おかしくも、怖くもある。
    だけどなんか読み終わると楽しい、幸せな気持になれるんだよね

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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