依頼人は死んだ (文春文庫 わ 10-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656676

作品紹介・あらすじ

念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 御子柴くんシリーズが一段落ついたところで、改めて葉村晶探偵が単独で主人公になる第1冊目を紐解く。ところが、ハードボイルドのお約束は踏襲しつつも、かなり異色作。

    何しろ、文藝春秋社に鞍替えして単独主演を勝ち取ったこの主人公は、中央公論社の単行本の結末を最初から引きずっているのだ。凄いことに、それが最後まで続いている。でもよく考えたら、葉村晶シリーズは、常に過去の話が新しい単行本の中に平気で出ていた。あゝそうなのか。このシリーズは、あと味の悪い事件と、晶の切れ味鋭い推理だけが魅力ではなかったのだ。外国でもハードボイルドは、主人公の個人ヒストリーを追っていくことがよくある。

    だとすると、彼女が何故40代になっても正業に就かず、独身を貫き通すのか、その秘密は、このアラサー時代の単独主演であらかた出尽くしている。というか、実はそこを描くための作品になっている。私はずっと不思議だった。葉村晶ぐらい優秀ならば、正規探偵職になってもいいし、恋人ぐらいできてもいい。それを阻む「家族の事情」は、「プレゼント」の時に消えているはずじゃないか。

    でも、葉村晶は優しすぎるし、葉村晶は拘りすぎるのだ。よく分かる。だから、独身になるのだ。私のように(←言い過ぎた)。

    一見、冒頭短編「濃紺の悪魔」と最後の書き下ろし「都合のいい地獄」は、不条理ホラーのようだが、この葉村晶の「個性」を決めるためには無くてはならないものだった(テレビドラマでも使われた原作だけど、原作の方がよっぽどわかりやすかった)。この後は安心して、「調査には手加減はなく」「好奇心旺盛で」「カネにならない仕事も手掛けてしまう」「何故か事件を呼び寄せてしまう」(今回はなかったけど)「不運にも痛い目によく遭う」非正規探偵調査員が登場するだろう。

    このすぐ後に描かれた長編「悪いうさぎ」で結婚詐欺男に夢中になる相場みのりは、実はほぼ全編に出てくる。ばかりか、「女探偵の夏休み」では、主人公を食うほどの推理を働かせる。都合のいい彼女とのルームシェアを、葉村晶は何故解消したのか、がこの作品の「真犯人(真のテーマ)」である。

    • やまさん
      kuma0504さん♪こんにちは。
      コメント♪有難う御座います。
      kuma0504さん♪この雑誌には、以下のように材料は書いています。
      ...
      kuma0504さん♪こんにちは。
      コメント♪有難う御座います。
      kuma0504さん♪この雑誌には、以下のように材料は書いています。

      材料(つくりやすい分量)
      なす8個(640g)
      A
       だし カップ2
       みりん 大さじ2
       しょうゆ 大さじ1
       塩 小さじ1/2
      みょうが・青じそ(各せん切り) 各適量
      [常備品]塩
      保存:冷蔵庫で5日間
      2020/05/04
    • kuma0504さん
      やまさん、ありがとうございます。
      とりあえず作ってみますね。
      みりん買ってないので、やはりめんつゆになるかなあ。
      やまさん、ありがとうございます。
      とりあえず作ってみますね。
      みりん買ってないので、やはりめんつゆになるかなあ。
      2020/05/04
  • "白黒つけないと気が済まない"女探偵葉村晶が主人公の連作短編第2弾。
    前作『プレゼント』では小林警部補+御子柴くんとの交互登場だったが、今回は全編主役を務める。

    解説の重里徹也氏が全くもって頷ける葉村晶の魅力について人物評を挙げてくれている。
    ”白黒つけないと気が済まない”に始まり、クールさやタフさは作品中の言葉で明文化されているが、”うまく適度な距離を取りながら、機敏に身をこなす”なんて評は「あ~そうそう、そこがくすぐられるんだよ」と自分の感情分解能力ではどこが魅力的に映っているのか言葉にできなかったもどかしさをすかっと論じてくれている。

    さて物語の方は、前作の最後で羽村がいびつな確執を抱く身近な人物に殺されかけるという悲惨な事件の結末で幕が引かれたが、今作の冒頭ではその人物は既に自殺し、この世にはいない設定で始まる。
    転々としていた職についても、困ったときにあてにされる契約調査員ではあるものの、長谷川探偵事務所の一員として”探偵”が定職となり、やや安定感が出た。
    そんな日々に舞い込む奇妙な依頼の数々。

    なんか自殺案件が多いなとか、どうにも歯に衣着せぬ物言いの女友達が多いなとか思いながら、タフさとnever give up精神で真相に辿り着く予定調和を楽しみながら最終話まで読み進めると、あぁそういう筋書きでしたかと。

    よもやそんな悪魔的黒幕が世界観を覆う展開とは。
    この先因縁の対決めいたものがあるのかな。
    次作『悪いうさぎ』に続きます。

    • 111108さん
      fukayanegiさん

      ちょっと内容忘れ気味だったのですが、fukayanegiさんのレビューで思い出しました。ちょっと黒い不穏な世界で...
      fukayanegiさん

      ちょっと内容忘れ気味だったのですが、fukayanegiさんのレビューで思い出しました。ちょっと黒い不穏な世界でしたね。そこに葉村晶のクールさが映える気がします。
      『悪いうさぎ』もダークですが、レビュー楽しみにしております♪
      2022/09/11
    • fukayanegiさん
      111108さん
      おはようございます。

      まさか日常で対峙していた事件の数々に裏で糸引く存在という設定を出してくるとは思ってませんでした。
      ...
      111108さん
      おはようございます。

      まさか日常で対峙していた事件の数々に裏で糸引く存在という設定を出してくるとは思ってませんでした。
      テレビ向きな展開ではあると思ったので、そっちどんな感じで仕上げたのかなとも気になりました。

      『悪いウサギ』もダークなのですね。
      次は長編とのことなので楽しみです!
      2022/09/12
  • 私は基本的にはイヤミスはあまり好きではない。
    けれど、何故か一年のうちに何回かは葉村晶に会いたくなる時がある。
    それが何のきっかけなのかは分からないのだけれど。


    葉村晶シリーズはもう何と言うか「これがイヤミスです!」とイヤミスを知らない人間に紹介しても間違いない話だと私は思っているんですけど(そうだよね?)、やっぱりこの話でも葉村晶はとんでもない依頼に巻き込まれるし、周りの人間は人の悪意を煮詰めまくったような存在ばかりだった。


    親友の相場みのりだけが唯一のオアシス的な感じなのだけれど、正直読んでいる間中「大丈夫よね?あなたは裏切らないよね?」と疑心暗鬼になってもいた。いや、葉村晶シリーズに関してはそういうことが本当に有り得るのだから怖い。
    寧ろあんな世界を孤独に生き抜いていける葉村晶はカッコよすぎるとすら思う。
    イヤミスでもありハードボイルドでもあるのかな。


    個人的に一番好きだったのは「女探偵の夏休み」ですかね。
    話の展開に完全に引っかかりました……そうかそういうことだったのか!って。
    この話は人間の悪意的なものが少ないので読みやすいのもいいのかも。ちょっとシャイニングっぽくはありますが。

  • 「確かめて、調べて、白黒着けなきゃ気が済まない」こだわりの女探偵、葉村晶が活躍する連作短篇ミステリー。

    「濃紺の悪魔」「詩人の死」「たぶん、暑かったから」「鉄格子の女」「アヴェ・マリア」「依頼人は死んだ」「女探偵の夏休み」「わたしの調査に手加減はない」「都合のいい地獄」の9篇収録。自殺の理由を理由を探る話が多い。

    ラストの「都合のいい地獄」は結構怖い話だった。謎の男からの二者択一を迫る予告電話。晶の追い詰められ感が半端なかった。

    主人公の晶は、心に影があり、ものの見方がかなりシニカル。折角女性が主人公なのに、華やかさの欠片もなく、コミカルな要素もゼロ。女性主人公のハードボイルド、何だかしっくりこないな。

  • 葉村晶シリーズ。
    9篇の短編。

    短編なのにこの重厚さときたら!
    しかも、軽妙洒脱。
    著者の世界に引き込まれてしまい、これは確かに映像化して、たくさんの人に見てもらいたい、この世界観を味わって欲しい!
    と思うに違いない。
    どれもこれも、結末はなんとも苦くて、すっきりしないのだ。
    なのに、惹きつけられてしまう。

    「アヴェ・マリア」
    葉村晶の友人夫妻の物語。
    これは、こう言う話なのだよ、と言いたいのに、言えば全てが台無し。
    だから、一言だけ言おう。
    「こんな夢を見た」と。

    表題作「依頼人は死んだ」
    葉村の友人が死亡する物語。
    コナン君や金田一少年ばりに彼女の周りの人間はよく死ぬ…。
    実際の捜査なら真っ先に怪しい人物だ…。
    彼女の行動が、少しでも弔いになればいいのだが。

    「濃紺の悪魔」と「都合のいい地獄」は連作になっている。
    依頼人の死亡、不条理。
    本書中では理由は明らかにならない。
    ならないのだが、次作以降でまた、この悪魔は出てくるのではないかと思わせる。
    悪魔は自ら命をたったとしても、必ず出てくるのだ。
    何度も、亡霊として蘇る。
    だから、悪魔、なのだ。

  • シリーズ2作目とのこと。全作読破決定です。
    太刀洗さんを彷彿とさせる、いい感じに女子でない主人公がいいですね。自分を分析するのに微塵の容赦もないのが好みドストライク。
    真相を明かす口数が少なく、余韻の残る作品が多かったです。最終話で急にモリアーティみたいのでてきて、ゾクッとして終わりました。「都合のいい地獄」、ほんま容赦ないわ~。好っきゃわ~。

  • 若竹さんの本はいい意味で厭なミステリだな。若竹さんの描く事件の底には人間の、【悪意】ではなく【醜さ】が流れているように感じる。
    今回の短編は自殺の理由を探るストーリーが多い。殺人であれば、殺意が存在する。それがどんなものであれ、少なくとも犯人は殺す理由を持っている。
    自殺には他者による直接的な殺意はない。人間の醜さや身勝手さが、自殺者を追い詰めるのだ。

    世間を冷めた目で見つめている葉村さんだからこそ耐えれるんだな。私だったら人間不信になってしまうかも。

  • 葉村晶シリーズの2冊目。短編集のような作りとなっているが、全てのパーツが絡み合ってひとつの作品を形作っている。テレビドラマ化された部分も含まれており、謎解きのような気分になった。

  • ハードボイルド&笑い&スピードで、葉村晶という魅力的な探偵の話をもっと読みたくなる。

  • ネタバレあり。






    初読みの作家さん。

    トンネル横に激突して自殺した人の話では、トンネルと別荘入口の位置関係に納得がいかない。
    きっかけとなる物を目にした後、横断して右へ運転するだろうか?

    ホテルに泊まりに行った話では、1年半前と今年の話を混ぜて読者を騙そうとしているが、書き方が上手いとは全く思えない。

    最後の話は意味不明。

    その他の話も面白くはない。
    シリーズのようだが、これ以上読むつもりはない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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